INTERVIEW

ELEKIBASSが渚十吾と語った、レコードだからできる音楽の愛し方

ELEKIBASS『SEASON OF MINE』

(左から)渚十吾、Sakamoto Youichi、Kameda Jumpei “JP”
撮影協力:茄子おやじ

 

今年も4月13日(土)に開催される、全世界規模のアナログ盤イヴェント〈RECORD STORE DAY〉。日本でも独自のリリースが行われ、当日の販売店舗は大盛況になることだろう。そんな狂騒のなか、USインディー・シーンとも交流の深いポップ・バンド、ELEKIBASSがキャリア史上初となる12インチのアナログ盤『SEASON OF MINE』をリリースする。CDに先駆けてのアナログ盤リリースというだけでなく、レコードならではの特性を活かしていることにも注目したい。渡辺シュンスケをサポート・キーボードに迎え、ハイ・クォリティーなシティー・ポップ/パワー・ポップを志向したA面。初期のスタジオライヴ・テイクや秘蔵デモなどを収録し、直感的な遊び心を重視して活動してきた彼らの本質が伝わるB面。裏表面で性格が異なっており、しかも、そのB面の曲はのちにリリースされるCDとは違うらしい。

今回はメンバーの2人と、彼らとアナログ・レコード愛を語り合う仲間であり、シンガー・ソングライターとしてもレコード・コレクターとしても大先輩にあたる渚十吾氏を迎えて、下北沢の〈茄子おやじ〉にて鼎談。彼らがこのリリースに込めた特別な想いを訊き出した。

ELEKIBASS SEASON OF MINE WaikikiRecord(2019)

時代の流れも関係なく、ただレコードを作ってる

――ELEKIBASSとしては初のアナログ盤LP『SEASON OF MINE』が今年の〈RECORD STORE DAY〉にリリースされます。今回は、同作に合わせた座談会です。

Sakamoto Youichi(ヴォーカル)「そこになぜ渚十吾さんがいるかといいますと。渚さんはシンガー・ソングライターで、僕らのやっているWaikiki Recordからも作品をリリースしていらっしゃるんですが、そもそも僕のなかでは近所のレコード好きの大先輩なんです。よく一緒にお酒を飲みながらレコードを聴いていて、仲間だと勝手に思ってるんです」

渚十吾「僕はもう半世紀以上レコードを聴き続けているし、〈いまなんでレコードなのか?〉っていうより、ずっと〈なんでレコードじゃないの?〉って思ってた」

Sakamoto「僕らは逆で、最初は完全にCDで音楽を聴く世代だったんですよ。そういう立場の違いも含めて、渚さんには僕らとは違った先輩の視点で〈レコードならではのおもしろさ〉について僕らと語ってもらえたらと思いまして」

――ちなみに、ELEKIBASSとしてはこれが初めてのLPということですけど、それ以前にもレコード自体は作っていますよね?

Sakamoto「そもそも僕ら、ファーストのCDより前に最初のシングルを7インチで出してますからね。バンドとしては7インチ・シングルを2枚出しています。僕のソロのOkaneMonster名義でもスプリットを1枚作っていて」

――デビューが2000年前後ですから、世の中的にはレコードがもっとも売れなくなっていた時期でしたよね。

Kameda Jumpei “JP”(ギター)「でも、僕らが上京した90年代後半も新譜のレコードを売ってるお店はあったんですよ。新宿のラフ・トレードとか、吉祥寺のワルシャワとか。僕にとって当時はUSインディー系が最先端だったので、そういう作品をレコードで買っていたかもしれない」

「その頃のレコードもおもしろかったよ。ELEKIBASSとは仲のいいミュージック・テープスの『First Imaginary Symphony For Nomad』(99年)のレコードも今日持ってきたんだけど、ジャケットを開くと飛び出す絵本みたいな仕掛けになってて」

※ELEKIBASSと親交の深いUSのインディー・レーベル、エレファント6界隈のキーパーソンであったジュリアン・コスター率いるバンド
 

――こういうリリースって、いちばん売れなくなった時期だから逆に反骨心で大胆に遊んでいたんだと思うんですよ。採算度外視で当たり前という。

Sakamoto「僕らが2001年に初めてアメリカにツアーに行ったとき(オブ・モントリオールとの東海岸ツアー)の体験はデカいかもしれないですね。向こうはみんな、特別なことじゃなく普通にレコードを作ってたんで」

