INTERVIEW

ワンダフルボーイズはマジで平和を願う。大阪アンダーグラウンドの覇者がメジャーに向かった理由

ワンダフルボーイズ『We are all』

ワンダフルボーイズはマジで平和を願う。大阪アンダーグラウンドの覇者がメジャーに向かった理由

6人組バンド、ワンダフルボーイズがメジャー・デビューを果たす。リーダーのSundayカミデは、先日活動を終了させた奇妙礼太郎との天才バンド/TENSAI BAND II、やついいちろう(エレキコミック)とのユニット・ライトガールズですでにメジャーを経験済み。本体のワンダフルボーイズが、満を持してメジャーに進出するというのは順調な流れに見える。ただ、同時に不思議さも感じていた。なぜなら、ワンダフルボーイズの中心にあるのは〈Do It Yourself〉の精神だと思っていたからだ。自身の音楽を〈マジであった事POP MUSIC〉と標榜し、身の回りで起きたことから名曲を生み出していくスタイル。2000年からSundayカミデが大阪で主催してきたイヴェント〈Lovesofa〉で築き上げたアンダーグラウンド・シーンの顔というポジション。なにより筆者が思い入れ深いのは、京都で行われている〈ボロフェスタ〉で毎年、大トリの真裏の時間帯、地下のサブステージに集まってきた猛者たちと盛り上がるあの熱狂の光景である。これまでのワンダフルボーイズは、目の届く範囲の一人ひとりと繋がってパーティーしてきたのだ。

メジャー・デビュー・アルバムとなる『We are all』はこれまでのワンダフルボーイズの活動を総括したうえで、新たな領域へと踏み出す作品である。Sundayカミデ自身の代表曲といえる“君が誰かの彼女になりくさっても”、“天王寺ガール”をはじめ過去の楽曲を再録して収録しているが、本作の軸はシンセをフィーチャーした新曲群。特に“CULTURE CITY”と“LOUVRE”は、Sundayカミデとアツムワンダフル(ギター)による打ち込みのトラックをベースに作られており、これまでのバンド・サウンドを飛び越えていく作風だ。とりわけ本作を象徴しているのは、表題曲の“We are all”だろう。Sundayカミデが〈これに引っ張られた〉と語るほどに、この曲は強いメッセージを放っている。いまワンダフルボーイズは、未知なる人たちとの出会いを強く求め、〈僕たちは一つだ〉と歌い出す。2010年の結成以降、最大と言っていい決断/変化について、Sundayカミデに真意を伺った。

ワンダフルボーイズ We are all Victor Entertainment(2019)

あいみょんのバックをバンド・メンバーと務めて

――今回ビクターからのメジャー・デビューとなりますが、まずその経緯を伺えますか?

「以前からメジャー・デビューするという話は何度かあったんですけど、なかなか実現には至らなかったんです。去年やついさんとのライトガールズというユニットの作品をビクターから出して、その流れでワンダフルボーイズも出してくれることが決まりました」

――ワンダフルボーイズには、大阪アンダーグラウンド・シーンの顔的なイメージがあったので、メジャー進出には本当に驚きました。

「いま自分が音楽をする環境を、よりフレッシュに変えたいと思っていたんです」

――Mikikiに掲載された2017年のインタヴューでも、「自分たちの音楽を変えるというよりは、音楽の周りにあるほかのものを変えていかないと状況は変わらない」と仰っていて、今回はまさに音楽の周りにあるものを変えようとした結果かと思ったのですが。

「まさにそうですね。自分が主催している〈Lovesofa〉もパーティーを続けていくという精神自体はずっと変わらないんですけど、周りの環境は絶えず変えていかないとパーティー自体を続けることができなくなる。最近やついさんと一緒にお仕事させてもらうなかで、僕をいろんなところにプッシュしてくれたのもあって、結果も出したかったんです」

――Sundayさん個人としては天才バンド、ライトガールズに続いて3度目のメジャー・デビューとなりますが、そのときと比べて気持ちはいかがでしょうか?

