COLUMN

〈クリムト展 ウィーンと日本 1900〉 傑作が一堂に会する展覧会――フルトヴェングラーの第九と共に目と耳で体感できる「ベートーヴェン・フリーズ」が登場!

〈クリムト展 ウィーンと日本 1900〉 傑作が一堂に会する展覧会――フルトヴェングラーの第九と共に目と耳で体感できる「ベートーヴェン・フリーズ」が登場!

クリムトの傑作が一堂に会する展覧会〈クリムト展 ウィーンと日本 1900〉では、フルトヴェングラーの第九と共に目と耳で体感できる「ベートーヴェン・フリーズ」が登場!

 ウィーンの分離派会館のシンボルは、上部に設えられた球形の月桂樹(通称〈金のキャベツ〉)だ。そのおかげで、遠目からもモスクや教会のように映える。

 実際、この建物の地下には礼拝室を思わせる空間がある。グスタフ・クリムトの描いた壁画「ベートーヴェン・フリーズ」の部屋だ。

 この壁画は、1902年の第14回ウィーン分離派展示会のために制作された。この展示会のテーマは〈ベートーヴェン〉。マックス・クリンガー作のベートーヴェン像をメインに据え、市民社会の理念を音楽によって実現させようとした楽聖を讃える内容だったらしい。既存の芸術から〈分離〉することを目指して結成されたウィーン分離派が、自分たちのアイコンを困難に果敢に立ち向かい、理想主義で新時代を切り開いた作曲家に託したというわけだ。

 クリムトの「ベートーヴェン・フリーズ」は、ベートーヴェンの交響曲第9番をテーマにして、3面に分かれた壁画だ。左の壁には「幸福への憧れ」として、ベートーヴェンを示唆しているようにも思える黄金の戦士と彼に寄り添う2人の女性が描かれる。中央の壁は「敵対する力」。怪物テュフォンとゴルゴン三人姉妹たちを中心に、悪や不貞、淫欲などが象徴として表現されている。そして、右の壁の「歓喜の歌」では、合唱する女性たちを背後に、抱擁する男女。この〈礼拝室〉で祀られているのは、ベートーヴェンの音楽なのだ。

 その「ベートーヴェン・フリーズ」の精巧な複製が、東京都美術館で開催される展覧会〈クリムト展 ウィーンと日本 1900〉で展示される。その複製展示の部屋では、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲第9番の録音が流れることが予定されているという。〈バイロイトの第九〉としてファンのあいだでは神格化されて久しい演奏だ。神秘性あふれる第1楽章、切迫した運びの第2楽章に、究極の遅いテンポに官能性が宿る第3楽章、そして生命力あふれる終楽章。何がどうなっているかわからなくなるようなスピードで驀進する終結部も印象的だ。

 クリムト没後100年(2018年)、および日本オーストリア友好150周年(2019年)を記念して行われるこの企画展は、東京では約30年振りになる大規模なクリムト展になる。中心となるのは、過去最多だという25点以上の油彩画だ。

 たとえば、「ユディトI」は、油彩画に金箔を用いた〈黄金様式〉時代の代表作。金箔の使用は、日本の琳派の影響もあるとされている。祖国を救うために敵将の首を切り落とし、恍惚の表情を浮かべるユディト。その強烈に匂う官能性は、見る者をたじろがせる。一方、「オイゲニア・プリマフェージの肖像」は、クリムトの後期様式がよく現れた作品だ。荒々しいまでに並置された色面が背景や衣装を横断、人物の人となりを浮かび上がらせる。

 クリムトは風景画もいい。「雨後(鶏のいるザンクト・アガータの庭)」では、その空気感が濃密に迫ってくる。「アッター湖畔のカンマー城III」の構成感もすばらしい。装飾のようにみえるものが構造に転じ、次第にそれが本質を成すように思えてくる。

 この企画にあわせて、ワーナー・クラシックスが2つのディスクをリリースする。一つは、前述のフルトヴェングラーによる〈バイロイトの第九〉。今回は、アナログの質感により近いといわれるDSDによるマスター化が新たに施されていることにも注目だ。

 もう一枚は、『クリムトとウィーンの音楽』と題されたコンピレーション・アルバム。〈バイロイトの第九〉の第4楽章のほか、クリムトが活躍したウィーンにまつわる音楽を中心に編集している。シューベルトやヨハン・シュトラウスのほか、クリムトの同時代のマーラーの「アダージェット」(交響曲第5番第4楽章)などが収録されている。ちなみに、1902年に「ベートーヴェン・フリーズ」が公開されたオープニングで、この壁画を前にベートーヴェンの第九(終楽章の編曲版)を指揮したのはマーラーだった。

 


グスタフ・クリムト (Gustav Klimt) 【1862-1918】
世紀末ウィーンを代表する画家。ウィーンの工芸美術学校に学ぶ。初期にはアカデミックな作風で才能を認められ、劇場の壁画装飾などで名を馳せる。1897年に保守的なウィーンの画壇から離脱し、〈ウィーン分離派〉を結成すると、初代会長として分離派会館を中心に多くの展覧会を開催しながら、新しい造形表現を追求。同時代の芸術家らとともに、絵画、彫刻、建築、工芸の融合を目指す総合芸術を志向する。エゴン・シーレら次世代の画家たちにも多大なる影響を与えた。

 


EXHIBITION INFO.

クリムト展 ウィーンと日本 1900
○4/23(火)~ 7/10(水)
会場:東京都美術館 企画展示室(東京・上野公園)
○7/23(火)~ 10/14(月・祝)
会場:豊田市美術館(愛知県豊田市)

https://klimt2019.jp

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