これまでの代表曲を新録した初のフル・アルバムでメジャー・デビューを飾るmol-74。曲順や歌詞に心を砕き、作品ごとのストーリー性を巧みに描いてきた彼らゆえ、現時点でのベスト盤とも言える今作においてもアップデートされたバンド像を確認できる。シガー・ロスにも通じる透徹したサウンドがハイファイな録音でグッと解像度を上げており、リアレンジされた楽曲は豊かなアンサンブルを得て彩りを増している。ファルセットの歌声も美しく、それらの音に余白をたっぷり持たせて風景を喚起し、聴き手をそこに溶け込ませるような吸引力に驚かされる。アカペラや無音も活かした“あいことば”、トラップ風のハイハットにホーンを重ねる“Morning is Coming”という新曲も、彼ららしい独創性の表れだ。