「ピアノファン垂涎の一枚」は数多あると思ってきたが、ここまでピアノファンを唸らせる企画は珍しい。1300年代はマショーからリゲティまでの、700年の音楽の変遷を一人の奏者が2枚組CDにまとめた力作。CD1はバンショワ、バードらからバッハまで。CD2はモーツァルト、ブラームスを経てシュトックハウゼン・グラスも網羅する。アルスノヴァ・ルネサンス・バロックに古典・ロマン派、近/現代が一続きの作品に仕立てるという挑戦に敬意を評したい。この選曲をモダンピアノで弾く時間旅行は逆に懐古主義ではなく新しい音楽体験の提示なのかもしれない。