COLUMN

ケミカル・ブラザーズ『No Geography』なぜ2人は20年前の機材を引っ張り出し、ボーダレスでビッグなダンス音楽を2019年に鳴らすのか?

ケミカル・ブラザーズ『No Geography』なぜ2人は20年前の機材を引っ張り出し、ボーダレスでビッグなダンス音楽を2019年に鳴らすのか?

Dust-Up-Beats!!
若かりし日の興奮を取り戻すために、地図上には載っていない自由でビッグなダンス・ミュージックを鳴らすために、ケミカル・ブラザーズの2人が4年ぶりに帰ってきた! 汗だくになるまで踊る準備は整っているか?

THE CHEMICAL BROTHERS No Geography Virgin EMI/ユニバーサル(2019)

 

原点回帰を窺わせる猛々しい一枚

 ケミカル・ブラザーズの2人はニュー・アルバム『No Geography』を制作するにあたって20年前の機材を引っ張り出し、かつて作業していたスタジオを再現。その結果、キャリアと共に磨かれる洗練味を壊していくような、生々しいエディット感と若々しいサウンドを手にすることに。そうした音楽面の変化と沿うように、ゆるふわギャングのNENEによる〈ぶっ壊したい何もかも〉というフックが印象的な冒頭曲、60~70年代の熱っぽいファンクやソウルのネタをサンプリングした“Got To Keep On”、そして先行シングル“Mah”などで解放や破壊を連想させるフレーズを多く用い、音像に勢いを与えている。また、子役のイーサン・ゴパールが参加した“We've Got To Try”をはじめ、ほぼバンドに近い編成で作られたものが目立ち、随所で意欲的な取り組みがなされているのも特徴だ。

 初期のEPを彷彿とさせるアートワークに違わず、原点回帰を窺わせるラフで暴力的なビートと、トレンドとは距離を置いてライヴ文化を強く意識した独自性の高いウワ音——それらが融合することで、出会ってから30年とは思えないほど勢いに満ちた猛々しい一枚。〈フジロック〉出演が決まっただけに、ライヴへの期待もいっそう膨らむ快作の誕生だ。 *佐藤 譲

 

分断を拒む大人のテクノ

 トム・ローランズとエド・サイモンズによる2人組、ケミカル・ブラザーズのニュー・アルバム『No Geography』がおもしろい。まずジャケットではゴドレイ&クレーム『Consequences』(77年)のアートワークをモチーフにしているのだが、その『Consequences』には強大なハリケーンによって地球全体が壊滅状態に陥り、それを音楽の力で鎮めるというストーリーがある。最近のエドはブレグジットへの懸念を公言するなど、分断が目立つ世界に対して批判的な姿勢を露わにしてきた。そうした背景を踏まえると、ジャケットからも強いメッセージを感じ取れるはずだ。

 もちろん、メッセージ的な部分だけではなく、今作にはサウンド面も興味深いところが多い。例えば、ゆるふわギャングのNENEがラップで援護した“Eve Of Destruction”は、2000年代のディスコ・パンクを想起させる出来。さらに“Bango”では初期のプロディジーっぽいレイヴィーなシンセを響かせ、“No Geography”では80年代エレクトロ・ビートとオービタルに通じる90年代テクノのフレイヴァーを掛け合わせている。このようにさまざまな時代やジャンルと接続した内容からは、多様な世界の実現を願う作り手の姿が透けて見える気もするのだが、どうだろう。こういう大人のテクノはもっと増えていい。 *近藤真弥

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