COLUMN

大野えり『eri ohno LIVE AT PIT INN vol.2/Feeling Good』 聴衆との共鳴をそのままに――レジェンドとなった真夏の夜のライヴふたたび

大野えり『eri ohno LIVE AT PIT INN vol.2/Feeling Good』 聴衆との共鳴をそのままに――レジェンドとなった真夏の夜のライヴふたたび

[English Transration]

聴衆との共鳴をそのままに~レジェンドとなった真夏の夜のライヴふたたび

 日本のジャズミュージシャンによる伝説的なライヴとは久しくきいたことがない。しかし2018年8月に行われた大野えりのライヴは一年も経たずにレジェントとなってしまった。そこに行けなかった私はサックスで参加した川嶋哲郎から立錐の余地もないピットインで聴衆とのまれにみる音楽の共鳴を話に聞き、悠雅彦さんのライヴレポートを読んでその素晴らしさを想像するばかりだった。幸いこの演奏はそっくりそのままを包み込んだようなCDとDVDとなってリリースされている。傑作を確信してレコーディングにのぞんだスタッフに感謝するしかない。

大野えり eri ohno LIVE AT PIT INN vol.2/Feeling Good KIA records(2019)

 この『vol.2』にはオリジナルを含め渾身の8曲が収録されてライヴの全容が完結する。そこには日本人にしか出来ないジャズが表現されている。〈ジャズ〉が音楽のスタイルとして完成された、というよりひとつひとつの所作の中に自然に結晶化していることに驚く。参加ミュージシャン達のプレイも自作ですら聴けないほどに個性的だ。全15曲からのセレクトを排し『vol.1』に続く8曲が見事に配されている。コルトレーンやピアソラの完全版ライヴでもあるまいし日本人の二晩のライヴを捨て曲なしで二枚に仕立てようと考えること自体が特殊で、そして見事に成功している。手の込んだ作り込みを敢えてせずに独特の荒々しい空気ごとをざっくり切りとってそのまま盛り付けたような潔さが心地よい。

 予備知識を捨てて聴くと目の眩む音楽に〈世界のどこで、いつ起きたことなのか〉との想像を超えたケミストリーが脳内をめぐる。そしてざらっとしたピットインの懐かしい音の中でふと我に返るのはまことに不思議な体験だ。これを聴いて大野えりという稀有な存在を既に知る世代は久しぶりに〈再評価〉もするだろう。しかし新しい音楽ファン達には大きな驚きをもって迎えられ今後も彼女を聴き続ける動機となるはずだと思う。真夏の夜に行われたのはそれほどの演奏だったのだ。

 


LIVE INFORMATION

Eri Ohno Live at Pit Inn vol.2 Feeling Goodレコ発ライブ
○5/31(金) 会場:新宿ピットイン
出演:大野えり(vo)川嶋哲郎(ts)類家心平(tp)太田朱美(fl)石田衛(p)米木康志(b)原大力(ds)
www.pit-inn.com/

 

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