INTERVIEW

輪入道『HAPPY BIRTHDAY』 より広いフィールドに飛び出した最強の妖怪が、新たな覚悟で綴った渾身の新作を語る!

輪入道『HAPPY BIRTHDAY』 より広いフィールドに飛び出した最強の妖怪が、新たな覚悟で綴った渾身の新作を語る!

傑作『左回りの時計』以降の大躍進によって、より広いフィールドに飛び出した最強の妖怪。視野を広げながら足下を見つめ直した男が新たな覚悟で綴った渾身のニュー・アルバム!

機会を潰したくない

 2017年2月のセカンド・アルバム『左回りの時計』リリース以降、輪入道は目覚ましい活躍を遂げ、活動の場を広げ続けている。人気番組「フリースタイルダンジョン」に2代目モンスターとしてレギュラー出演、夏恒例のヒップホップ・フェス〈SUMMER BOMB〉に初登場。インターネットラジオ局〈WREP〉やFRESH LIVE「わにゅう道場」、bayfm「暴走ぱんちらいん」ではパーソナリティーを務め、2018年5月には自主イヴェント〈暴道祭〉も開催した。

 「2017年はとにかくライヴが多い年でした。やっぱり〈ダンジョン〉の影響が大きくて、あえてこういう言い方をしますけど、〈ヒップホップ村〉じゃない場からのオファーが俄然増えた。初めての街にもたくさん行ってメチャメチャ忙しい年でした」。

 人気が高まるにつれて輪入道の名前は、アイドルやロック・バンドらとステージを共にする多様なイヴェント/ライヴのフライヤーでも目にするようになった。

 「ラップを始めた頃、〈ブラックバス〉っていうあだ名だったんです。来たオファーは何でも喰うから(笑)。もともと自分も10代の頃に行ったダンス・イヴェントでたまたま観たラッパーに衝撃を受けてマイクを握り出したから、〈文脈がないとダメ〉っていう意識が強くないんです。全然知らない状態で観てもスゴイものはスゴイと思うだろうし、その場でたまたま出くわしたけど生で観て一発で掴まれたとか、そういうことがあると、その人の心にずっと残るだろうなと思うから、そういう機会をできるだけ潰したくないんです」。

 そのように多忙を極める一方でMCバトル大会にも出場。以前のように自分からエントリーすることはなくなったものの、〈ENTER MC BATTLE 2017〉や〈THE 罵倒 2018〉で優勝するなど、ゲストとして迎えられた先で好成績を収めてきた。

 「自分の力量を考えるとバトル卒業はまだ早いと思ってました。あと、バトルの現場からは日頃の創作のモチベーションも得られるんです。焚きつけられるものもあるし、ディスられるとカーッと来るし(笑)、逆に納得させられてしまうこともある。現場ならではの刺激を大いに貰えるんです」。

輪入道 HAPPY BIRTHDAY GARAGE MUSIC JAPAN(2019)

 2月に発表した客演集『助太刀』の顔ぶれからもわかるように、近年は多岐に渡る強者ラッパーと共演し、畑違いの他流試合でも腕を磨いてきた輪入道。2年ぶりのオリジナル・アルバムとなる新作『HAPPY BIRTHDAY』は、それらの経験を糧にした一枚だ。本作では初めてゲスト・アーティストを招き、トラックメイカーも過去最高に多彩。持ち味である男臭くて泥臭いスピットもあれば、トラップ調のフロウ、女声シンガーを迎えたシティー・ポップ風情の曲もあって、ヴァラエティーに富んだ仕上がりとなっている。

 「男が一人でヘッドフォンで聴いてくれるのも嬉しいけど、みんなで車の中で流せるような気軽なものを作ってみたいというのが最初の構想だったんです。作っていくうちにどうしても重くて暗い曲が増えていったんですけど(笑)、いままで出した2枚よりは聴きやすくなってると思います」。

 

