Mikiki編集部のスタッフ4名が〈トキめいた邦楽ソング〉をレコメンドする週刊連載、〈Mikikiの歌謡日!〉。更新は毎週火曜(歌謡)日、数無制限でNEWな楽曲を軸に、たまに私的マイブームも紹介していくので、毎週チェックしてもらえると思いがけない出会いがあるかもしれません。 *Mikiki編集部

 


【酒井優考】

原田珠々華 “プレイリスト”

つい先ほど南波一海さんによる原田さんへのインタヴューがあり、そこで原田さんが言ってた〈アイドルネッサンスの解散によって、私の青春が終わってしまったような感じがした〉という発言にズシンと響くものがありました。詳しくは来週公開予定のインタヴューを読んでいただくとして、彼女の次の青春への再出発を応援したいと思います。

 

霧島夜空 “行列#3”

いま話題の君島大空に名前が似てなくもない謎の新人シンガーが発表した楽曲。チョップド&スクリュードでもないしスクラップ&ビルドとも違うか、ノイジーでインダストリアルでバッキバキな狂ったトラックに、気怠く、やけに色気のある男ヴォーカル。かっけえ! 誰だコイツは!

 

Teenager Kick Ass “world end super nova(qururi cover)”

誰もが知る曲のカヴァーって奇を衒いすぎても寒いしそのままやっても寒いしハードルが高いと思うんです。正式音源化、待ってます。

 

【天野龍太郎】

butaji “抱きしめて”

2018年の私的ベスト・ソングでもトップに選んだbutajiの“抱きしめて”が、stillichimiya/スタジオ石のMr.麿によって映像化。アルバム『告白』のなかでも特に素晴らしい、珠玉の一曲だと思っていたので、ミュージック・ビデオが制作されたことがシンプルにうれしい。“抱きしめて”で胸を打つのは、切々と、優しく歌われる〈世界の隅っこ たった一人で肩を震わせて〉という詞。このラインこそbutajiというシンガーの本質、そして『告白』というレコードのテーマを象徴しているのではないかと僕は思う。また、彼が深い共感を寄せる七尾旅人の表現とも共振する部分は、こういった〈個〉であること、あるいは〈弧〉であることを歌っているという点に尽きるだろう。

 

佐藤千亜妃 “Lovin' You”

確か『フェイクワールドワンダーランド』(2014年)の頃まではただの〈佐藤〉だったきのこ帝国のヴォーカリスト/ギタリストが、ソロ・アーティスト〈佐藤千亜妃〉に華麗な転身を遂げた2018年のEP『SickSickSickSick』。鮮烈なソロ・デビューだと思った。そんな彼女の新曲は、EP同様にエレクトロニックなR&B/フューチャー・ソウル志向。アコースティック・ギターや歪んだギター、トラップ風のハイハット、スラップ・ベース、マリンバなどなど、さまざまな音の素材が巧みに配され、デザインされているプロダクションに耳を奪われる。プロデュースは踊Foot Worksのギタリスト、Tondenhey。2人の引き出しの多さに圧倒される。

 

コントラリーパレード “ユートピア”

昨年のミニ・アルバム『PARADE』、そして同作と対になった新作『CONTRARY』をレヴューで紹介したところで、タイムリーにも“ユートピア”のMVが公開に。作品を聴いていて〈これは!〉と思った曲であり、レヴューでも特にフォーカスしたのがこの“ユートピア”。というのも、佐藤望(カメラ=万年筆、Orangeade)が編曲を手掛けていて、独特のニューウェイヴ・ポップ・サウンドが作品のなかでもいい意味で異彩を放っているからだ。軽快なエレクトリック・ギターを弾いているのは、EP『午後の反射光』で注目を集めている君島大空。影絵とサンド・アートによるビデオも幻想的で、絵本のような世界観がたなかまゆの歌に合っている。

 

Kaede(Negicco)“クラウドナイン”

NegiccoのかえぽことKaedeがソロ・シングル『クラウドナイン』を4月23日(火)にCD-Rでリリースする。これはその表題曲で、作詞・作曲・編曲は先日〈歌謡日〉でもご紹介した佐藤優介(カメラ=万年筆)。〈こんなにさわやかな曲も書けるんだ……〉とちょっと驚かされる、優しく、軽やかで、グッド・ヴァイブレーションなポップ・ロック。ビデオも含め、Kaedeさんのイメージに寄り添っているのがすごくいい。

