中国神話の四凶の一つ「渾沌」を下敷きとした絵本。夢枕獏が新たに紡ぎ、鉄コン筋クリートでお馴染みの松本大洋が描く世界は、シンプルさと繊細さ、そして重みを感じられる空気がある。伝説の通り不気味な「こんとん」だがページをめくるごとに愛らしく見えてきて、そしてとても悲しい結末を迎える。絵本の醍醐味とは簡素な表現の中にある感動だが、その時のあまりに“当たり前”の言葉に強烈な物悲しさを覚えた。何が悲しいのかわからないのだが、現代社会で生きていくことの難しさを改めて感じさせてくれる、そんな気持ち。切なくも暖かく、そして可愛い「こんとん」、ぼくも「なんだか すきなんだよねえ」。