INTERVIEW

エレクトロ・ロックの新鋭ラモナ・フラワーズが語る、新作『Strangers』でやっと辿り着いたサウンドの秘密

エレクトロ・ロックの新鋭ラモナ・フラワーズが語る、新作『Strangers』でやっと辿り着いたサウンドの秘密

直球のギター・ロックから、R&Bやベース・ミュージックの影響を汲んだハイブリッド志向の表現へと、インディー・バンドと総称される英国人アーティストの佇まいが少しずつ変わり始めた2010年代の初め、ブリストルで誕生したのがラモナ・フラワーズだ。

厳密には、この5人組――スティーヴ・バード(ヴォーカル)、サム・ジェームス(ギター)、ウェイン・ジョーンズ(ベース)、デイヴ・ベッツ(キーボード、ギター)、エド・ガリモア(ドラムス)――のうち3人のメンバーも、それまではギター寄りの別のバンドで活動していたが、ここにきてエレクトロニック・サウンドを用いて実験を始め、アルバム『Dismantle And Rebuild』(2014年)でデビュー。メロディックなポップ・ソングと、ダブステップなどに根差した音響テクスチュアを融合させたモダンなスタイルを打ち出し、高い評価を浴びた。

その後セカンド『Part Time Spies』(2016年)では80年代色を強め、2017年には〈FUJI ROCK FESTIVAL〉と単独公演で2度来日を果たした彼ら。1月末に日本で登場したサード『Strangers』で、さらにダンサブルな曲を聴かせるに至るまでの、音楽的変遷を振り返ってくれた。

THE RAMONA FLOWERS Strangers Distiller/ワーナー(2019)

 

バンドとして、常にオープンマインドでなければならないと思うんだ

――思えば、あなたたちのファースト・アルバム『Dismantle And Rebuild』の冒頭を飾ったのは“Tokyo”と題された曲でした。以後東京を何度か訪れてみて、曲が持つ意味は変わりましたか?

サム・ジェームス「そうだね、あの曲を作った当時の僕らにとって東京は、映画やテレビでしか見たことがない街だった。そこから得た視覚的イメージが曲に反映されていたわけだけど、実際に来てみて〈ああ、完璧に合っていたな〉と再確認できたよ。曲の気分を見事に総括している街だと思う」

――『Strangers』からのシングル曲“Out Of Focus”のPVも、日本で撮影した映像で構成していますね。

エド・ガリモア「ああ。2017年に来た時に、日本での自分たちをずっと映像で記録していたんだ。といっても、撮影していたのは主にサムなんだけどね」

サム「だから僕はあまり映っていないんだよ(笑)」

エド「僕ら5人のパーソナリティーを捉えながら、ツアー中のバンドの様子を映像に留めたいと思ったんだよ。ほかの場所でも撮影したんだけど、結局ほぼ全編、日本の映像でPVを構成することになったのさ」

――さて、ラモナ・フラワーズはすでに同じラインナップで7年間活動していて、ウェインとサムとデイヴはそれ以前から同じバンドに在籍していたそうですね。これほど緊密な関係を長期間保つのは簡単ではないと思うんですが、その秘訣は?

デイヴ・ベッツ「アルコール(笑)! ほら、5人のうち誰かが部屋から出て行った時に、そいつをジョークのネタにできる余裕さえあれば、バンドはうまくいくもんなんだよ」

サム「うん。ユーモアのセンスは必須だし、センシティヴになり過ぎないことも重要だ」

スティーヴ・バード「それに僕らはとにかく、音楽を作ること、プレイすることが大好きで、そういう情熱を分かち合っているしね」

サム「もちろんこの間に、厳しい時期も体験したよ。バンドとして前進できていないように感じて、疑問を抱いたものさ。活動を続けることに意味があるんだろうか、 多くの時間を費やして一生懸命いい曲を書いても、人々に聴いてもらえないままに終わってしまうんじゃないか――とね。でも究極的にはスティーヴが言ったように、音楽が好きだからこそ活動を続けられたんだ」

スティーヴ「うん。音楽活動をやめたら、自分たちの人生から何か重要なものが抜け落ちたような気分になるだろうね。バンドが自分という人間の一部と化してしまっているから。音楽を通じて自分を表現する手段を失ったら、人間として機能しなくなるんじゃないかな」

――サムとウェインとデイヴは2000年代後半にケミスツというギターロック・バンドで活動していましたが、2012年にラモナ・フラワーズとして再出発した時、音楽的方向性はどこまで見えていたんですか?