「時代の流れも関係なく、ただレコードを作ってるんだよね」

Sakamoto「僕らの場合、入口としてレコードは〈カッコいいもの〉だっていう気持ちが若干あるんだけど、渚さんはそういう感覚もなく、ただずっとレコードなんですよね。そこが新鮮です(笑)」

 

レコードならではの粋な遊び

――『SEASON OF MINE』に話を戻すと、レコードのB面にはムーンドッグのカヴァー“Paris”や初期のスタジオ・ライヴ録音3曲(NABE PARTY LIVE VERSION)、さらにJPさんの歌うレアなデモ“LOOKUP WESTERN”が収められています。

Sakamoto「僕の大好きなマインダーズ(The Minders)のファースト・アルバム『Hooray For Tuesday』(98年)の20周年エディションが去年レコードで出たんですけど、そのB面の最後に、タイトル曲の新録ヴァージョンと96年に録ったデモが入ってたんです。それが結構、今回の僕らのアナログのA面とB面の色合いの分け方にも影響を与えてます。A面はハイファイでポップな5曲、B面はローファイというか、ユルいというか」

※エレファント6からのリリースで人気を博したポップ・バンド
 

――2001年に出たジョナサン・リッチマンのレコード(『Her Mystery Not Of High Heels And Eye Shadow』)が、英語とスペイン語の曲が前後半で入ってる内容なんですけど、英語曲のA面は20分ちょい。スペイン語曲のB面は10分足らずなんですよ。アンバランスなんだけどレコードってそういう遊びもできるメディアなんですよね。

Sakamoto「わかります。ちなみに、このB面は1曲目の“Paris”を除いて、CDにするときは入れないんですよ。CDでは通して聴いたときにはライヴやレア曲が邪魔になる気がして」

――そうなんですね。確かにCDのボーナス・トラックっていうのが僕も苦手なんです。珍しい曲なのはありがたいけど、アルバムがこの曲までで完結しているのに、おまけの曲が入ってくるのは蛇足としか思えないときがあります。

「私もありますね。CDって収録時間が長いからいっぱい入れられるし、そういうことをしたがる。逆にね、レコードにもおもしろいおまけはありますよ。キング・クリムゾンの『Islands』(71年)の輸入盤にも、いったん演奏が終わって針が進んだところでもう一回演奏が入っていて、レコードの最初に戻るみたいな遊びがあったりする」

――それこそビートルズの〈サージェント・ペパーズ〉のアナログにも最後にそういう仕掛けがありましたね。レコードならではの粋な感覚ですよね。

Sakamoto「まあ、僕はどれが〈いい/わるい〉ではなく、CDでもスマホでも状況に応じた聴き方を使い分ければいいだけだと思うんですけど、レコードではこの大きさに準じてそういう粋があるっていうのはわかります。それがもうちょっと一般的に広まるとおもしろいなと思いますね」

――ちなみに、今回あえてレコードだけにライヴ録音を収録したことの元ネタみたいな作品はあるんですか?

Sakamoto「ええと、ベタですけど一枚は、ビーチ・ボーイズの『Beach Boys Party』(65年)です」

JP「『Beach Boys Party』の後ろで鳴っているガヤガヤは後から足したフェイクなんですよね」

Sakamoto「僕らは昔、あれに憧れて、リハスタでやったライヴを5曲くらいMDに録ったんですよ。それは当時ライヴの来場者特典CD-Rにして配って、特に出すつもりなどはなかった。でも、〈あれおもしろかったよ〉みたいな声も結構あったし、あらためて聴き直したら、いまこういう音源は作れないし、いいなと思ったんです。それで、そういう音源がアナログで聴けるのはいいと思ったので今回入れました」

JP「ELEKIBASSっぽさがわかりやすい音源ですよね。それがレコードのB面にあるっていうのは気に入ってます」

Sakamoto「最後に時間的にもう一曲入れられそうだったんで、たまたま出てきたデモでKamedaくん(JP)が歌ってるのがあって。それがすごく良かったんですよ。あと、このB面の雰囲気は、NRBQの『Christmas Wish』(86年)の影響もありますね。NRBQのアルバムのなかでも、これはかなり遊んでるなと思ってます。“Paris”もムーンドッグのカヴァーですけど、僕らはNRBQのライヴ盤に収録されたカヴァーとして知った。そのカヴァーをさらにカヴァーしているんです」