自分を貫きたい

 カジュアルさを求めたこともあり、今回アルバム・タイトルは横文字に。その表題曲は、自分の都合で大切な人の誕生日を祝えなかった後悔と、相手の幸せを心から願う愛情が入り交じる素敵なラヴソングだ。

 「いちばん伝えたかったのは〈生まれてきてくれてありがとう〉っていうことです。直接会って伝えるのがいちばんいいけど、メールでもいいし、電話でもいい。それをちゃんと相手に言おうぜって歌いたかった」。

 先日メジャー・デビューを果たした盟友GADOROを迎えての“ALIVE”は、両者が以前コラボした名曲“真っ黒い太陽”にも通じる〈闘う者〉へのエール。二人が今回テーマにしたのは〈生きる〉ということ。

 「毎日闘って、働いて、がんばって、疲れてる人への癒しや慰めをこれまで歌ってなくて。GADORO君の歌を聴いてると癒しや慰めになると思うんです。聴いてる人たちの中にあるクズな部分とかダメな部分に響くから。〈やってやる!〉じゃなくて、〈これでいいんだ〉って許される感じがGADORO君の歌にはある。そういう部分が欲しかったし、実際ガチッと出してくれた」。

 また、“UNDERGROUND ROOTS”では人生という樹に〈ダンジョン〉出演という大きな節目をつけてくれたZeebraを招聘。旧友のラッパーを通じて知り合ったという秋田在住のBERABOWが作ったトラックを聴いてすぐにZeebraと共演したいと直感したそうで、輪入道のヴァースでは、なかなか現状を打破できない苦悩やもがきがありのままに描かれる。

 「このリリックは、ジブさんへの人生相談みたいなもの。そういうふうに、もがけるステージまで来れたのはなぜかな?って考えたら、やっぱり根っこがあったから。根っこがなければこんな苦しい思いをすることもなかったけど、そもそもそこまで上がってきてないわけだから」。

 熱のこもった人生相談に、Zeebraは2ヴァース目で熱く返答。輪入道を力強いラップで叱咤激励している。

 「レコーディングの日にジブさんのリリックがプリントされた紙を貰ったんですけど、〈これ、壁に貼っといていいっすか?〉みたいな(笑)。もちろん自分の励みになるし、いまラップやっててこれからどうしていこうか悩んでる奴がこれを聴けば何かが絶対変化するって思ってる。そういう変化を与えられるモノを作れたことを誇りに思ってます」。

 一方、自身が主宰するGARAGE MUSIC JAPANの新顔となったN0uTYとの“RISK”は、痛みとリスクを背負って現代を共に生き抜こうとラップする共闘ソング。浮遊感のあるサウンドで「今回の中でいちばん現行っぽい音」と語る。さらに仙台出身のシンガー・北斗を迎えた“時代を超えて”では、ギタリストのウエノレイによるアコギの伴奏で弾き語り調の新たなスタイルに挑戦。3人のセッション時にフリースタイルしたラップを書き起こして、そのままレコーディングしたのも初めてだという。そして“YELL”では自身のラジオでの共演を機に繋がったという注目の女性シンガー、eillと共演。かつてないほどのポップなアプローチで新しい顔を見せている。

 こうして新しい扉を次々に開け放った輪入道は、今後どのような歩みを刻もうとしているのか。自身の出所を歌った“霜柱”で始まる本作は、未来への決意を歌ったドス黒い“BLACK”で終わる。

 「村の外に出たら話したくない人とも話さなきゃいけないし、自分が見てきた格好良いラッパーの人たちとは違うことをやらなきゃならない場面もある。いかにそこで自分色に塗っていくか。そのときに俺は俺を貫きたいと“BLACK”で言ってるんです。自分の中のブラックな部分、ブラック・カルチャーに憧れて出てきた部分を1mmも薄める気はない。外に出るときはそういう覚悟でやっていきたいなと思ってます」。

関連盤を紹介。

 

『HAPPY BIRTHDAY』参加アーティストの作品を一部紹介。

 

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