INTERVIEW

オワリカラが新作『PAVILION』で魅せた構築美の秘密――タカハシヒョウリ × 大槻ケンヂ対談(後編)

オワリカラ『PAVILION』特集

オワリカラが新作『PAVILION』で魅せた構築美の秘密――タカハシヒョウリ × 大槻ケンヂ対談(後編)

結成10周年を機に設立した自主レーベル〈PAVILION〉から、約3年ぶりのオリジナル・アルバム『PAVILION』をリリースしたオワリカラ。本作の発表を記念して、Mikikiでは、フロントマンのタカハシヒョウリ(ヴォーカル/ギター)と、自身のソロ・プロジェクトである大槻ケンヂミステリ文庫(通称・オケミス)にオワリカラをプロデューサーとして招聘するなど近年親交を深める大槻ケンヂとの対談を、前後編で掲載する。

前編は、両者のルーツとなった音楽とカルチャーの話題などから両者の関係性がうかがえる内容となったが、後編では、いよいよ本題であるオワリカラのニュー・アルバム『PAVILION』にフォーカス。同作では、70年代前後のロックやソウル、ファンクからの影響を感じさせるサイケデリックでグルーヴィーなサウンドとタカハシヒョウリの無二の歌世界を、キャッチーに表現。全体としてクールなムードを漂わせながらも、その奥底に煮えたぎるほどに熱いものが渦巻いている『PAVILION』について、タカハシは〈建築物のようなイメージで作り上げた〉と語る。大先輩・大槻の率直な感想を交えながら、『PAVILION』とオワリカラというバンドの魅力に迫る内容となった。

★前編はこちら

オワリカラ PAVILION PAVILION/VIVID SOUND CORPORATION(2019)

『PAVILION』収録曲“fetish!” 

 


YMOの〈下半身モヤモヤ、みぞおちワクワク、頭クラクラ〉が頭にあった(タカハシ)

――ここからはオワリカラのアルバム『PAVILION』についてお訊きしていこうと思います。約3年振りのフル・アルバムになりますが、この間にはそれこそオケミスもあったわけですけども、バンドにとってどんな時間でしたか?

タカハシヒョウリ(オワリカラ)「鍵盤のカメダ(タク、キーボード)もそうなんですけど、オワリカラ以外でミュージシャンとしていろいろ音楽をやる機会が増えましたね。オワリカラとしてアルバムは出していないけど、なんやかんや音楽活動はちゃんとしている感じではありました。

で、そういう外仕事をすることで、オワリカラの立ち位置というか異様性が自分のなかで鮮明になったというか、オワリカラにしかできないことっていうのが結構わかったんですよね。たとえば、他の人とやると普通のファンクになるようなものが、オワリカラでやると、そこにポスト・パンクとかオルタナティヴな要素が入ってきたりして、こいつらってすごい変わってるんだなと実感するところがあった。今回のアルバムは、そのうえでかなり自由にというか。オワリカラらしいものをやろうと思って作りはじめた感じでしたね」

――こういうものにトライしようと考えていた部分はありましたか?

タカハシ「オケミスからの影響もあると思うんですけど、自分らなりのソウル的なものをやってみたいなと思ってたところはありましたね。かつてのハイテンポなものではなく、もっとミッドテンポなダンス・ミュージックをやりたいと」

――グルーヴィーで、自然と体が動くものになってますよね。

タカハシ「そうなっていると嬉しいですね。細野晴臣さんがYMOを組んだときに(スローガンとして)〈下半身モヤモヤ、みぞおちワクワク、頭クラクラ〉って言ってたんですよ。〈下半身モヤモヤ〉はリズムのことで、踊れるもの。〈みぞおちワクワク〉はメロディーとかが気持ちいいもの。で、〈頭クラクラ〉はいいコンセプトが存在することだと。今回はそれに近いものがイメージにありました。リズムとメロディーとコンセプトが、ちゃんと1:1:1になっているものにしたかったし、バンドの生感というよりは、構築美みたいなものがやりたくて。〈PAVILION〉は〈展示場〉という意味ですけど、イメージ的に建築物っぽくやりたかったんですよ。プログレのジャケなんかも建物が多いですよね」