サム「色々話をしたのは覚えているけど、最終的な着地点までは見えていなかったな」

デイヴ「『Dismantle And Rebuild』のプロデューサーであるアンディ・バーロウが、方向を定めるうえで、かなり貢献してくれた部分がある。僕らが進むべき道を示してくれたというか。当初からエレクトロニックな要素を取り入れようとしていたんだけど、どうも整合性に欠けていて、アンディがそれをうまくまとめてくれたんだ」

サム「彼が在籍していたラムは、エレクトロニック・サウンドに重きを置いたバンドだったからね。新しい方向性を探ってあれこれ試していた僕らのために、アンディは、さまざまな場所へと繋がるドアを開いてくれたんだ。いまとなっては、ほとんどギターを弾かなくなった(笑)。その代わりにシンセとかサンプラーとか、仕事が増えたけどね」

エド「バンドとして、常にオープンマインドでなければならないと思うんだ。特にソングライティングをしている時は、自分たちを制限しないようにして、どんなアイデアであろうと受け入れる。プロダクションの段階で、自分たちらしい表現に馴染ませることができるか否かの問題だから」

――2010年というと、まさに英国のシーンの風景が変わりはじめた時でした。XXやフォールズを始め、バンドの形態をとりつつエレクトロニックな要素を取り入れる試みが見られて、そういう意味では時流に乗っていましたよね。

エド「そうだね。もうひとつ言えるのは、あの頃にはテクノロジーがかなり進化して、以前に比べると、容易にいろんな機材を入手して、誰もが手軽にエレクトロニックなサウンドや、おもしろいテクスチュアを作れるようになっていた。それも音楽性の変化に寄与しているよ」

デイヴ「とにかくエキサイティングだったし、同時にフラストレーションもあったし、いろんな気分が交じり合った複雑な時期だったね。結果的には有意義だったよ」

スティーヴ「うん。ファーストには大好きな曲が多くて、例えば、“Tokyo”はほぼ毎回ライヴのセットに含まれている。何度プレイしても飽きないんだ。『Lust And Lies』や『Dismantle And Rebuild』も然りで、作った時から好きだったし、いまでも愛着があるよ」

エド「それに、バンドによってはファーストで確固としたスタイルを完成させて、身動きがとれなくなるケースも少なくないよね。でも僕らの場合はそうじゃない。進化の余地がある、すごく柔軟なアルバムを作った気がするんだ」

 

楽しいアルバム、そして売れるアルバムにしたかった

――シンガーとして、スティーヴに白羽の矢を立てた理由は?

サム「なぜだったかな……さっぱり思い出せないよ。ほかに候補がいなかったんだ(笑)」

ウェイン・ジョーンズ「当時はヘアスタイルもイケていたしね」

スティーヴ「なんで過去形なのさ!」

デイヴ「モグワイみたいなインスト・バンドにしておけば良かったかもね。そのほうがずっと楽だったと思うよ(笑)」

サム「冗談はさておき、基本的に声が大きい男なんだけど、すごくトーンがユニークでね。『Dismantle And Rebuild』をレコーディングしていた時、彼がたまたま、試しにファルセットで歌ったんだ。それを聴いたアンディが〈素晴らしいじゃないか!〉と絶賛して、それをきっかけにファルセットを多用するようになったのさ」

スティーヴ「それまではいつもナチュラルな声で歌っていたから、自分の声域の中に、いままで存在を知らなかった部屋を見つけた気分だった。いまではみんな、〈ファルセットで歌え〉ってうるさいから、ナチュラルな声で歌わなくちゃいけない時に、少し戸惑うくらいだよ」

――セカンド・アルバム『Part Time Spies』では、80年代のシンセ・ポップなどの影響が強まり、グッとキャッチーになりましたね。

サム「うん。僕らの場合、ファーストがたいしてヒットしなかったから、そういう意味のプレッシャーがなかった(笑)。だからファーストの時と同じように実験をしながら、やりたいことをやった結果があのアルバムなんだ。ツアーの影響も大きくて、ライヴ向けの曲を増やしたかったというのもある。いつもセットリストを構成するのに苦労してたんだよね。どこかにダレる箇所があって……」

エド「曲そのものは大好きでも、ライヴで演奏するとなると話は違うからね。必ずしも高揚感を与えてくれるとは限らないし、オーディエンスを盛り上げられるかどうかもわからない。そういう意味で、ライヴで演奏している時に自分たちが楽しくて、かつオーディエンスも盛り上がる曲がどれなのか、徐々に見えてきたんだ。で、その延長にある曲を重点的に作った感じかな」

――プロデューサーには新たにクリス・ゼインを起用しました。彼が果たした役割は?