「ワンダフルボーイズの場合は自分よりもだいぶ若いメンバーが3人いて、彼らから20代のいちばんいい時期をもらっていることに対する責任感があるんです。メンバーが親に胸を張って〈ミュージシャンをやっている〉と言えるようにしたいというのが、これまでの2回とは明らかに違う部分ですね。天才バンドをやっていた奇妙くんとか、ライトガールズのやついさんはすごく大活躍されている方なので、逆に、2人は僕を世に出さなければという責任を感じながらやってくれていたと思うので」

――じゃあ今度は自分がメンバーを世に出す番だという気持ちでしょうか。

「それでいうと去年〈ベストヒット歌謡祭(日本テレビ)〉にあいみょんが出たとき、彼女のバックバンドにワンダフルボーイズのメンバー――番長(ドラムス)、クスノ(is世界平和/ギター)、ニーハオ(ベース)と自分の4人で参加させてもらったんですけど、やっぱり効果ありましたね。若いメンバーも〈TVに出るよ〉と親に言って安心してもらえたみたいだから、こうやっていま続いているのも、あいみょんのおかげです(笑)」

Sundayカミデは“ふたりの世界”(2017年)などあいみょんのいくつかの楽曲をサウンド・プロデュースしている

 

抽象的でなく、ダイレクトに〈We are all〉と言い切るとき

――本作『We are all』は、まずどこから制作に着手されましたか?

「〈平和〉っていうのが僕の作る曲すべてに通じるテーマなんですけど、今回はまず“We are all”という曲でアグレッシヴに〈僕たちは一つだ〉と表現しようという発想から始めました。いろんなライヴとかパーティーでもその空間が一つになれる瞬間ってあるじゃないですか? それをもっと規模を大きくして言ってしまおうと。戦争、差別、国境。人間同士が罵り合ったり、殺し合ったりしているこの状況は、いつどうにかなるのだろうかと日々考えているんです。そのなかで、抽象的に〈平和〉を歌うのではなく、表現の仕方を工夫する……。まず〈We are all〉と言い切ってしまおうと思った」

――これまでも〈平和〉についてずっと歌ってきたなかで、なぜ今回は直接的に言い切ってしまおうと思ったのでしょうか?

「“Power To The People”にオマージュを捧げた“平和 to the people!!!”(2013年)とか、自分が大事にしているものを〈and〉で繋げていく“And Love”(2017年)のような自分なりの〈平和〉に対する表現を経て、やっと今回直接的に表現できる自信が出てきたというか。世の中にはネットとかで悪口を言わない、人を罵らない、ちゃんと節度を持って暮らしている人たちが大多数じゃないですか。まだ会ったことのないそういう人たちと一緒に〈We are all special life〉と大合唱したくなったんです」

――Sundayさんはワンダフルボーイズの音楽を〈マジであった事POP MUSIC〉と表現されていますが、本作では〈マジであった事〉の範囲が拡張しているなと感じました。自分の身の周りだけでなくって、もっと広い事象のことを自分のこととして捉えているというか。

「確かに。特に最近は〈マジで思っている事POP MUSIC〉になっているかも」

――サウンド面では、“We are all”も含めてシンセ主体でエレクトロニックな要素が強まっている印象です。これまでは、バンドの生演奏でソウルフルなグルーヴやパーティー感を出していましたが、今回は違うところにサウンドの力点を置いたということでしょうか?

「自分たちのなかでアッパーな曲が渋滞しているんです(笑)。だから今回はアッパーなグルーヴ・ミュージックを作るよりも、いま思っていることやメッセージを重視して、歌詞がスッと入ってくるような曲を集めました。昔の曲もそういう視点でチョイスしていて。アッパーじゃないけれどバッチリ踊れるようなサウンドも、バンドとしてしっかりやっていきたいんです」

 

いろいろな人がカヴァーした“君が誰かの彼女になりくさっても”をまた自分の歌にするため

――昔の曲を入れたという点で、なかでも目を引くのはSundayさんの代表曲とも言える“君が誰かの彼女になりくさっても”と“天王寺ガール”が入っているところですよね。意外にもワンダフルボーイズとしてスタジオ録音で収録されるのは初となります。

「そういえば2曲とも初なんだ。“君が誰かの彼女になりくさっても”は、天才バンドでも録音しているんですけど、奇妙くんは〈またいつかSundayさんが自分で歌った作品を出してください〉と言ってくれていたんです。何か大事なタイミングで録音しようと思っていたんで、いまがしっかりやるときだなと」

――あらためて今回レコーディングするにあたって気を付けた点はありますか?