――建築物というところでいうと、“オワリカラの塔”というインスト曲も収録されていますね。かなりプログレッシヴな展開になっていますけども。

タカハシ「あの曲は、僕は曲の構造の設計図だけ作ったんですよ。メロディーの指定もなしで、ここは何拍でこういうふうになって……っていう設計図だけ作って、それをメンバーに渡して。僕はスタジオに行かずに、みんなに作ってもらったんです。要は、建築家の人って設計図は引くけど、現場で作業するわけではないじゃないですか。それをちょっとやってみたいなと思って」

大槻ケンヂ「へえー!」

タカハシ「そしたらそれがすごくおもしろかったんですよ。この曲って、曲の真ん中で演奏が全部反転してるんですけど、それも全部その設計図通りに作ってもらっていて」

――おもしろいですね。

タカハシ「まあ、それを誰が喜ぶのかは俺にはちょっとわからないですけど(笑)。ただ、俺の中ではそういうものがあることで、魂が入るっていう。

あとは、自分も追いきれていないところはあるんですけど、いまの音楽ってリズムが進化していて、もはや4つ打ちや8ビートが誰しもにとっての共通言語じゃないと思うんですよね。たとえば、BTSとかもそうですけど、洋楽のヒットチャートを聴くと、考えられないようなリズムになっているじゃないですか。だけど、それがポップスになっているし、いまはそれが普通になっている。ハイテンポで4つ打ちだからとか、ロックンロールで8ビートだからっていうのじゃないところでリズムって解釈されているんだなって。だから、自分としては……自分ばっかり喋ってすみません」

大槻「全然いいよ(笑)」

タカハシ「いままでは、そういう共通言語のリズムにおさめなきゃいけない、そこにちゃんと落とさなきゃいけないっていう感覚が当然のものとしてどこかにあったんですよ。でも、自分が気持ちいいと思うリズムでやったとしても、これからのリスナーにとっては、別にアヴァンギャルドとはならないと思ったんで、リズムはめちゃくちゃなところはめちゃくちゃにしようかなって思ってましたね」

大槻「音楽って、それをロジックで考えるのか、エモーショナルで考えるのか、いろんな考え方があるじゃない? オワリカラはそのバランスがおもしろいなって思ってたんだよね。歌はわりとエモーショナルなんだけど、カチっとしているというか、パキパキしているというか、ロジカルなところがあって、そのバランスが独特。僕はオワリカラに80年代のニューウェイヴを感じていて。初めて聴いたとき、すごいかっこいいと思ったなあ」

タカハシ「僕の中では、メロディーとリズムって分離してるんですよ。そこが違うほうがおもしろいんですよね。だからリズムはすごくロジカルで、メロディーはすごくエモーショナルで、その配合具合というか」

大槻「ニューウェイヴの時代に、それまでエモーショナルな歌を歌っていた人がバックサウンドだけニューウェイヴになっていったけど、あれ最高なんだよね」

タカハシ「わかります。泉谷しげるとか」

大槻「そうそう(笑)、ニューウェイヴ時代の松田優作とかスゴイよね」

 

オワリカラは〈バンドだなあ〉って思う(大槻)

――ここで、大槻さんはまだオワリカラの新作を聴かれていないということなので、ぜひこの場でお聴きいただこうと思います。

(冒頭曲“I LIKE IT”が流れはじめる)

大槻「ああ、いいね。もうこれだけでいいってわかる。一聴しただけで来るやつ」

タカハシ「ありがとうございます。でも、今回、曲いいなと思ってますよ」

大槻「かっこいいよ。コーラスも相当重ねてるよね」

タカハシ「めちゃめちゃ重ねました。オケミスでもやってますけど、フィリー・ソウルみたいな感じがやりたくて。それを女性コーラス隊の厚みがある感じでやるんじゃなくて、全部自分がファルセットでやるっていう、ちょっと屈折した感じ」

――たしかに今作はコーラスワークが印象的でした。“PAVILION”のサビとか。

タカハシ「“PAVILION”のサビも変わってますね。主旋律がオクターヴの上と下でずっと変わっていって、ひとりの人間じゃ歌えないような感じになっちゃった(笑)。それは、ヴォーカルを楽器として扱うか、主役として扱うのかっていうことを考えてなんですけど、コーラスを重ねすぎるとヴォーカルって角が取れてどんどん無形化していくというか、個がなくなっていくんです。それが俺はすごく好きなんですよ。

