私が入らないほうが3人でうまくやってたのかなって
――〈私にあまり力を入れてないんじゃないか?〉みたいな不安は?
「1回だけちょっと疑問に思いました。この衣装をこのまま着続けるのかなって。でも、ソロをずっと続けていくと思ってたので。まさかRYUTistに入るとは思いもよらないじゃないですか。しかも、〈RYUTistに入れたいと思うんだけど実郁はどうしたい?〉〈実郁がソロを続けたいんだったらぜんぜんいいよ〉って感じの聞かれ方だったんですよ。私の意思で今後の道が決まるなと思ってすごい悩みました。
完成されてるところに入るから、私自身が覚えなきゃいけない負担もあるけど、3人はそこにいきなり違うものが入ってきたら、流れが乱れるじゃないですか。それでバランスを崩してしまうのもなーとかいろいろ考えて。考えに考えた結果、入ることに決めたんですけど、入った当初は〈私の選択は間違ってなかったのかな?〉って、そういうことを考えるときもありました。曲数もすごく多くて」
――持ち曲のレベルが違いますからね。
「150曲とかあって。それを覚えるのもたいへんだったし、若奈さんが卒業される前に、〈実郁ちゃんが加入するから〉って振りの動画を全曲撮って残してくれてて。しかも若奈さんひとりヴァージョンと、全員のフォーメーションがわかるように全員ヴァージョンを撮ってくれて、その労力もすごいたいへんじゃないですか」
――引き継ぎがそんなにちゃんとしてたんですね。
「100%そのおかげでいま曲を引き継いで踊れてるんですけど、やっぱり私の力不足でライヴ中に大きいミスをしちゃったりしてて。そういうのがあったときに〈ごめんなさい!〉って気持ちになるのもそうなんですけど、これは私が入らないほうが3人でうまくやってたのかなと思っちゃってたときはありました」
――らしくないネガティヴな思いが一時は……。
「ありましたね。ファンの方も戸惑うじゃないですか? 卒業と思ったら次の週には加入ライヴがあって、きっと気持ちがグチャグチャになってた時期だと思うんですけど。やっぱりそのなかで、いままで若奈さんが積み上げてきたものがすごく高いから、最初は比べられちゃうだろうなと思ったんですよ。若奈さんはダンスもキレキレだし。比べられるのがちょっと怖いなって。1回そういうことを考えはじめると止まらなくなっちゃうんですよ。普段考えないぶん一気に落ち込んじゃって、一時期はズーンとお家でひとりで考えてたことはありました」
――どうやってそこから突破できたんですか?
「わからないんですよね。でも、メンバーといると楽しいし、ライヴしててもファンの人とお話してても楽しくて。〈ここにいていいんだよ〉ってみなさんが特典会とかで言ってくださるんですよ。〈実郁ちゃんが入ってくれてよかった〉とか、そういうちっちゃい言葉ひとつひとつが、ちょっとずつ私の心を埋めていってくれたんじゃないかなと思います」
――特典会であからさまに不安そうな顔してたんですかね?
「そうかもしれない(笑)。それだったらみなさんに申し訳ないなあ。1周年でお花を用意してくださったり、幸せ者だなと思うと同時に、そこであきらめないでちゃんと感謝の気持ちでみなさんに返していかなきゃいけないなと思って。それをやるために活動してるって感じですかね」
――当時、ネットで〈ソロをもっと観たかったのに〉みたいな意見は目にしましたね。
「そう言ってくださる方もいらっしゃいましたね。それはすごくうれしかったです。私、卒業ライヴってやってないんですよ。何も言わずにいきなりRYUTistに入ったので、〈これが最後のステージです〉とか何も言わない状態でみなさんに嘘をついてしまってる期間があって。もうRYUTistに入ることは決まってたけど、ある日から私のライヴ情報が途絶えていて、〈その後はどうなるの?〉ってみなさん訊いてくださるんですよ。(2016年の)4月23日にRYUTistに加入するって決まってるんだけど、言えないから、〈いや、どうなんですかね?〉って。それは心苦しかったし、みなさんもみなさんで、これが最後だって思ってなかったライヴがまさかの最後のライヴだったから、まだソロを観たかったって言ってくださってるんだとは思うんですけど」
――そういうことだったんですね。
「だから、ちゃんと卒業ライヴをやったほうがよかったのかなっていう思いもあります。そしたらもうちょっとみなさんに優しかったのかなって。みなさんのことを考えたら、やっぱり卒業だと思って観るライヴって特別だから」
――加入した後でもいいから、1回だけラスト・ソロみたいなライヴを。
