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TVアニメ「ピアノの森」のキャラクター別アルバム “キャラソン”感覚で楽しむ本格派“キャラピアノ”

“キャラソン”感覚で楽しむ本格派“キャラピアノ”

 今年4月に最終回を迎えたTVアニメ『ピアノの森』第2シリーズ。ショパン・コンクールをめぐる物語の音楽を、未来のクラシック界を担うピアニストたちがキャラクターとして演奏し、音楽ファンのあいだでも話題となった作品だ。

 『ピアノの森』はもともと、2015年に完結した一色まことによる漫画作品。森に捨てられたピアノをおもちゃ代わりにして育った主人公・一ノ瀬海(カイ)が、かつての天才ピアニスト阿字野壮介に見いだされ、偉大なピアニストを父に持つ雨宮修平ら仲間との出会いの中で才能を開花させ、やがてショパン・コンクールに挑むという“音楽漫画”である。既読の方ならご存じのとおり、物語の主人公はカイであると同時に“音楽”であり、そこには原作者のあふれる音楽愛がある。“音楽”のキャストである“ピアニスト”に重大な役割があることは自明で、キャラクターごとに演奏者を決めることにも、カイの師匠・阿字野のピアノを現在人気・実力ともにトップクラスの反田恭平が“演じる”ことにも、制作陣の並々ならぬこだわりを感じてきた。

 甲斐あってか、この春発売された、キャラクター別アルバムが売れに売れている。斉藤壮馬(カイ)、花江夏樹(雨宮)、中村悠一(パン・ウェイ)、諏訪部順一(阿字野)ら実力派トップ声優のキャスティングでも注目を集めてきたTVアニメ『ピアノの森』だが、音楽ファンのみならず声優ファンにも耳のよい音楽好きは多く、おなじみの“キャラソン(声優がキャラクターとして演唱する歌)”とおなじ感覚で“キャラピアノ”を楽しんでいるのかもしれない。それぞれのアルバムにつけられたタイトルも、らしくて楽しい。

髙木竜馬 ピアノの森 雨宮修平の軌跡 Columbia(2019)

 第1弾として登場したのは、主人公カイの親友でライバルでもある雨宮修平のアルバムだ。カイと出会った小学生時代から、「コンテスタントからピアニストに」開花してゆくショパン・コンクールの演奏までを、TVアニメ・オリジナル音源で収録している。メインピアニストは、2018年グリーグ国際ピアノ・コンクール優勝の新鋭・髙木竜馬が担当した。

一ノ瀬海,JACEK KASPSZYK,WARSAW PHILHARMONIC ORCHESTRA ピアノの森 一ノ瀬 海 至高の世界 Columbia(2019)

 第2弾は、担当ピアニストが明かされていない主人公・一ノ瀬海。モーツァルトのピアノ・ソナタ第2番やラ・カンパネラ、小犬のワルツ、そしてショパン・コンクールで演奏した英雄ポロネーズなど名曲の数々――オープニングテーマ「海へ」としても編曲されたアニメの象徴、エチュード10-1までをすべてフルで収録。さらに、コンクールのファイナルで演奏するショパンのピアノ協奏曲第1番全楽章は、実際のショパン・コンクールでも演奏しているワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団との共演で、コンクールの舞台であるワルシャワのフィルハーモニー・ホールで録音されたという本格ぶりだ。その響きに、物語の感動が鮮やかによみがえることだろう。

牛牛 ピアノの森 パン・ウェイ 不滅の魂 Columbia(2019)

 そして第3弾は、中国出身のピアニストで、壮絶な過去を持つ人気キャラクター、パン・ウェイ。ショパン・コンクールの有力な優勝候補のひとりであり、演奏はすべて、キャラクターと同じ中国出身の牛牛(ニュウニュウ)が担当した。コンクールでパン・ウェイが演奏する革命エチュードやスケルツォ第3番、葬送ソナタ等はもちろん、ファイナルで演奏するショパンのピアノ協奏曲を、カイと同じくワルシャワで収録している。

富貴晴美 TVアニメ ピアノの森 音楽集 Columbia(2019)

VARIOUS ARTISTS ピアノの森 PIANO BEST COLLECTION II Columbia(2019)

 作曲家・富貴晴美が手がけたサウンドトラック『TVアニメ「ピアノの森」音楽集』のほか、アニメを彩るピアノ楽曲の数々がフルサイズで収められた『「ピアノの森」Piano Best Collection II』も発売された。第2次予選での主要曲など、今回が初CD化となる音源も多数。興奮と情熱に浮かされ奔流のように駆け抜けていったコンクールの音楽を、ゆっくりと反芻するのにうってつけだ。

 4月から、Eテレでの再放送もはじまった『ピアノの森』。深夜には出会えなかったたくさんの人に届けたい、本物の音楽の輝きがそこにある。

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