Page 2 / 5 1ページ目から読む

世界観の共有

 考える間もなく余白や余韻がノイズで埋め尽くされる息苦しい日常や、わかりやすくラベリングされ、瞬く間に消費される現代社会に対する深い憂い。その流れに抗って広がる自由な6人のスピリット。それが作品に一貫して流れるブルース・フィールとなり、サイケデリックともプログレッシヴとも形容し得るディープな長尺ジャムの大作“In The Zoo”や“Indigo Blues”“Hit Me, Thunder”を生み出すに至った。

「今はスピードが早い世の中じゃないですか。でも、俺らはその流れに帳尻を合わせるために音楽を始めたわけではないし、続けているわけでもない。そして、何より今まで通りの音楽の作り方で生まれる音楽に自分たちが納得できなくなってしまったということなんですよね」(YONCE)。

「だから、10年後に〈この時のチャレンジは重要だったんだ〉と言い切れるサウンドを作り上げるために、この2年、メンバーそれぞれがすごく努力して。俺個人はケルト音楽やインド音楽、イスラエル、エジプトの音楽とか、シルクロード伝いに音楽をディグって感性を磨いて、そこから受けた影響をバンドに持ち寄ったんですよね」(KCEE)。

「俺はピアノとオルガン、フェンダー・ローズ、シンセサイザーの歴史の一番根源まで辿っていって、この2年間はクラシックをずっと聴いていたんです。グレゴリオ聖歌、紀元前200年に生まれた水オルガン、そこから生まれるバロック時代、ハイドン、バッハ、ショパン、リスト、ドビュッシー、シューベルト、メンデルスゾーン……最終的にはプッチーニの〈トスカ〉のようなオペラまで聴くようになったんですけど、そこで受けた影響をSuchmosの曲に混ぜる際に具体的な音の話をメンバーにしていたら、行き詰まってしまう。だから、レコーディングを進めるにあたってメンバーとは、もっと大きく捉えた曲の世界観、ストーリーやイメージを共有するようになったんです」(TAIHEI)。