当時カメルーンを支配していたフランス軍へ独立を求めたことで殺害された英雄ルーベン・ウム・ニオベの没年である1958年を冠した本作はそのルーベンに捧げた作品ではあるが、憂いはあってもけしてネガティブなムードはなく、むしろ慈愛に満ちていると言っていい。それはバッシーの歌声が何よりも物語っており、聴く者によっては癒され郷愁にかられ、あるいは勇気付けられることもあるだろう、心に寄り添うファルセット。それが本作の最大の魅力だ。自ら弾く、ブルースにインスパイアされた小気味良く乾いた音色のギターを中心にカメルーンの伝統とジャズ的アプローチを融合させた演奏も逸脱。