INTERVIEW

餓鬼レンジャー『ティンカーベル 〜ネバーランドの妖精たち〜』 フェス開催も控えて意気上がる大ヴェテランの新作!

餓鬼レンジャー『ティンカーベル 〜ネバーランドの妖精たち〜』 フェス開催も控えて意気上がる大ヴェテランの新作!

祭の季節を迎えて意気上がる4人+1神……見えない人には見えない(?)音楽シーンの妖精たちがまたも圧倒的に豪快で賑やかな新作を投下! 見える人には見えるはず!

またピュアな気持ちで

 DJオショウを新メンバーに加え、一昨年には5人(4人+1神)組としてアルバム『キンキーキッズ』を発表するなど、再始動後は着実な歩みが続く餓鬼レンジャー。曲の前フリというには出来すぎなウケるスキットで、楽曲以外でもグループの新たな結束(笑)を感じさせたそのアルバムから2年弱で届いた彼らの新作は、その名も『ティンカーベル~ネバーランドの妖精たち~』。ピーター・パンの物語に登場する妖精をタイトルとしたそのココロは、本作に向けたグループのキャッチコピー=〈大人になれない妖精たち〉も説明してくれているところだ。

餓鬼レンジャー ティンカーベル ~ネバーランドの妖精たち~ 東雲(2019)

 「〈ティンカーベル〉って見える人にしか見えないじゃないですか。餓鬼レンジャーもそうで。つまり、あんま知られてない(笑)。っていうのもありつつ、ピュアな気持ちで楽しんでたものが、だんだん折り合いをつけたりして楽しめなくなってしまうことってあるじゃないですか。それをもう一度楽曲だったり、4月のフェス(後述)で体現したいっていうことでもあって」(ポチョムキン)。

 ともあれ、これまでも事あるごとに意表を突くような絡みも見せてきた彼らのこと、世代やジャンルを越える大挙客演の起用も、それはそれでらしく見せちゃうのは彼らの遊び好き、祭り気質あればこそ。

 「みんな離れて暮らしててそれぞれのライフスタイルがあるんで、なかなか調整が難しいし、YOSHI君のフル稼働が難しいみたいなのもありつつ、今回はイヴェントありきでアルバム作ってみようみたいな。それありきなんでちょっと特殊な、コンピっぽい作りになってる」(ポチョムキン)。

 「昔なら無理だったけど、いまだったらメンバー全員が曲に入ってなくても全然楽曲として成立する流れが餓鬼レンジャーにはできてるから。昔のウータン的な感じでその看板さえ背負ってれば、ポチョムキン一人とゲストだけの曲でもそれは餓鬼レンジャーの楽曲になるし」(DJオショウ)。

 

偏差値48ぐらい

 ここでポチョムキンの口にふたたび上った〈イヴェント〉とは、4月20日に東京・LIQUIDROOMで彼らが初めて主催する音楽ヴァラエティー・フェス〈餓鬼園祭〉のこと。YOSHIの参加こそ少なめなものの、フェスの出演者も入れ替わり立ち替わりゲストに引き入れたアルバムは、今回も楽しさに溢れている。ポチョムキン、あっこゴリラ、お笑い芸人のコウメ太夫が一堂に会した“チクショー!!”は冒頭を飾る何よりの飛び道具だ。

 「印象的なフレーズをタイトルにしてそこから曲にしようって話しているうちに、コウメさんの〈チクショー!!〉じゃないかってことになって。そのテーマでヴァースを炸裂させてくれそうなのがあっこゴリラだった」(ポチョムキン)。

 「あっこゴリラちゃんはSNS見てもムチャクチャ書いてくれそうな予感があったし、普通にいま女性のラップ界を引っ張ってる感もあって、コウメさんにはパフォーマーとして客演していただいてる感じ。実はあの人、〈エア・マイケル・ジャクソン〉の世界の大会で上位に食い込むくらいダンスもキレキレなんですよ。だから、イヴェントでも曲の後半の4つ打ちみたいになるところで踊ってくれるんじゃないかな~とか考えながらトラックを作って」(DJオショウ)。

 続く“ちょっとだけバカ”では、Creepy Nutsとの共演が実現。オフビート気味なポチョムキンとオンビートで固い韻をハメていくYOSHI、その間を縫って自在にラップを転がすR-指定のマイクがGPの音に拮抗するそれは、まさに正調の餓鬼レンジャー meets Creepy Nutsな興奮があり。