けど、やっぱりヴォーカルが主役である音楽が一般的じゃないですか。それは自分たちの持っている固定観念みたいなものでもあるんですけど、それを一回外してみたらすごい気持ちよかったんですよね。オワリカラに関してはこれでいいんじゃないかっていう。それをお客さんがどう捉えるのかは自由なんですけど、自分のなかでは、ベースやドラムとヴォーカルが同列なのが、気持ち良くて」

大槻「なるほど。……でもいいね、ヒョウリくんのオーディオ・コメンタリー付きで聴けるっていうのは(笑)」

タカハシ「ははははは(笑)」

大槻「(“I LIKE IT”を聴きながら)ツダ(フミヒコ、ベース)くん、結構やってるなあ」

――今作は、ベースの音が結構デカいですよね。

タカハシ「デカいですね。今回はミックスも結構変わってるし、最終的なマスタリングはアナログテープでやったんですよ」

大槻「そうなの!? めんどくさかったでしょ?」

タカハシ「はい(笑)。でも、結果的には良かったです」

大槻「筋少はファースト(88年『仏陀L』)だけアナログテープで録ったんだけど、めんどくさかった(笑)。

(2曲目“fetish!”に切り替わる)ギターがまたいい音ですねえ」

タカハシ「この曲はオケミス感がありますね」

大槻「いい曲だね。ものすごく(カワノ)ケンタくんのドラムが浮かび上がってくるよ。コピーする人泣かせの、めんどくさいキメやってるね(笑)」

タカハシ「たしかに、コピーするのは相当難しいと思います、技術的にっていうんじゃなくて、ノリとかね」

大槻「そこはバンド間のもので、理屈じゃないところがあるから。オワリカラのリズム隊は特にそうだよね? オケミスの曲もいろんな手練れの人が演奏するんだけども、(オワリカラが手掛けた曲は)みんな四苦八苦してて(笑)。〈ここどうなってんの!?〉っていう」

タカハシ「譜面にするとものすごく複雑というか、音楽理論的におかしいんですよ(笑)。自分たちは感覚でやってるからわかるけど」

大槻「でも、オワリカラ的にはそこが合ってるんだよね」

タカハシ「そうです、そうです」

大槻「俺ね、オケミスでオワリカラと一緒に音を出したときに何に驚いたかって、特に合図をせずに曲がピタリと終わるんですよ。バンドだなあって思いました。例えば筋肉少女帯はとにかく場を賑やかせるバンドだから、〈かき回し〉をやたらにやるんですよ。〈タカトン、ジャーン!〉みたいな。でも、オワリカラはその対極にいて、一切やらないじゃない?」

筋肉少女帯の2018年作『ザ・シサ』収録曲“オカルト”
 

タカハシ「やらないですね。やっぱりそこはハード・ロックとニューウェイヴの違いですよね(笑)。ニューウェイヴってかき回さないじゃないですか」

大槻「しないよね。(筋少は)もう頭からやるもん。下手すると、曲が終わった後も2分半ぐらいやってるよ」

タカハシ「でも、かき回している中でのオーケンさんがまたいいじゃないですか。そこで出る一言がおもしろいんです。俺、それができないから。それこそ〈アングラの時間だー!〉みたいなことが言えたらかき回しますよ(笑)。バンドを始めたての頃はかき回してましたけど、それが年々減っていって、ついにゼロになりました」

大槻「シンプルになったんだね」

 

ロバート・フリップともやるし、紅白にも出る(タカハシ)

大槻「最近、カメダくんと結構いろんな現場で会うんだよ。大森靖子ちゃんのバンドでもやってるよね?」

タカハシ「はい。結構いろんなところでやってますね。オワリカラはもともと、全員ひとりでやれるメンバーが集まったおもしろいバンドにしたくて。いまはわりとそういう感じにはなってきているし、変な話、俺、オーケンさんともいつか一緒にやると思ってたんです、自分の人生の中で」

大槻「へえー! そうなんだ」

タカハシ「いま、あがた(森魚)さんとも一緒にやらせてもらってるんですけど、それも同じで。だから、そんなに深く考えているわけではないんですけど、こうなるだろうなって思い浮かべていたものにはなってきているんです」

