細田守監督作品の音楽なども手がける高木正勝の生活を色彩豊かに愛が溢れる文章で綴られた6年間の記録。山間の村に居を移した彼がその土地に住む人々(主に老人)と家族同様の交流を深め、時には畑を作って土に触れ、命の元を肌で感じたり、時には聞こえてくる蝉の声や変わりゆく空の色とピアノでセッションをする。自然の息吹を全身で感じて生きる彼の姿はとても軽やかで変な気負いもない。〈こといづ〉とは〈コトが出づる〉という意味の造語。そのタイトル通りにその場所から生まれる唄や音がのびのびと育っていくのもまた自然の流れ。この本には〈高木正勝という生き方〉の心地よさを知れる幸せがある。