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珍曲揃いのヴァイオリン名曲集をフランス仕込みの美音で堪能!

 パリ音楽院でジェラール・プーレとオリヴィエ・シャルリエに師事し、同大学院を首席卒業したヴァイオリニストの本田早美花は現在フランス国立ストラスブール・フィルのコンサートマスター、ストラスブール市立アカデミー&同音楽院でヴァイオリンと室内楽の教授を務めている。ソロでの演奏活動はもちろん、自ら創設した〈アンサンブル・モンソロ〉での演奏活動など、室内楽にも積極的だ。そんな彼女が世界初録音を含む新譜『Souvenirs~思い出』をリリースした。

本田早美花 Souvenirs~思い出 たまゆら(2018)

 「珍曲コレクターでもあるプロデューサーの宮山幸久さんからご紹介いただいた曲や、私がこれまでに演奏してきた大切な作品を集めました。特にデュロソワールの《子守歌》やイザイの《子供の夢》はアンコールなどでもよく演奏していて、前からぜひ録音したくかったんです」

 本田はデュロソワールの作品に運命的に出会っている。

 「3年ほど前、たまたまデュロソワールの息子さんと知り合う機会があり、作品を知りました。未出版の作品を出版するなどの息子さんの活動により、フランスでは少しずつ知られるようになってきました。美しく魅力的なデュロソワールの作品を日本の皆さんにも聴いて頂きたくて今回収録しています」

 イザイはヴァイオリニストにとって欠かせない存在だが、それはもちろん本田にとっても同じ。特に彼女はイザイへの想いが強く、すでに無伴奏ヴァイオリンソナタは全曲録音を行っている。

 「イザイはずっと私のテーマとしている作曲家です。日本ではソナタばかり演奏されていますが、《子供の夢》は、フランスでは結構有名なんですよ」

 そしてやはり注目は“世界初録音”となるヴィエニャフスキの《サンフランシスコの思い出》、モンティの《カムチャッカ》、そして草川信の《ダリヤ》だろう。特にヴィエニャフスキはエピソードも興味深い。

 「ヴィエニャフスキを愛する宮山さんが40年以上かけて楽譜を探し出した作品です。ヴィエニャフスキの作品を全曲録音しようとしていた、あるヴァイオリニストの奥様から楽譜を頂いたそうです。自筆譜のコピーしかなく、楽譜の浄書からスタートでした。《サンフランシスコの思い出》は、彼の知られている作品とはかなり違った技巧が凝らされています」

 美しい音色と豊かな歌心で紡がれる世界初録音を含む国際色豊かなプログラムは、通して聴いているとまるで旅へと誘われるようだ。ぜひこの新しい出会いの連続を多くの方に体験してほしい。