INTERVIEW

原田珠々華『はじめての青』 16才のシンガー・ソングライターが初ミニ・アルバムに描いた感情の色とは?

原田珠々華『はじめての青』 16才のシンガー・ソングライターが初ミニ・アルバムに描いた感情の色とは?

前髪はもう崩れてるし、あの夏は帰ってこない――目的もない青い春を生き、綴り、歌う16才のシンガー・ソングライター。『はじめての青』はどんな色で描かれている?

気持ちに波があった

 「自分はこれからどうしていきたいか──アイドルネッサンスが解散してから、2か月ぐらい考える時期があったんですけど、やっぱり芸能の仕事をやめるとかっていう考えはなくて、歌に関わることは絶対に続けていきたいなと思っていました。最初は別のアイドル・グループに参加させていただくとか、そういうことも視野には入れていたんですけど、解散する前にSNSに上げていた弾き語り動画の反響が大きかったので……両親にも〈解散するからっていう理由じゃなく、なにか惹かれるものがあるから観てくれてるんじゃない?〉って言ってもらえたから、自分は歌とギターでがんばってみようって最終的に思ったんです」。

 アイドルネッサンス解散からちょうど4か月後、自身16歳のバースデーだった昨年の6月24日。あの日々に別れを告げるように、激動だった〈15歳〉の思いを瑞々しく綴った自作曲“Fifteen”の弾き語りを配信して、ソロでの活動再開を発表した原田珠々華。もともと小学生の頃に友人と組んだバンドで演奏していた背景もあり、他のメンバーにはない個性をつけたいという理由で手にしたアコースティック・ギターを抱え、アイドル・ソングなどを辿々しい弾き語りでコピーしていた彼女はその日、シンガー・ソングライターとしての一歩を踏み出した。

 「いまは少しずつですが、曲を形にできるようになりましたけど、本当に最初の頃は鼻歌で作って、サポートしてくださる方にコードを付けてもらって曲になる、という感じだったので、ソロでやるって決めたものの、どうなっていくのか未知すぎて。いまはステージを観に来てくれた人を幸せにしたいと思う気持ちとか、自分が発信したものに対して評価してもらうことを重ねていくうちに、それがいつか大きなものになるんじゃないかなって信じながら曲を作って歌っています。失敗もしつつなんですけど、どんなところが人の目に止まるのかわからないので、とりあえずいろいろやってみようって」。

 もの覚えの良さと、負けん気、グループ時代に培った音楽的素養、当時のステージでも見せてきたひたむきさ、そして好奇心諸々を原動力に、逞しく前進してきた彼女。もちろん、この一年の間にたくさんの音楽を聴き……というのは、昨夏から始まった本誌連載〈原田珠々華の歌いながら行こうよ〉でも確認できるところ。

 「以前は、自分が見つけた音楽だけを好んで聴いていた感じなんですけど、ソロでやるようになってからは、人にオススメしてもらった曲や、Twitterのタイムラインで見かけたシンガー・ソングライターの方やバンドを調べて聴いてみたり、SNS上での音楽との出会いみたいなのも大切にしています。そのなかでも〈良いな〉と思ったものは曲作りにも影響していて、自分が良いと思った音楽がいちばん教科書になるんだってわかったら、少しずつ自分が作りたい曲にイメージが持てるようになってきて」。

原田珠々華 はじめての青 TOWER RECORDS(2019)

 若さと純粋さゆえの急成長を見せてきたソロ始動からの一年弱。3曲の先行配信に続き、満を持して届けられたファースト・ミニ・アルバム『はじめての青』は、まさにその期間のドキュメントとでも呼べるような作品だ。

 「16歳になって、ソロとして一年近く活動をしてきて、思春期っていう時期だからこそ、気持ちの変化とか波とかがたくさんありました。それが曲にも表れているので、こうやってアルバムとして並べてみた時に、まとまりがないなって気付きました」。

 

歌いたい曲を作ってる

 くるりや銀杏BOYZなどで活躍するギタリストの山本幹宗(元The Cigavettes)をプロデューサーに迎え、ベースにおかもとえみ(フレンズ)と上野恒星(Yogee New Waves)、ドラムスに戸高亮太(元The Cigavettes)と岡山健二(classicus)、浜公氣(どついたるねん)、スティール・ギターに井上陽介(Turntable Films他)、ヴァイオリンにAsuka Mochizuki……と、バンド・セットでのライヴ・メンバーも含む頼もしいミュージシャンたちを従えた『はじめての青』は、2ビートのハツラツとしたナンバー“ハジマリのオト”で幕を開ける。最初期に作ったこともあって「この曲だけアイドルっぽい部分がある」という“今年の夏休みは君とデートに行きたい”や、アイドルネッサンスの記憶を手繰りながら解散した後の気持ちを綴った“Hero”など、収められた全7曲はすべてこれまでのステージで披露してきたものだが、駆け出しのソングライターとして、思いがけない感想に驚くこともあったとか。

 「私、メロディーを作るのがすごく苦手だったんですけど、ずっと応援してくださっている方から〈メロディーメイカーだね〉って言ってもらえたことがあって、それはちょっと自分でもびっくりだったんです。思い通りのメロディーが作れなさすぎて、メロディーは他の誰かに全部お任せしようって思ってたぐらいだったので、そう言ってもらえたのは驚きだし、嬉しかったです。でも、そのぶん自分が歌いにくい歌を作ってしまうこともあって(笑)。“Moon Light”は特に自分でも難しい曲を作ったなと思っていて、息継ぎがしにくかったりとか、ヘンに高かったり低かったりっていうのがあって、とにかく自分は〈歌いたい曲〉を作ってるんだなって思いました。あとはその、けっこうすんなり出来上がったもの、例えば授業中とかにふと思い浮かんで、家に帰ってからあまり時間をかけずに出来上がった曲が意外と聴いてくださった方にとっては特別な曲になってたりとか。“プレイリスト”はそうですね。逆に時間がかかったのは、いろんな試行錯誤あっての“ハジマリノオト”です。サビのメロディーと歌詞は早くに決まったんですけど、そこから先が全然出てこなくて。しかも、この曲は大事な曲にしたいと思っていたので、そう考えちゃうとさらにイイ曲を作らなきゃっていうプレッシャーになって。結局、プロデューサーの山本幹宗さんにAメロとBメロを作っていただいて……勉強になりました」。

 

意識しなくても変わっていく

 シンガー・ソングライターとしての原田珠々華の現在位置を示す『はじめての青』。完成後も日々、曲作りに繋がる思いつきや溢れ出た感情を書き留めているそうだが、すでに気持ちや興味の変化などを自身でも感じているようだ。

 「そうですね、常日頃思うようなことでも、〈変わっていこう〉と意識しなくても変わっていきますね。なので、次のアルバムを出すとしたら、今回のを超える曲たちになったらいいなっていうのはまず思うんですけど、バンドでのライヴを経験してからバンドの音にハマッているので、そういう要素をさらに入れつつ、ちょっと難しいことを歌ってるかもしれないです(笑)。そもそも曲を作るときって、男性がバンドで歌っているのを想像して作って、それを自分の音程に合わせてカヴァーして歌ってるみたいな感覚でやったりもするので、根本的にバンド・サウンドに対する理想があるんでしょうね」。

 〈大人顔負けの……〉であるとか〈16歳にして……〉といった形容が付くようなシンガー・ソングライターではないけれど、まだ固まりきれてない〈半熟期〉だからこそ直感を頼りにありのままを表現していく、そのアティテュードが愛おしい。まだ始まったばかりの彼女のストーリー、追い続けていくしかない。

 

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