「そうですね、やってもよかったのかなって。たまに誕生日ライヴとかでソロ復活させちゃってる自分もいて(笑)。バースデー・ライヴのひとつの楽しみとして実郁のソロっていう企画があるんだったら、卒業しなくてもいいのかなと思います」
――ホントにRYUTistがすごいと思ったのが、卒業や加入のお知らせをかなり早い段階で関係者に送ってきて、それが一切漏れないことで。
「一切漏れなかったですよね」
――メンバーも関係者も口が堅かったという(笑)。
「4人でそういう話になったときに、メンバーも心苦しかったって言ってて。若奈さんの卒業ライヴで〈この後3人でがんばってねってみんなに言われるけど、じつは実郁ちゃんが入るんだよなって思いながら、がんばりますって言うのがつらかったし、実郁ちゃんこのあと入りにくいだろうなと思ってた〉ってみんなが言ってくれて、考えてくれてるんだなって思いました」
メンバー全員、キャピキャピした感じに変わってきた
――RYUTistに入ってみてどうでした? それまでにメンバーのみなさんとは一緒に練習もしてたし、比較的馴染みやすかったのかもしれないですけど。
「最初はめちゃめちゃガチガチでした……。いまは〈ウェーイ!〉みたいな感じでやってますけど、最初はソロのときの先輩後輩の関係が変わらず敬語でやってたんですよ。で、入ってすぐ(宇野)友恵さんから〈私のこと、ともちぃって呼んでいいよ〉ってLINEが来てうれしくて、〈ともちぃさん〉って呼んだんですよ。そしたらダンスの先生に〈慣れるの早いから〉って怒られて」
――言われたとおり呼んだだけなのに!
「〈まだ加入したばっかりだし先輩後輩(の関係性)もちゃんとしなきゃいけないから、そうやって慣れるのはまだ早いよ〉ってご指摘をいただきまして。それで〈友恵さん、(佐藤)乃々子さん、(五十嵐)夢羽さん〉って呼んでるんですけど、それはいまも継続中ですね。いま呼ぼうと思えば呼べるんですけど、〈むぅたん(夢羽)〉とか言うの恥ずかしくなっちゃうんですよね」
――1回定着した呼び方を変えるのは相当勇気いりますよね。
「はい、ちょっと恥ずかしくて。さんづけは継続ですけど口調はタメ口で、同い年なんじゃないかぐらいなれなれしく話してますね」
――最年少の後輩が。
「ホントにそうなんですよ。〈前からいた感じする〉ってメンバーにすごい言われてて。たしかに自分でもビックリするぐらい溶け込めたなと思ってます。私けっこう人見知りなんですよ」
――え?
「〈え?〉じゃなくて(笑)。初めての人に話しかけるの苦手だから、学校でも最初は友達いないんですよ。自分からは声をかけられなくて、8月くらいまでずっとひとりで昼休みとか過ごしてて。その私がよくここまですんなり溶け込めたなと思うので、それはメンバーとスタッフさんのおかげでしかないなと思います。慣れるまで自分からガンガン行けないので、メンバーが〈実郁ちゃん実郁ちゃん〉って言ってくれたおかげだなって。ビックリするぐらい自分でも変わったなって思います」
――基本みなさんおとなしい人っていうイメージですけど、入ってみての感想は?
「最初はもうそのままでした。おとなしいお姉さん。乃々子さんとか美人のお姉さんだなと思ったし、友恵さんも大人だなって思って。夢羽さんのキャピキャピしたイメージは変わらなかったですけど、みんな〈ワーイ!〉みたいな感じはなくて。ホントに最近みんなが変わりはじめた」
――ちょっとはしゃげるようになってきて。
「そう、はしゃげるようになって。乃々子さんも前は〈スッ〉て感じでむぅ&みくがワチャワチャしてるのを見守るみたいな感じだったんですけど、いまでは一緒に遊んだりして。昨日、自主練してたんですけど、けっこう元気な曲を歌ってて、なぜかわからないけどみんなでグルグル走り回りながら歌うみたいなことを、ひとりが始めたらみんなはしゃいでやりはじめて。キャピキャピした感じに変わってきたなって思います」
――横山さん効果があると思いますよ。
「ホントですか?」
――入った意味があったっていう。
「よかった。そう言ってもらえるのはうれしいです。ライヴのMCも、最近フリーでしゃべれるようになってきて。前はガッチリ台本を決めて、ここは誰が言う、ここは誰ってライヴ前に練習を2回ぐらいやって、考えた台本を一語一句間違えないようにやってたんですけど、最近は自然にいつもどおりのトーンでみんな話せるようになって。私も変わったなと思うし、メンバーもみんなそれぞれ変わったなって思います。いい効果ですかね?」
――確実にいい効果です。絶対、自由に話したほうがいいですよ。
「よかったです」
――もう〈私、入らないほうがよかったんじゃないか〉って思うことはなくなりましたか?