サム「以前からクリスのプロダクションのスタイルが好きでね。僕ら自身がサウンドを変えたいと考えていて、それを実現するにあたり、作業を円滑に進める環境を整えてくれた。本当に才能豊かな人なんだ。有能なプロデューサーとは、自分の意見を押しつけるのではなく、やんわりとアーティストの視点を変えてくれる人なんだよ。

そして今作『Strangers』で再びクリスと組んだんだけど、今回はもうひとりコラボレーターがいた。コウスケ・カスザという日系英国人プロデューサーなんだ。すごくウマが合ったから、このあと彼と3週間セッションをやる予定だよ」

――ちなみに『Strangers』に着手した時は、どんなゴールを掲げていたんですか?

サム「まず何よりも楽しいアルバムにしたかった」

ウェイン「そして売れるアルバム(笑)!」

エド「あと、過去に僕らのアルバムは、うまく流れないとか、一貫性がないとかいった批判を受けたことが幾度かあってね。その点『Strangers』には間違いなく、一貫性がある。これまででもっとも完成度の高い作品だという意見で、全員が一致しているんだ」

スティーヴ「いま聴き直すと明確にわかるんだけど、『Part Time Spies』はまさに、『Strangers』で辿り着こうとしていた場所に向かう、中間地点だった。だからセカンドより『Strangers』のほうがひとつの作品として一体感があるし、3枚のアルバムを並べてみると緩やかな進化の過程が浮かび上がるんだ。どのアルバムにもいい点と悪い点がある。それにしても、たぶんメンバー全員にとって、『Strangers』が一番のお気に入りアルバムだよ」

――ソングライティングの方法も変えたそうですね。従来のように全員で共作するのではなく、別々に作業をして。

エド「ああ、中にはみんなで一緒に書いた曲もあるけど、各自アイデアを練って、それを送り合ってフィードバックを得ながら形作るというやり方も、初めて取り入れたんだ」

サム「もしくは、2人で書いたり、3人で書いたり、異なる組み合わせでコラボしたケースもある」

エド「最終的には、どの曲も全員参加で仕上げたんだよ」

――作詞はスティーヴに一任されているんですか?

スティーヴ「うん。でもみんなの意見も反映されているよ。バンドとして分かち合う曲だから、あらゆる面で全員が納得する必要がある。それはなかなか面倒なことなんだけど(笑)」

サム「中には特定のイメージを喚起する曲があって、そういう時は〈こんな感じのことを歌ったらいいんじゃない?〉とか、〈この曲はこんなことを想起させる〉とか、僕らのほうから提案するんだ。それを受けて、スティーヴが歌詞を綴ることもあるよ」

スティーヴ「題材は、僕自身にとって大切なことだったり、僕と接点がある人たちの話だったり、ほかのメンバーの人生に起きていることだったり、いろいろだね。僕らは長い時間を一緒に過ごしているから、お互いの人生で何が起きているのか知っているんだ。できるだけパーソナルで、かつ誰もが共感できる内容になるよう心掛けているよ」

エド「特に『Strangers』に関しては、スティーヴの言葉はいままで以上に普遍的で、共感を誘う内容になっていると思う。僕らは各曲の具体的なインスピレーション源を知っているけど、アルバムを聴いた友人たちは、みんなそれぞれ自分の体験に重ねて解釈している。つまり、スティーヴは普遍的な表現に仕上げているんだよ」

――究極的に『Strangers』とアルバムを命名したのはなぜでしょう?

サム「言葉そのものが、アルバムをうまい具合に物語っているように感じたのさ。特に歌詞の面でね。恋に落ちること、或いは、恋に破れることを歌っていたり、長い間会っていない友人について歌っていたり、恋愛関係にあるのに相手に距離を感じてしまうことを歌っていたり……そういう歌詞の内容にリンクする言葉だったんだ」

――最後に、今年の予定を訊かせて下さい。

エド「コウスケとのセッションのあとは、〈SXSW〉に出演する予定だよ」

サム「新曲をどんどん書いて、できるだけたくさんライヴをやって、とにかく忙しくしていたいね。日本にも戻って来るよ」

エド「このままずっと日本にいるっていうのもアリかもね(笑)」

 

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