So Sorry,Hobo梶原笙の「聴きました」「読みました」「書きました」「そうですか」

第4回「かつて、この場所にはヒクイドリの小屋がありました」

 

4月3日

前回の記事ではあんまり調子がよくない、みたいなことを書いたけど4月の頭は風邪を引いていた。シンプルな不調。僕はザコなのだ。身体が弱いなんてカッコイイもの(病弱キャラがカッコイイという時代は終わってしまっただろうか?)ではなく、ただ単にザコ。自分を愛するためには、まずはじめに自分という人間を正しく認識してあげることがなによりも大切なのである。オレはザコ。うむ、なかなかに正しい認識。よしよし、愛しいね。むせるぜ。自転車に乗ろう。
体調が悪くなりはじめたのは4月1日で、そこから2日間ずっと横になっていたらなんとかこの日には体調はもどってきていた。週に一回しかないバンド練習を、風邪なんかで無駄にするわけにはいかないのだ。

この日は翌週に迫ったライブの練習をすこしした。それからここのところ取りかかっている曲を詰めていった。
前の週まででほとんどできたと思っていた新曲は、一週間という時間を経て聴いてみる(僕たちは演奏する側と聴く側とを同時にこなす)とあんまりよくなかった。いや、かなりよくなかった。全然よくなかった。なんなら悪かった。もっと言うとすごくダサかった。
いままでの連載で書いてきたとおり僕たちの曲のつくりかたはとっても自由(やさしい表現)なので、こういうこともたまにはある。伊達に7年以上こんなことをやっていない。慣れっこだ。
今回は曲の前半部分が癌だという見解でメンバー全員が即座に一致したため、その部分をまるごと捨て、あたらしいパートを考えて代入することでことなきを得た。その結果、この曲をつくりはじめるそもそものきっかけになったギターリフは消滅することになったけど、それはしょうがないことだ。必要な犠牲だった。すぎたことを悔やんでもしかたがない。人間の眼が前についているのは前へ進むためだと聞いたことがある。
はあ。

練習が終わって、帰りの電車ではストリーツを聴いた。

長いあいだずっとよさがわからなくて、「好きなバンドの人たちがみんなリスペクトしているのになんでだろう」と不思議だったのだけど、最近になって急に好きになった。聴きかたがわかってきたというか。そういうことってある。

 

4月5日

挫・人間のライブがあったので、手伝いをしに新宿レッドクロスにいった。
眉村ちあきさんとのツーマンだった。眉村さん、歌声がめちゃくちゃおおきかった。

この日は人間が大量にダイブしていて、神輿みたいになっていた。
最後に下川が神輿として担がれたあと、なぜかステージにもどらずにお客さん用の出入り口から外に出て僕のいる物販スペースにやってきたので普通に困った。なんなんだ、と思った。
下川はお客さんが帰りはじめてすこし経つまでとなりにいたあと、急に楽屋のほうに帰っていった。もういちどなんなんだ、と思った。
いまこの原稿を書きながら、さらにもういちどなんなんだ、と思っている。

 

4月8日

下北沢ガレージでライブだった。
雨が降っていて、ひいひいと情けない声を出しながら機材と物販を運んだ。
ガレージに到着したのはスタートとほぼ同時で、爆弾ジョニーの安田くんが歌っているところだった。

この日は(内村)イタルも共演だったのだけど、なぜか本村もいっしょに出演するというので驚いた。あとうれしかった。
イタルはバンドで歌っているときと弾き語り、それぞれいいからすごいよなと観るたびに思う。僕は弾き語りができないので尚更そう感じる。別物としていいのによさは同じというか、たぶんそれは根っこの強さだ。
途中本村と二人でやった曲もよかった。本村は歌とお客さんの耳が手をつなぐのを手助けする能力が非常に高くて感心する。その仕事ぶりが昔ヤクルトスワローズにいた土橋っぽいなと思ったけど、たぶんこれは本人に言ったら馬鹿にされるから直接は言わない。

僕たちのライブはとてもよかった。いいライブってなんだろう、と思っていろいろと考えてみたけどそう簡単に言い表せるものでもないな。いいライブとは、いいライブです! いまのところはこういう感じ。
いいライブだったな、と思いながら物販をやっているとお客さんからもいいライブでしたね、と言ってもらえたので、僕もそう思います、と答えた。