「なくなりました。まだまだだなって思うことはあるんですけど、それで入らないほうがよかったなって思うよりも、もっとがんばって早くみんなと同じレベルになって、もっとRYUTistがいい方向になるようにがんばろうってプラスの方向に考えられるようになりましたね」
――プラスに考えれば全部いいことだと思うんですよ。世間で評価されているグループに、いいタイミングで加入したっていうのは。
「ホント、いいところに乗っかってきた人ですよね。ファンの方が温かく迎えてくださったっていうのもあるんですけど、変わり目のときにスッと入って、ここまでスムーズにこれたのはよかったなって思います」
RYUTistがプライベートみたいな感じ
――ボクのイメージだと、RYUTistは人間関係がギクシャクすることはないだろうなと思ってて。距離感として、よそよそしくはあっても。
「私はけっこう深く関わってると思いますね。メンバーそれぞれ考えることが違って、グループってそれをうまくまとめるのが難しいじゃないですか。(RYUTistは)いいバランスでちゃんと意見を言う人と、それをうまくまとめる人とっていうバランスがすごいよくて、それをみんなあえてやってるわけじゃなくて、そのままの状態で意見がぶつかってもお互いの妥協点をうまい感じに見つけられて。だからギクシャクしないんだと思います。
メンバーでもけっこう話し合うんですよ。今回の新潟LOTSさんや新宿ReNYさんもそうなんですけど、ライヴの前に自分たちは何をしなきゃいけないのか4人で話し合う時間を作ってるので。だからひとりで突っ走って何かやって、〈ちょっとちょっと!〉ってなることがあんまりないし、そういうところはリーダーが時間を作ろうって言ってくれるので、乃々子さんがリーダーでうまくまとまってるのかなって思いますね」
――練習の時間も相当取ってるグループなのに、話し合いの時間もちゃんとあって。当然、プライベートがなくなっていくわけですよね。
「そうですね。RYUTistがプライベートみたいな感じです。ひとりで遊びにとか友達と遊びにとかはあんまりなくて、メンバーと一緒にいることが多くて。RYUTistが日常のすべてだから、スタッフさんがいるかいないかで仕事かプライベートかが変わってくる、みたいな。遠征とか行くとスタッフさんももちろんいらっしゃって、お仕事しに来てるんですけど楽しいし、こないだ乃々子さんのお家に遊びに行ったんですよ、猫を見に。3人だけで電車を乗り継いでいって、乃々子さんが駅まで迎えに来てくれて。RYUTist4人で集まってるけどプライベートで楽しかったです」
――オフにメンバーだけで遊ぶってアイドル・グループ、あんまり聞いたことないですよ。
「初めてだったんですよ、メンバーで遊ぶのが。友恵さんも〈8年間活動してきてメンバーのお家に遊びにいったの初めて〉って言ってて」
――それも横山さん効果だったりするんでしょうね。
「どうなんですかね、猫ちゃん効果もあると思います。猫ちゃんがかわいすぎるのでみんなで見にいこうってなって。楽しかったです」
――それぐらいプライベートがないと寂しくはないですか? ほかの人たちが学生生活を楽しんでるときに。
「寂しくないですね。なぜかわからないんですけど、実郁もみんなと同じくらい充実してるもんっていう自信があって。みんなが部活動とかがんばってるぶん、私はRYUTistをがんばってるし、みんなが友達同士で旅行してても、私もRYUTistとしてメンバーと東京さんに来たり北海道さんに行ったりして、たとえお仕事であってもメンバーといるのは楽しいし。すごく素敵な経験をRYUTistでさせてもらってるので、同じくらいっていうかそれ以上に充実してるなと思ってるので、寂しいとは思わないですね。ちょっと自慢に思うくらい。いいでしょって」
――アイドルを辞めてふつうの人生を送りたいなとか、揺らぐこともない?
「揺らぐことはないですね。この活動をやってなかったら何してるかなって考えることはあるんですけど、ぜんぜん思い浮かばないんですよ。自分が女子高校生としてワイワイキャッキャやってるのが想像できなくて。部活動やってる姿とかもぜんぜん想像できなくて、RYUTistとして衣装を着てステージに立ってるいまの自分がすごいしっくりきてるので、揺らいだりはしないです」
――確実にこっちのほうがおもしろいと思える。
「こっちのほうがおもしろいなって思います」