「“君が誰かの彼女になりくさっても”はもう10年以上前に作った曲なんですけど、作ったときは15分くらいで出来たんです。そのときは〈こんなふざけている曲、誰が聴いてくれるんだろう〉と笑ってしまった。いまはその当時より歌が上手くなっていると思うんですけど、上手く歌いたいというよりは、出来た瞬間のイメージを思い出しながら歌いました」

――“天王寺ガール”も同様でしょうか?

「“君が誰かの彼女になりくさっても”は奇妙くんとかいろんな人がカヴァーしてくれていて、すでにいろんな答えが出ている楽曲なので、僕は自分が作ったときの気持ちで歌うのがいちばんいいと思ったんですね。でも“天王寺ガール”はまったく逆。この曲はどう歌い、どう演奏するとベストなのか、正解がわからないまま10年ぐらいやっていたんです。だから今回はいまできる精一杯のスキルも駆使して、本気で正解を導こうとしました。あらためて自分の好きな音楽を聴き直したり、いろいろ影響されたりしながらアレンジを考えて」

――具体的にどのような音楽に影響されましたか?

「いちばん影響を受けたのは10ccですね。“I’m Not In Love”(75年)の透明感、あの少し冷たい感じ。“天王寺ガール”はメロディー自身が盛り上がったり落ち着いたりするのでそのまま歌うと、めちゃめちゃ歌い上げたり静かになったりするんです。そこを少し抑え気味に整えるという意味でモチーフになりましたね」

――この2曲でアプローチの仕方が真逆なのが面白いですね。それ以外にも“エビバリスウィング”は天才バンドでは“BIG JOY”として録音されていた曲です。

「ワンダフルボーイズの前にやっていたバンド、A.S.Pの作品にもこの曲を入れているんです。曲が出来たのはさらに前で、僕が2年間くらいTHEローレルズっていうブラス・ロックのバンドをやっていたとき。僕の歴史が全部詰まっているような曲なので、このタイミングで入れておきたかったんです」

――“サンセット通り”も天才バンドで演奏され、カミデさんのソロ・アルバム『マイ・ネーム・イズ!!!』(2013年)にも収録されている楽曲です。

「これは20歳のときに作った曲ですね。この頃のような曲をもういまは作れないんですよ。歌詞もコード進行もすごくロマンティックで音楽を作ることに対して淀みがない。そういう気持ちを忘れないように入れました」

――Sundayさんは過去に発表した自身の曲を歌い直すことが多いですよね。過去の自分が作った曲を歌うときの、気持ちの置きどころは?

「“サンセット通り”は、まだ自分の経験が少ないなかで、なんとか背伸びして書いた歌詞なんです。〈君の荷物が片付いた後で、2人で表通りを歩こう〉って別れるときのすごく切なかった気持ちを書いた。もうこの年になったら、めちゃめちゃ喧嘩して別れるってそうないじゃないですか。穏やかにお別れができる。だからいまの自分は、よくある話としてスッと客観的に歌えるようになっている気がします」

 

いいところも悪いところも越えて、僕たちはみんな一つ

――いままでの作品ではゲストをフィーチャーすることが多くて、彼らの存在もワンダフルボーイズのパーティー感を体現する要素だったと思うのですが、今回はメンバー6人+鍵盤サポートの岩井ロングセラーさんのみでの演奏です。

「いままでの作品はゲストの参加をアルバムのトピックにしていたんです。でも今回のトピックは、“TOUR”っていうインストの曲をメンバーと岩井さんの演奏だけで作ったことだと思っています。これまで外のゲストに求めていたものを、バンドの内に向けた形ですね」

――なぜこのタイミングで改めてバンドの内側に目を向けようと思ったのでしょうか?

「これまでもメンバーの演奏は上手いなと思っていたんです。でも歌詞や歌のメロディーがある楽曲だと、ある程度アレンジの方向が定まったうえで、僕から〈こうしてほしい〉と指示を出す作り方になるんですね。だから、本当に上手いのかを確かめたいという気持ちもあって(笑)。僕はピアノをこう弾くから、あとは各々が考えてくださいと丸投げするやり方を試してみたかったんです」

――その結果メンバーから出てきたアウトプットを見てどう思いました?

