18か月のインターヴァルで、早くも8作目を完成させたピンク。デビューから約20年が経ついまも快調にキャリアを歩み、ブリット・アワードの功労賞も受賞したばかりだが、表題は〈人間であることの辛さ〉と穏やかじゃない。実際、本作は深いメランコリーに包まれ、不穏な社会情勢を背景に、ひとりの女性として、母親として、尽きせぬ葛藤を抱える自分を赤裸々にさらけ出している。カリードからベック、クリス・ステイプルトンなどかつてなく多彩なコラボレーターを曲ごとに招きながら、サウンドには一貫性があり、生楽器の響きを活かしたプロダクションは終始シンプル。円熟したヴォーカルの魅力を引き立てており、タフなイメージの裏にある怖れと不安、そして優しさを伝えてリアルな人物像を描き出す。