終演後、ギターの岩井やPAの坪井ちゃんやブッキングの桃李ちゃんたちと中華料理屋にいった。
あんまりお腹が空いてなかったので棒棒鶏だけにしたのだけど、岩井がチャーハンを美味しそうに食べているのを見て、僕もチャーハンにすればよかったなと思った。
気がついたら終電が近づいていたので、みんなでお店を出て井の頭線に乗って帰った。

 

4月9日

ライブの翌日はいつも臀部が筋肉痛になる。意味がわからないし部位がダサいので最悪だな、とそのたびに思う。
夕方まで自分の尻を揉みながらすごしたあと、夜に下川と遊ぼうという話になり、遊んだ。電車のなかで背中が攣った。

下川は遊ぶ約束をするといつも遅れてくるためそれを見こして一時間弱遅れて着くように動いた。そうするとこの日にかぎって時間どおりに来たらしく、文句を言われそうだったので「約束どおりの時間にあつまるなよ」と先手を打ち、封殺した。勝った。
とりあえずご飯、となり前日のことがあったのでチャーハンが食べたかったのだけど、下川が昼中華だったらしくじゃあ、ということでスープカレーを食べた。なにがじゃあ、なんだ。
下川が辛さを二十倍とかにしていて馬鹿なんじゃないの、と思ったけどなにも言わなかった。

食事を終えると下川の家に移動した。あたらしいモニターを買ったというのでそれを見せてもらった。単純におおきくて、そのおおきさで笑ってしまった。おおきいモニターは面白い、というあらたな知見を得た。
下川がそのおおきなモニターで「キャサリン フルボディ」をプレイするのをながめた。

それからいっしょにサチモスの新譜を聴いて「かっこいいね」と言いあった。

サチモスというバンドがこのアルバムをつくったことに意味があると思うし、なんていうか一言で表すと(そして僕が何者かを一旦脇にどけると)「偉い!」という感じだ。

そのあと下川がマッチングアプリをつかいはじめたというので見せてもらったら、案の定女性として登録していてほんとにどうしようもないなこいつ、と思った。
マッチング相手として表示されたオスたちの、「交尾への熱意」としか言いようのないプロフィール群をながめているうちにだんだん具合が悪くなっていったので、終電のすこし前に帰った。

 

4月10日

バンドの練習だった。
前の週に再構築した曲の細かい部分を考えた。どんどん頭の悪い方向にアレンジが進んでいって楽しかった。
ここ一ヶ月ほど空前の「歪んだギタージャカジャーン、ドラム激しくドコドコドコ」ブームなので自然にそういうふうになってしまう。楽しいので完全によし。ただ演奏がむずかしい(当社比)ので、練習をがんばらないといけない。
やるぞ~~。

家に帰ったあと、気がつかないうちにリリースされていたスリーフォード・モッズの新譜を聴いた。あいかわらずめちゃくちゃシンプルかつかっこよくてうれしい気持ちになった。

なんかこの二週間あんまり音楽聴いてなかったから、音楽ブログっぽくならなかったな。
まあいいか。音楽があってもなくても人生は存在するし。

 

ついでに告知的なことをさせてもらう。
僕のやっているSo Sorry,Hoboというバンドが去年の9月にリリースした『大なつかしい展』というアルバムが、4月17日より各種サブスクリプションサービスで配信されることになった。

So Sorry,Hobo 大なつかしい展 FUJI / happy sad(2018)

なんでこのタイミングなのか、それは僕にもわからない。そもそもリリースと同時に配信されるものだと思っていたのにいつまでも配信されず、急にレーベルの人から「4月17日に配信がはじまります」と連絡がきた。
こっちの事情はどうでもいいか。とにかく、いままでよりもずっと気軽に聴けるようになった『大なつかしい展』をこの機会に聴いてみてもらえるととてもうれしい。僕たちなりにがんばってつくった音源なのだ。
よろしく。

【プロフィール】
梶原笙

梶原笙 (かじわらしょう)

ロックバンド、So Sorry,Hobo(ソーソーリーホーボー)のギター・ヴォーカル。​バンドは「内在するファンタジーの再現」を目標にマイペースに活動中。話と文章と髪が長い。オタク。

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