「素晴らしかったですね。想像していた15倍くらいすごかった。自分が歌いながら聴くなかでは見えていなかったメンバーの本当のスキルが、客観的にわかって、〈ホントにいい腕していますね〉と納得できました」

――バンドを見つめ直すことも出来たと。また今回のジャケットはワンダフルボーイズの前身バンド〈しゃかりきコロンブス。〉の『君が誰かの彼女になりくさっても』(2009年)のオマージュですよね。ここにも自分を見つめ直す意図が伺えるのですが。

「そうなんです。阿野義知くんというワンダフルボーイズのすべてのジャケットを描いてくれているイラストレーターの方に今回もお願いしたんですけど、昔から彼に言っていたんですよ。〈少年が動物を抱えているあのジャケットに戻るときがきっと来るから、また描いてくれ〉って。あの作品に入っていた“君が誰かの彼女になりくさっても”と“天王寺ガール”も入っているし、メジャー・デビューですし、いろんなことを踏まえて、〈もう一回あのジャケットに戻るなら、いましかない〉と思ってお願いしたんです。動物の抱き方が大人仕様になっていて、あの頃から成長を感じられるような絵になりました」

――これまでのキャリアや自分たちを見つめ直したり、新たな試みを導入したりといろんな要素が詰まった10曲になりましたね。

「やっぱり今回は骨組みとなった“We are all”が出来たことが大きいですね。これまでアルバム・タイトルは『ビューティビューティビューティフルグッバイ』(2012年)とか『ロックロックロックジェネレーション』(2017年)とか同じ言葉を3つ繋げて1つのワードとしていた。でも今回は“We are all”のメッセージが大きいので、シンプルにそのままタイトルにしたんです。一回やり出したらずっと続けるタイプなので、自分のなかでは珍しいことなんですよ。

いままでライヴに出る前に掛け声なんてやったことなかったんですけど、最近はアツムが〈俺たちは一つだ!〉と言って、みんなで〈We are all!!!〉と叫んでからステージに出ていくんです。そういうのって恥ずかしいんですけど、やる時期があってもいいなと思えた。だからこの曲に引っ張られたアルバムって感じがします」

――“We are all”にはワンダフルボーイズを変えさせるほどのパワーがあったということですよね。なぜそんなに特別に思える曲になったのでしょうか?

「うーん……この曲で伝えているメッセージが、いまの自分にすごくしっくりきているんだと思います。この前イチローさんが引退したじゃないですか。自分のInstagramは、誰かにフォローされたら知らない人でも絶対フォローを返しているんですけど、ある人がイチローさんの最後の試合を映しているTVの画面を載せて、〈こんな引退試合なんか茶番〉って書いているのを見たんですよ。そこで、すごくイヤな気持ちになったんです。誰かを傷つけている、嫌な気持ちにさせているという意識を持たずに、そういうことをやっている人を見るとね……。

たとえば新幹線の席のポケットにお弁当の空箱を突っ込んだまま降りる人とかに対して、次に座る人のこと考えてなくってイヤだなぁと思うじゃないですか? でも自分もそういうところがあるかもしれないし、他人から見られたときに不快だと思われているかもしれませんよね。(そういう大きな視点で見たとき)いいところも悪いところも越えて、私たちはみんな一つ、っていうのがこの曲なんです。好きな人もイヤな人も、同じこの場所で暮らしているわけですからね」


Live Information

〈『We are all』リリースパーティ〉

2019年4月14日(日)東京・下北沢BASEMENTBAR
開場/開演:13:30/14:00(アコースティックver.)
開場/開演:18:00/18:30
前売り:3.300円(ドリンク代別)
※二部構成のワンマンライヴ

2019年4月21日(日)大阪 Live House Pangea
開場/開演:13:30/14:00(アコースティックver.)
開場/開演:18:00/18:30
前売り:3.300円(ドリンク代別)
※二部構成のワンマンライヴ

〈Love Sofa Tokyo〉
2019年5月19日(日)東京・代官山UNIT/UNICE
開場/開演:14:00/14:30
前売り:4.000円
出演:ワンダフルボーイズ/奇妙礼太郎/TENDRE/浜崎貴司/ライトガールズ/DENIMS/空きっ腹に酒/PARIS on the City!
DJ : アチャコプリーズ/Kouhei"king"Nozaki

★各公演の詳細やその他のライヴ情報はこちら

 

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