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シティ・ポップとも共鳴するアーバン・メロウ&ブリージンな2010年代ならではの選曲による、阿川泰子のニュー・パースペクティヴ

――なるほど。やっぱり90年代だとこうはならなかったかな、というのはありますね。2010年代ならではの感覚というか。

「90年代に作っていたら、Mondo Grossoによる“Skindo-Le-Le”のリミックスとかもありましたし、もう少しクラブ・ミュージック寄りになっていたかもしれませんね。そんな中で個人的には“L.A. Night”は特別な曲で。ライト・オブ・ザ・ワールドの“London Town”をすぐに連想するし、80年代UKソウル〜ジャズ・ファンクのリヴァイヴァルや、ロイ・エアーズに代表されるイギリス人が好きなアーバン・メロウな感じがあって、僕もDJプレイしていました。あと個人的に、タイトル的にも曲調的にもこの曲から思い浮かべるのは、何と言ってもレオン・ウェアの〈Free Soul〉人気曲“Why I Came To California”ですね。

――邦題〈カリフォルニアの恋人たち〉ですね、〈たまらなく、アーベイン〉な(笑)。

サイド・エフェクトのオージー・ジョンソンのプロデュース(ミキ・ハワードとの共作)でLA録音された阿川泰子の絶品メロウ・グルーヴ“L.A. Night”(84年)。クラブ・シーンを背景にしたイギリスの人気コンピ・シリーズ〈Mastercuts〉のレア・グルーヴ編にも収録

インコグニートの母体となったことでも知られるUKソウル~ジャズ・ファンク・グループ、ライト・オブ・ザ・ワールドによる、AORファンからも支持されるメロウ・クラシック“London Town”(80年)。ヴァイブは阿川泰子“L.A. Night”と同じヴィクター・フェルドマン

マーヴィン・ゲイの名盤『I Want You』のコラボレイターとしても知られるソウル・ミュージックの偉人、レオン・ウェアの“Why I Came To California”(82年)。〈Free Soul〉コンピにも収録され大きな人気を呼んだ、アーバン・メロウ~AORサイドを代表する傑作

「そういう意味でも“L.A. Night”は、『Free Soul Yasuko Agawa』の核になっている曲ですね。今回、ビクターから7インチ・レコードも出したいという話をいただいていて、変化球なセレクトを考えてもよかったんですけど、結局“L.A. Night”と“Skindo-Le-Le”は外せないという結論に落ち着きました(笑)」

――7インチのリリースも楽しみですね。“L.A. Night”との連関性だと、“In The Name Of Love”もアーバン・メロウ度数が高い曲です。

「グローヴァー・ワシントン・ジュニア&ビル・ウィザースの“Just The Two Of Us”を書いた3人の曲ですね。曲調も似ていて、こちらはラルフ・マクドナルド&ビル・ウィザースのカヴァー」

――〈カリフォルニアの恋人たち〉から〈クリスタルの恋人たち〉へ(笑)。アーバンな洗練とブラック・ミュージック的な艶やかなフィーリングが印象的です。

数々のR&B/ヒップホップのメロウ・サンプルとして使用されたことでも名高く、〈クリスタルの恋人たち〉という邦題でAORファンにも愛されている、ビル・ウィザースが歌うアーバン・メロウ・ソウルの金字塔、グローヴァー・ワシントン・ジュニアの“Just The Two Of Us”(80年)

“Just The Two Of Us”の続編として着想されたであろう、AOR路線のジャズ/フュージョン・アーティストによるビル・ウィザースが歌うアーバン・メロウ・ソウルのもうひとつの人気作、ラルフ・マクドナルドの“In The Name Of Love”(84年)