Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載がスタートしました! 更新は毎週火曜(歌謡)日。数無制限でNEWな楽曲を中心に、ときには新着モノに限らず個人的ブームな楽曲も紹介します、というユルいスタンスでやらせていただきます。毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません! *Mikiki編集部

 


【天野龍太郎】

三輪二郎 “おもいで”

ベースやバスドラムがパワフルに響くところが最高な三輪さんの新作『しあわせの港』から。この“おもいで”はタイトルどおりノスタルジックな歌詞なんですが、ウェットなところがまったくなくて、こういうエモーションを徹底してカラッと乾いたサウンドで提示する姿勢に惹かれます。サビのメロディーにうるっときますね(歌詞の〈動物園〉は野毛山動物園?)。

吉田悠樹の二胡の音色が不思議な異化効果をもたらしていた『おはよう おやすみ』、豊田道倫プロデュースの弾き語り作『レモンサワー』、沢田穣治プロデュースのユニークな『III』と、アルバムごとに音楽性が全然違うことを改めて確認(以上、敬称略)。そのうえで新作はロックでブギーに振り切れていて、痛快このうえないです。

 

DYGL “A Paper Dream”

今週はですます調でいきます。サウス・ロンドンで録音されたというDYGLの新曲。ここまでまっすぐなブリティッシュ・ロック主義の曲はひさしぶりに聴きました。ジャンプ・ブルースとかスキッフルとか、そういう埋もれた音楽を受け継いでいる感じも古き良き英国音楽的。かえってフレッシュです。

 

No Buses “Pretty Old Man”

最近よく名前を聞く(ということは、注目度が高まっている)No Busesの新曲。人懐っこい“Girl”のような曲と比べると、やさぐれています。言ってしまえばポスト・パンクなサウンドなのですが、シンプルなヴァース/コーラス形式のなかで微妙に演奏のニュアンスが変わっていくのがいいですね。

 

Daichi Yamamoto “上海バンド”

昨年インタヴューさせていただいた桑原あいさんのアルバム『To The End Of This World』(傑作!)やSTUTSの痛快作『Eutopia』にも参加していたラッパー、Daichi Yamamotoから新曲が届けられました。メロウなサウンド、内省的なリリック、聴き手との距離をグッと縮める親密な、低い声のクルーナー・ラップ。どれを取っても素晴らしいの一言です。

 

THE NOVEMBERS “ANGELS”

この連載で毎週THE NOVEMBERSの新曲をご紹介していますが、ついに新作『ANGELS』は今週リリースとなりました。そこからタイトル・トラックが公開に。歪んだギターとピアノ、シンセサイザーの清廉な響きに導かれ、天上の世界へと上昇していく6分間。これまでの4つの新曲をお聴きの方であればお気づきかと思いますが、バンドは完全に新たな領域に踏み込んでいます。

 

【田中亮太】

bonobos “アルペジオ”

bonobosが悪かったことなんて一瞬もない!んですが、ここにきてまた〈最高〉を更新したんじゃないでしょうか。兵庫県豊岡市のプロジェクト〈ミュージシャン・イン・レジデンス 豊岡〉に参加する彼らが2018年秋の同地での滞在を経て制作したという新曲。僕では何拍子なのかもわからない(酒井さん、教えてください)複雑なリズム・パターンと各メンバーが高度な演奏技術を惜しみなくつぎ込んだ熱量高めのアレンジメント……めちゃくちゃカッコイイです。先進的かつ色鮮やか、まさにポップ! 一刻も早く中村佳穂BANDと対バンしてほしい。

※8分の6拍子です(酒井)

 

Coff “Society”

2018年まで、どついたるねんのベーシストとして屈強なグルーヴを編み出していたDaBassが、バンドを脱退しソロで始動。Coffとして初楽曲を発表しました。資料にも〈ギャグなし、笑いなし〉とありましたが、確かにとてつもなくクール! サイケな音×モダンなプロダクションによる白昼夢ファンクです。ブラジリアン・ジャズ調の間奏が洒脱。また、ファルセット気味の歌声には佐藤伸治を思わせる瞬間も。この曲を収録したアルバム『Tiny Music』は4月17日(水)にリリース。ちなみに四畳半の自宅で録音したから〈Tiny〉らしいです。

 

Japanese Summer Orange “The Ones”