大槻「じゃあもういろいろ言っといたほうがいいんじゃない? (キング・クリムゾンの)ロバート・フリップともやるとかさ」

タカハシ「ロバート・フリップともやるし、紅白にも出ます。ロフトプラスワンから(笑)」

――4月20日(土)には渋谷WWWで『PAVILION』のリリース・パーティーが行われますけども、こちらには大槻さんがゲスト出演されることになっていますね。

タカハシ「リリース・パーティーなので、アルバムからの曲をがっつりやるんですけど、オケミスの曲もオワリカラでやろうと思ってます。オケミスをちゃんと人前でやるのって、去年の9月以来なんですよ。約半年ぶりに大槻ケンヂ with オワリカラでやらせていただくので、よろしくお願いします」

大槻ケンヂミステリ文庫の2018年作『アウトサイダー・アート』収録曲“ぽえむ”
 

大槻「こちらこそよろしくお願いします。もうね、オワリカラとやれるっていうので、翌日が筋少(のライヴ)なんですけどもね」

タカハシ「すみません……」

大槻「いやあこれは出なきゃと思って。空きっ腹に酒も出るんだよね。俺、何かで知って注目してたんだよなあ。おもしろいバンドだなって」

タカハシ「空きっ腹とは付き合いが長いんですよ。今回、オーケンさんとやるというので、ずっとやってきた中で、いまもがんばってるバンドに出てもらいたくて。あと、大阪のバンドがいいなと思ったんです。そういう壁みたいなものをいろいろ超える感じがあるなと思って」

――そちらも楽しみにしつつ、最後に大槻さんからオワリカラにメッセージをいただければと。

大槻「とにかくオワリカラはかっこいい。なので、いずれというか、もはやそうだけど、世の中的にぐーんと出ていくんじゃないかなと思ってます。メンバー単体でも引く手数多になっているし、ヒョウリくんなんかは……例えば、僕が特撮で一緒にやっているナッキー(NARASAKI)は、ディーパーズ(COALTAR OF THE DEEPERS)から出てきて、〈この人はすごいぞ〉という話になって。そのうちアニメ畑とかいろんなところから声がかかるようになって、いまやもう〈先生〉になっているわけですよ(笑)。ヒョウリくんもそうなるんじゃないかなあ。いや、なりますよ、間違いなく。

だから、変にロフトプラスワンからの中継には出ないほうがいい(笑)。黒歴史になっちゃうから」

タカハシ「出ますよ、そこは(笑)。だってロフトプラスワンってサブカル高校生の憧れの場所じゃないですか」

大槻「憧れちゃダメだよ(笑)! いいとこだけども」

タカハシ「東京生まれ・サブカル育ちの高校生からしたら、ロフトプラスワンってそういう場所なんですよ。あそこの階段とかが『クイックジャパン』とかに載ってたりして」

大槻「ああ、聖地だよね。たしかにわれわれの世代にもそんな場所ってあったなあ。ナイロン100%とか、ピテカントロプス(・エレクトス)とか。そういうイメージね」

タカハシ「そうです。それに俺、オーケンさんと一緒にやりたいことがまだいっぱいあるんですよ」

大槻「おお、ぜひぜひ! まあ、実はもう(一緒にやる)次のプロジェクトをやりはじめているんですけどね(笑)」

タカハシ「そうなんです。まだ解禁前なので、これから楽しみにしていてほしいですね」

 


Live Information

NEWアルバム・リリース・パーティー
4月20日(土)東京・渋谷WWW
開場/開演:17:30/18:00
チケット:前売り3,500円(ドリンク代別)
出演:オワリカラ、空きっ腹に酒
スペシャル・ゲスト:大槻ケンヂ
お問合せ:HOT STUFF PROMOTION(03-5720-9999/平日12:00-18:00)
http://www.red-hot.ne.jp

『PAVILION』TOUR
6月2日(日)大阪 Live House Pangea
開場/開演:17:00/17:30
チケット:前売り3,500円(ドリンク代別)
お問合せ:清水音泉(06-6357-3666)

6月14日(金)愛知・名古屋 TIGHT ROPE
開場/開演:19:00/19:30
共演:みそっかす
チケット:前売り3,500円(ドリンク代別)
お問合せ:TIGHT ROPE(052-242-8557)

6月22日(土)東京・新代田 FEVER
開場/開演:18:00/18:30
チケット:前売り3,500円(ドリンク代別)
お問合せ:FEVER(03-6304-7899)

※各公演の詳細はこちら

プレイリスト
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