 

NNMIE “すべての街”

んミィさんの曲には彼にしか書けないメロディーや詞というものが確かにあって、それらはすべてがどこかで呼応し合い、連関しているように思う(例えば、“知らないパレード”や“氷が溶ける音”の詞にも〈氷〉が登場する、とか)。ひとつの街や都市、世界を形成しているような箱庭的な感覚。でもそれは、息が詰まるような閉塞感があるということではなく、かといって〈窓はあけておくんだ〉というような傲慢さがあるわけでもない。んミィさんの音楽には、どこからでも入れて、どこからでも出られるような軽さがある。ドライでセンチメンタル。きわめてパーソナルだけれど、ユーモアとフックがあって親しみやすい。DIYなムードと、んミィバンドでのえもいわれぬ身体性。誘蛾灯のようにちらちらとあやしく光り、聴き手を強く誘引するポップ・ミュージックは常に両義的であって、2つの極の間をゆらゆらと揺れる表現こそが魅力的なんだと僕は思う。

 

【田中亮太】

Johnnivan “Nobody's Awake in This House”

東京を拠点に活動している多国籍バンドで昨年は〈りんご音楽祭〉にも出演、らしいですが完全にノーマークでした。このMVを観てビビビ。めちゃくちゃカッコいいじゃないですか! 国産ダンス・パンク・バンドが陥りがちな過剰にエキセントリックという野暮ったさは皆無で、プロダクションもソングライティングもきわめてスマート。〈こうきたか〉と唸らざるをえない優美な鍵盤のフレーズもセンス抜群で、日本にいそうでいなかったアート・ロックの超新星。エヴリシング・エヴリシングの“Photoshop Handsome”(2009年)を初めて聴いたときのような興奮を感じました。〈Mkiki Pit〉に呼びたい。

 

ind_fris “Guitar Under Water”

大阪を拠点に注目を集めるアンビエント~ハウスのトラックメイカー、らしいですが不勉強にも先月リリースされた初LP『Sink In』で知りました。この曲は同LPに収録。まるで心臓の音みたいな打ち込みのビート、甘やかなギターの音色、柔らかなシンセ・サウンドスケープ。心身の不純物をとことん浄化してくれるような清らかさを醸しつつ、それとなく人肌の温もりを持った手作り感も気持ち良いのです。

 

ANARCHY “Where We From feat. T-Pablow”

さすがにANARCHYは知っていますよ。この曲を選んだのは、MVに出てくる向島の団地を京都に住んでいたとき、たびたび通っていたから……ではなく、客演で参加したT-Pablowのホームである川崎・池上町の風景と、ANARCHYの地元・向島の風景がクロスしていく映像にむちゃくちゃ上がったから。

 

【高見香那】

田我流 “Changes”

『B級映画のように2』から、7年だそうです。その間も数々の客演にカイザーソゼ、stillichimiya、はたまた「バンコクナイツ」、釣り、食レポ(の才能おありだと思います)などとさまざまに活動していた田我流氏、満を持してのソロ・アルバムが4月24日(水)にリリース。〈RIDE ON TIME=時代の波に乗る〉ことをテーマに〈自身の心の声にフォーカス〉し作られたということで、公的とも私的とも言えそうな今作、その全貌が気になってしょうがないです。先行で公開された“Changes”は“ゆれる”を思い起こさせるリリカルな一曲。こちらを聴いて次週のリリースを待ちます。

 

髭 "EXTRA STRAWBERRY ANNIVERSARY"

15周年を経て今年は〈SWEET SIXTEEN〉をテーマに掲げている髭。この曲"EXTRA STRAWBERRY ANNIVERSARY"は、最新アルバム『STRAWBERRY ANNIVERSARY』のタイトル・トラックになんと同アルバムの全曲をマッシュアップしたというもので、ライヴで観て〈うわーまた聴きたい!〉と思ってたのでうれしい。生演奏でやっていて、ちょっとスゴイので観てほしいです。ビデオはクラウドファンディングでファンと一緒に制作した、周年企画のラストを飾る一作。