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ロジャー・ノリントン他『ベルリオーズ作品全集』 没後150年のアニバーサリー・イヤーに、史上初の完全なベルリオーズ作品全集が登場

没後150年のアニバーサリー・イヤーに、史上初の完全なベルリオーズ作品全集が登場

VARIOUS ARTISTS ベルリオーズ作品全集 Warner Classics(2019)

 ベルリオーズの没後150年を記念して、過去に類を見ない録音全集が登場した。これまでもコリン・デイヴィスやシャルル・デュトワによる記念碑的なベルリオーズ 作品集が制作されてきたが、それらは〈完全な〉全集とは言えなかった。今回の全集では、ほとんど知られていない声楽、合唱作品や、ベルリオーズ の手による編曲作品も収録され、〈ベルリオーズの全仕事〉と言うべき内容となっている。選ばれた演奏もバーンスタインの“イタリアのハロルド”、ムーティの“ロメオとジュリエット”、ナガノの“ファウストの劫罰”と一級品ばかりである。さらに1924年に録音されたルネ=バトン指揮コンセール・パドルーによる“幻想交響曲”の史上初録音もラジオ・フランスの協力により聴くことができる。160ページに及ぶブックレットにはベルリオーズの伝記作家として世界的に知られるデヴィッド・ケアンズによる解説や、自筆譜、手紙、歴史的プログラムなどの貴重な資料も多く収められており、これだけでも一見の価値があるものだ。

 こうした全集は、ついコレクションとして満足してしまいがちだが、ぜひ今回は、一枚一枚じっくりと聴いてみて欲しい。そしてこれは〈ベルリオーズ=幻想交響曲〉という方にこそ手にとって欲しいボックスなのだ。ベルリオーズはどうしても出世作である“幻想交響曲”のイメージが強い作曲家だが、“幻想交響曲”の華麗でグロテスクな音楽は彼の作曲家としての一側面に過ぎない。ベルリオーズの真の魅力は“幻想交響曲”のその先にあるのだ。“トリスティア”のような小さな声楽、合唱作品は隠れた名曲揃いだし、“キリストの幼時”や“ベアトリスとベネディクト”を聴けばその柔らかさや洒脱さに驚かされるだろう。きっとそうした作品との出会いは、あなたのベルリオーズ・イヤーをより豊かなものにしてくれるはずだ。

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