 「もともとレゲトンとかトラップ系のトラックで進めてたんですけど、ファンクの要素も入れたくなって、レゲトンはサビに残して変化していった。この曲もそうですけど、いい意味で僕ら偏差値48ぐらいな、ちょっとバカでがんばってやってる感じが出てればいいなと。結果的にいい形になったと思いますね」(GP)。

 それに続く“キューバ・リブレ”では、ファンキーなホーン使いも前のめりなLIBROのトラックに、ポチョムキンとMummy-D、RYO-Z、LIBRO、DABOの5人が乾杯代わりにマイクを繋ぐ。

 「LIBROと俺とRYO-Z君で酒呑みながら曲を作っていく過程で、Dさんにフックをお願いしたらサイコーな感じでまとめてくださって、最後にDABO君に重しを乗せてもらって。最初にグループ組んだ時のお手本も、ラップにどっぷりハマったきっかけのひとつもRHYMESTERだったから、ここにきてDさんとやれたのも嬉しかった」(ポチョムキン)。

 

ギリギリでしっかり落とし込む

 今作では他にも、バイリ・ファンキをイメージしたというLil'YukichiのビートにCherry Brownとなかむらみなみ(TENG GANG STARR)が加わる“ランジェリー”や、YOSHIがLITTLE、FORKと韻を踏みまくる“The Skilled”などのコラボが盛りだくさん。かと思えば、LIBROと組んだ鶴亀サウンドの客演という形でポチョムキンが照れながらネタなしで歌にもチャレンジした“夢で逢いましょう”や、女優の伊藤沙莉を迎えたまんまニュー・ジャック・スウィングな90sレミニスの“NJな夜”、瑞々しいオケとshohey(THREE1989)の歌を背に〈まだ行ける〉の思いを真摯に届ける“クライマックス”なども。そして、もはや名物なスキットを挿んでアルバムの最後をシメるのは、Hiro“Bingo”Watanabe(HABANERO POSSE)のオケにメンバー全員が声を乗せた、GPいわく「カオス」な“ティンカーベル♪”だ。

 「南アフリカに〈ゴム〉っていう音楽ジャンルがあって、それを日本語ラップと絡ませたらおもしろいかなって。アフリカの最新ムーヴメントに詳しいBingoさんに相談しました。餓鬼レンジャーの歴史を振り返っても、サウスのタテノリだとかいち早くトレンドやクラブ・サウンドに繋がってきたし、一個ぶっこんでもいいかなって」(タコ神様)。

 最後に改めて今回のアルバムについて訊くと、「通しで聴いてみて、完全に情緒不安定なグループだなって(笑)。さっきまでバカ騒ぎしてたと思ったら、ちょっとグッと来てる自分がいるっていうのにビックリする」とタコ神様は笑った。メンバーの話がそれに続く。

 「特に“ティンカーベル♪”で締めることによって、不安なまま終わる(笑)。最後がいちばん狂ってる曲だから。でもそれもいまに始まったことじゃないっていうか、良く言えば餓鬼レンジャーの幅の広さだし、そうしたらおもしろく転がるっていうのがいままでのアルバムでも前例としてあるんで」(ポチョムキン)。

 「だからいっつもお客さんにも〈いい意味で裏切ってくるね〉って言われるんですよ。今回も作ってる時はこれどうなんだろう?って不安もあったけど、ギリギリでしっかりみんな落とし込んでいくというか」(GP)。

 「だから結果的に良いバランスのアルバムになったと思う。ヒップホップにいちばん盛り上がってる20代の子にドンピシャでハマる曲もあるし、後追いでこういう曲がヒップホップにあるんだよってこのアルバムで触れてほしい」(DJオショウ)。

 リリース後は「音楽以外のプラスアルファも楽しんでいただけるフェス」(DJオショウ)になるという〈餓鬼園祭〉も楽しみなところで、グループの今後についてもひとこと……。

 「メンバーでも増やしますかね(笑)。女子でも入れますか」(ポチョムキン)。

 「『あいのり』とか『テラスハウス』みたいな感じで」(GP)。

 「それで最後YOSHI君とポチョがブン殴り合うみたいな(笑)」(DJオショウ)。

 やっぱ訊くんじゃなかった(笑)。これでこそ餓鬼レンジャー。

 

『ティンカーベル ~ネバーランドの妖精たち~』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

 

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