以前紹介した現役大学生の男性1人による宅録ユニット、Japanese Summer OrangeがセカンドEP『The Ones』を先日リリース。このタイトル曲は、どこにも行きたくない・何もしたくない・やる気がでない日の気持ちを音像化したかのようなムーディーなローファイ・ポップです。皆様ズパラダイスが監督したMVは、フェザーデイズ“Lucky Girl”にオマージュを捧げていて(日本仕様へと完璧にトレース……)笑えました。ぜひ観比べてみてください。

 

【高見香那】

徳利 “Parsley”

 

YouTuberとしても活躍中のラッパー、徳利さん。昨年のマイベスト・ソングのひとつ“Elaiza”(Soakubeats『Crude』に収録)が7インチ・シングルになるとのニュースに小躍りしていたら、新曲が発表されていました。かの“セロリ”へのオマージュ曲“パセリ”。まあ聴いてみてほしいです。第一声〈リッスン〉から徳利特有の〈エイ~~~〉でニヤリ、最後は〈中村獅童〉で終わります。スゴイ曲だ。音楽でもなんでも〈笑えるかどうか〉が重要な心わしづかみポイントとしてあるのですが、徳利はそんな私をいつも満足させてくれるのだ。

 

SALU “RAP GAME”

昨夏のKOMA DOGG(LDH MUSIC)への移籍は胸がアツくなりましたよね、心からカッコいいなと思いました。ちなみにSALUはラッパーとしての才能はもちろんヴィジュアルも華やかで中性的な美形で間違いなくスター選手なのに、どこか裏番長というか陰なムードをまとっているのが、好きなところ。韓国のOKASIANなんかにも同様に感じるのですが。なんてどうでもいいですね……。

で、他アーティストへの参加曲もバンバン出てるなか発表された新曲は、そんなスター・ラッパーのSALUが〈Interviewじゃ読めないおれのバックグラウンド〉と、ラッパーであることの矜持/決意について歌ったもの。が、個人的には知られざるバックグラウンドがどうという点よりも、ブレンダ・ラッセルの名曲“Piano In The Dark”をサンプリングしたちょっとエモいトラックにSALUのラップが心地よく泳ぐ、単純に超いい曲だと思ったのです。ライヴで映えそうです。ビデオにSKY-HIやAwichら縁ある面々がカメオ出演しているのも豪華すぎるですね。

 

【酒井優考】

サンプリエ “セカイセイフク”

2週前にこのコーナーでも紹介したKing Gnuの“白日”にハマりすぎて、もう月間どころか年間ベストソングでもいいんじゃないかって思ってるくらいなんですが、その“白日”のPVに出ているキーボーディストの一人が深澤希実さんというお方。どこかで名前を聞いたことがあるな、と思っていたら元POLLYANNAのヴォーカルにして、ゲーム「スプラトゥーン2」のBGMを生演奏するバンド、Wet Floor Shibuyaのメンバーの方。いまはサンプリエというバンドをやっているそうで最新曲を聴いてみたら、ギターはPOLLYANNAの現ギタリスト、qurosawaさんじゃん(いま「DTテレビ」って番組に出演したり眉村ちあきバンドのギターを弾いたりで話題の男)! ここで繋がるのか! qurosawaさん、めっちゃいいのにいままで聴かなくてごめんなさい……。若くて、青くて、なんか10代の頃を思い出しました。情報番組のエンディングとかで流れそう。

 

バーチャルリアル “あいがたりない(feat. 中田ヤスタカ)”

VTuberユニットの楽曲を中田ヤスタカが作詞・作曲・編曲。VTuberが流行っているって最近ニュースでも見るし、メジャー・デビューするアーティストもいてレヴュー原稿を書くこともあるんですが、こっち方面に疎くてついていけてないのが正直なところ。でもヤスタカサウンドになってしまえば違和感なく入ってくるというか、Perfumeとかとそこまで変わんないじゃんって思いました(ファンに全然違うって怒られそう、ごめんなさい……)。一方で、ヤスタカファン的には8bit系ピコピコ音が曲に出てくるのが久しぶりなので、capsuleの“キャンディーキューティー”的な懐かしさとVTuberユニットという新鮮さが同居して、とってもいい感じになってると思います。こういうところから流行を勉強しなきゃな。