COLUMN

北欧ポップの至宝、カックマダファッカとは?

新作『Diplomacy』の魅力を徹底解説!

北欧ポップの至宝、カックマダファッカとは?

キングス・オブ・コンビニエンスやオーロラら世界規模での人気アーティストを輩出し続ける北欧のポップ大国、ノルウェー。そんな同国のインディー・シーンにおいて突出した人気を誇るのが5人組、カックマダファッカだ。彼らが新作『Diplomacy』を完成。ヤング・ドリームスのフロントマン、マティアス・テレスをプロデューサーに迎え、バンド持ち前のハッピーでカラフルなサウンドはそのままながら、仕上がりは実にウェルメイド。ポップ好きなら愛さずにはいられないアルバムに仕上がっている。同作を引っ提げての待望と言うべき初来日ツアーも控えたバンドを、音楽ライターの新谷洋子が解説した。 *Mikiki編集部

 


〈KAKKMADDAFAKKA〉と、しばしば大文字だけで表記される主張の強いバンド名からして、タダ者ではないことを物語っているが、バンドのロゴは、なぜか逆さにひっくり返った馬。アーティスト写真にしても、どれもこれも様子がおかしい。キャリア最大級となる現在進行中のツアーは〈グローバリスティック・ツアー〉と銘打たれ(もちろん〈globalistc〉なんて単語は存在しない)、バンド自ら主宰するレーベルのベルゲン・マフィアは自称〈世界最高のレーベル〉なのだとか。以上の情報だけで、カックマダファッカ(以下、KMF)への好奇心は十分に刺激されるのではないかと思う。

バンドのロゴ画像
 

彼らの故郷はそんなわけで、ノルウェー西岸の港湾都市ベルゲン。お馴染みのキングス・オブ・コンビニエンスやロイクソップ、最近ならケミカル・ブラザーズとのコラボで知名度を上げたオーロラを輩出した、同国が世界に誇るインディー・ミュージックの震源地である。そのベルゲンにて2000年代半ばに結成。現在はアクセル(ギター/ヴォーカル)とピッシュ(ヴォーカル)のヴィンデネス兄弟を中心に、スティ・コブラ(ベース)、パス(ドラムス)、キッツ(キーボード)を交えた5人編成で活動しており、『Down To Earth』(2007年)、『Hest』(2011年)、『Six Months Is A Long Time』(2013年)、『KMF』(2016年)、『Hus』(2017年)と、コンスタントにアルバムを発表してきた。

北海を挟んでスコットランドに近いためか、あるいはマンチェスターや大阪にも通ずる首都(オスロ)への敵対心ゆえか、他のベルゲン出身者の例にもれず海外進出に積極的な彼らは、早くからドイツほかヨーロッパ全土をツアーしており、ライヴ・パフォーマンスの評判に押されて国内外で厚い支持層を築いてきたという。

2013年作『Six Months Is A Long Time』収録曲“Foreber Alone”のライヴ映像。
地元ベルゲンの観衆による大合唱/盛り上がりが凄い!
 

そしてさる4月末には6作目『Diplomacy』がお目見えしたわけだが、あらためて初作『Down To Earth』と並べて聴き比べてみると、音楽的な変貌ぶりに驚かされる。というのもファーストで彼らが鳴らしていたのは、いい意味で少しもダウン・トゥ・アースじゃない、シアトリカルでジャジーなボードヴィル・パンクだった。

2007年作『Down To Earth』収録曲“Dancing Elephant”
 

その後、KMFの面々が師と崇めるキングス・オブ・コンビニエンスのアーランド・オイエがプロデュースした『Hest』と『Six Months Is A Long Time』ではエキセントリシティーをいくらかトーンダウンし、トーキング・ヘッズやヴァンパイア・ウィークエンドにも通ずるコスモポリタンなサウンドにシフト。『KMF』ではピアノを核にしたシンプルで甘口のポップソングを作ることに専念し、セルフ・プロデュースに挑んだ『Hus』でもその路線を引き継いで、今度はギター主役でサウンドを形作っていたものだ。

2011年作『Hest』収録曲“Restless” 
 

こうして、高いエネルギー値とファンキーさを終始維持しつつ、徐々にポップでメロディックな志向を強めてきたKMFは、今回の『Diplomacy』に至って、ファーストで組んだマティアス・テレスを再び起用。当時はソロのシンガー・ソングライターだったマティアスは、この間にヤング・ドリームスを結成する一方、ソンドレ・ラルケやラジカのアルバムでプロダクション・ワークの評価を上げ、ベルゲン・シーンのキーパーソンとなったことはご承知の通りだ。

KAKKMADDAFAKKA Diplomacy Kakkmaddafakka/Rimeout(2019)

 本作はまさに、前回コラボしてからの10年間に双方が積んだクリエイティヴな経験を結集しており、いままでになく完成度の高い9つの曲に昇華させている。どの曲も人なつこいメロディー、甘酸っぱいストーリーテリング、パンチの効いたギターとキッチュな鍵盤のせめぎ合い、太いベースのグルーヴ、ちょいとヘタレ気味の愛さずにいられないヴォーカルを共有。その鍵盤の音にせよ、リズム・パターンにせよ、構成要素のひとつひとつにヒネリが効いているのだ。

Runaway Girl”は一組のカップルの逃避行をテンション満々のエレクトロ・ポップに落とし込み、KMF流のパワーバラードと呼びたい“The Rest”ではフィル・コリンズ調の大仰なドラムを効かせ、夏の匂いがする材料を集めた“Get Go”は常夏の国への憧れを託したかのようなダンス・アンセムだ。

『Diplomacy』収録曲“Runaway Girl”
 

ディスコ・チューンの“Frequency”ではミラーボールのきらめきを音に転化。そしてフィナーレには、60年代の古典的ソングライティング様式と(タイトルも含めて)80年代AOR的な世界が同居する“This Love”が待っていて、テンションを緩めたり引き締めたりしながら、ノスタルジックでカラフルなインディー・ポップ集を作り上げている。

もうひとつ特筆すべきは、KMFが描くストーリーの舞台だろう。開口一番に、〈完璧なメトロノーム〉みたいに規則的に波が打ち付ける海辺に聴き手を誘う冒頭の“My Name”以下、彼らは多くの曲で海や水やブルーの色彩に触れていて、故郷の風景が独特のアイデンティティーとリアリティーを与えていると思うのは、深読みのし過ぎだろうか? 裸になってふたりでブルーに包まれて泳いでいる“Naked Blue”然り、海と風の関係に男女の関係を例えている“This Love”然り、5人にとって見慣れた景色がどの曲にも背景を提供しているに違いない。一見怪しげで、遊び心に溢れていて、なのに胸をキュンキュンさせてやまないベルゲンのマフィアたち。満を持して実現する6月の初来日公演で、その正体がいよいよ明かされる。

2018年のライヴ映像
 

Live Information
Kakkmaddafakka Japan Tour 2019

2019年6月10日(月)東京・ 新代田FEVER
2019年6月11日(火)名古屋・池下CLUB UPSET
2019年6月13日(木)大阪・心斎橋Music Club JANUS
前売り/当日:4.000円/4,500円
出演:カックマダファッカ
★各公演の詳細はこちら

 

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