形あるものは永遠ではなく、常に姿を変えいずれは崩れ落ちる。作曲家の霊感が記譜された作品もまた、記譜され、固定化された瞬間に元の形からは変容するが、優れた演奏家はその深奥に肉薄し、繰り返し演奏されることによって時代の空気感をも内包して進化し続ける。急病キャンセルのポリーニの代役として大きな話題となったコンサートでも演奏した、後期ベートーヴェンやジェフスキ《不屈の民》などを録音してきたレヴィットの次のCDのプログラムは亡き友に捧げられたもの。晩年冷たいライン川に飛び込んだ時期に書かれたシューマンの変奏曲、バッハ、リスト、ジェフスキ、ビル・エヴァンスまで。