テーマは〈エモ散らかす〉

――そんなFling Posseの新曲“Stella”は、宇宙を舞台にそれぞれの役柄に扮したメンバー3人の邂逅が物語調で描かれる、SF風の壮大なナンバーです。

ESME「最初にディレクターさんから〈惑星間を移動する物語の楽曲〉というお話をいただいたんですが、その設定が壮大すぎて〈どうやって楽曲にすればいいんだろう?〉と思いましたね。資料を読み込んでも〈わからん!〉となりまして(笑)」

弥之助「資料には、ざっくり言うと『カウボーイビバップ』や『スペース☆ダンディ』みたいなスペースオペラ的な世界観で、シブヤの3人が宇宙船に乗って星間を移動する、という設定が書かれていたんです。そもそもこの曲は〈幻太郎が書いた小説〉という設定にして、〈フィクションのなかでフィクションの話をする〉という狙いが最初にあったんですよ。そこから僕が盛大に妄想を広げた結果がコレなんです(笑)。まず最初に誰がどの星で何をしているのかを決めたんですが、そこは驚かせたい思いがあったので、あえて今までのイメージとはかけ離れたキャスティングにしました」

白井「確かに帝統が王様、幻太郎が山賊、乱数が科学者というのは意外でした。普通なら山賊は帝統だと思いますし。でも、みんな〈孤独〉という共通点がありますよね」

弥之助「そうなんです。どこから来てどこに行こうとしてるのかわからない3人が一時的に集まって何かをしでかすおもしろさが出ればと思って。Fling Posseは4ディビジョンのなかでいちばん歪な関係というか、なぜ一緒にいるのかよくわからない3人だと思うんですよ。そういう彼ららしい結束を、甘くてフワフワした“Shibuya Marble Texture-PCCS-”とはまた別の視点で描きたかったんです。深刻さや真面目な一面が出たのはESMEさんのトラックからの影響でもあるんですけど」

――トラックは各キャラのヴァースごとでトラップやブロステップ風などに変化して、サビは4つ打ちで加速感を増すという、次々と景色が移り変わるような構成です。

ESME「サビの部分は星の間を移動しているイメージで作りました。曲的に何度も場面転換する必要があると思ったので、それぞれ全然違う世界観のトラックを作って、それが最後にまとまっていくようなストーリーにしたんですが、個人的には4~5曲分の労力を使った気持ちなんですよ(笑)。でも、普段の作曲では使わないような脳を使うことができたし、〈ヒプノシスマイク〉という作品の枠にハマりさえすれば何でも自由にできるところが、大変でしたけど楽しかったです」

――イントロは映写機が回る音で始まり、そこに幻太郎のモノローグが被さるところも、この曲自体が物語であることを暗示しているように感じました。

ESME「そうですね。この提案は弥之助さんからもらいました。始まりは語り部が語っている感じにしようと思っていました。他にも科学者(乱数)のヴァースでは実験室っぽいポコポコした音をSEに使っていたり、サントラを作っているような気持になりましたね」

白井「この曲はひとつの映画を観ている感じがありますよね。ぜひ映像化してPVを作ってほしいぐらいです(笑)。僕も最初にデモを聴いたときからめちゃくちゃカッコイイと思いましたし、しかも今までのシブヤの楽曲とはまったくイメージが違うので、シブヤの3人で〈ヤバすぎない?〉ってテンションが上がっちゃいました。あと、音源と同時に設定資料をいただいたんですけど、そこに楽曲のテーマとして〈エモ散らかす〉というパワーワードが書かれてたんです(笑)」

ESME「あれ、本当にパワーワードですよね。僕も制作中にずっと意識してました」

白井「確かにめちゃくちゃエモ散らかしてるんですよ。レコーディングのだいぶ前から聴きすぎて大好きになってしまいました(笑)」