――逆にA面は極上のシティー・ポップやパワー・ポップが並んでます。

Sakamoto「これをちゃんとやってるからB面もおもしろくなると思ってます。しかし、つくづくNRBQってその両方を持ってるバンドですよね」

――ELEKIBASSもそういうところありますよ。上質な曲とサウンドに2人が乗っかると、なんだか完璧じゃなくなる。でも、そこがELEKIBASSのいちばん大事なところじゃないですか?

Sakamoto「そうなんです。話が早いですね(笑)! こないだライヴを観にきてくれた知り合いのミュージシャンも〈SakamotoくんとKamedaくん以外は完璧! でも、そこがいいんだよな~〉って言って帰っていきました(笑)」

『SEASON OF MINE』収録曲“SEASONS IN THE SUN”

 

レコードを何枚か買ったなかの1枚になれればいい

――せっかくの初LPで、こういう遊びをしてしまえるのは最高ですよ。いまはみんなリスクをおそれて、あんまりやらないことかもしれない。

「本当にね。驚きましたよ。なんでわざわざアナログで出すのか、いま話を聞いててやっとわかったよ」

JP「好き者しか買わないですよね(笑)。でも、好き者の人たちはB面を好むと思います」

Sakamoto「少し乱暴に言うとCDを買う人って〈このアーティストが好きだから、これを買う〉みたいな目的がはっきりしてる気がするんですよ。でも、レコードを買う人はいろいろ探して一度に何枚か買ったりするじゃないですか」

JP「確かにレコードって〈レコードを買いに〉いきますよね」

Sakamoto「目的じゃなかった出会いがあるよね。それに、CDとレコードでは〈好き〉の種類が違うというか、レコードを好きな人はそういう楽しみ方をわりとしてるんじゃないかと思ってて。僕は自分がファンだとしたら〈ELEKIBASSのことだけが好き〉じゃなくて、〈じゃあELEKIBASSも買ってみようか〉のほうの〈好き〉でいたい」

――レコードは〈B面の2曲目だけが好き〉という愛し方もできますしね。CDでも〈7曲目だけが好き〉とか言うだろうけど、レコードだと溝があって目に見えるぶん愛着が湧く気がする。

Sakamoto「そうですよね。僕はそういうふうになりたいんです」

――つまり、今回のリリースはそのラインを狙っている?

Sakamoto「狙ってるというか、そこが僕らの原点なんですよ。自分の憧れていたものを作りたいというのがこの形なので。別にいちばんにならなくていいんですよ。アルバム全体が〈最高に良い!〉じゃなくても、〈B面の1曲目が好きだ〉っていう理由だけでもいいし、何枚か買ったなかの1枚でいい。このアルバムの意味を問うとかよりは〈あそこおもしろかった〉とか〈あのメロディーが好きだった〉とかでいいんです。今回、RECORD STORE DAYで出ますけど、みんなが一直線にこれを買いに行くというより、この情報量の少ないジャケを軽い感じで手にとって〈ちょっといいかも〉って思ってくれたら嬉しいです」

――Kとかエレファント6とか90年代から2000年代にかけてレコードが低迷していた時期にもユニークな形でアナログ盤のリリースを続けたレーベルの影響力というのが、意外にあるんだなというのも今回のリリースで感じました。

Sakamoto「お客さんにももう一歩奥に踏み込んでもらえないのかなとは思っています。今度4月17日(水)、ここ(茄子おやじ)で、僕らと渚さんのライヴ・イヴェント〈ニッチ・ポップ ウェンズデー〉の2回目をやるんです。僕らが歌って、渚さんがレコードを紹介して。渚さんにも歌っていただきます。ちょっとでもレコードのおもしろさが伝わったらなというイヴェントなんです」

――今回のレコードは、ある意味〈レコードの出し方〉の提言でもあるわけですしね。

Sakamoto「そうですね。レコードでしかできないことをやるし、〈せっかくレコードにするんならこういうことしたい〉って気持ちがあると人生も楽しくなると思うんです」

 

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