小曽根真 (C)Yow Kobayashi

 

 小曽根真(1961年、神戸生まれ)とアルトゥーロ・サンドヴァル(1947年、キューバアルテミサ生まれ)。ピアノとトランペットヴァーチュオーソと言っていいだろう二人は、育った地域も文化も異なるのに、大きな共通点を持つ。

 それは、共にジャズに心底ヤラれて、その表現を生んだアメリカに渡ったこと。異国の地で、彼らは挑戦することを自らに課した。結果、秀でた技量と感性で、それぞれに本場で確固たる位置を築いている。

【参考動画】小曽根真とシンフォニア・ヴァルソヴィアによる“Rhapsody In Blue”
2014年ナントでのコンサート映像

 

 また、二人ともびっくりするほどしなやかな音楽観の持ち主で、様々な表現に取り組んで来たことも重なる。小曽根はソロからビッグ・バンドまで多様な様式にわたるジャズ活動だけでなく、Jポップの担い手との共演やクラシックへの進出など、どんどん活動領域を広げている。一方、高いクラシック教育をハバナで受けたサンドヴァルは伝説的ラテン・ジャズ・バンドであるイラケレにおける活動で注目を受けた後、その誰にも負けないトランペット技巧を武器にワールドクラスの奏者として活動。これまで、彼もいろいろな音楽スタイルに伸びの伸びとあたってきた。

アルトゥーロ・サンドヴァル

 

 また、両者とも文化人的なスタンスを飄々と有しているのも、面白いところ。サンドヴァルはジャズへの献身もあって1990年に米国に亡命しているが、そんな彼の起伏に富んだ人生は米国HBOテレビにより、2000年にドラマ化された。それは『For Love or Country : The Arturo Sandoval Story』と表題され、アンディ・ガルシアが主演している。

【参考動画】アルトゥーロ・サンドヴァル“There Will Never Be Another You”
2012年のスタジオ・ライヴ映像

 

 そうした“顔役”の二人が、この秋に四つに組む。その“Jazz meets Classic”と題されたコンサートは2部構成が取られ、1部では東京都交響楽団も交え(指揮はジョシュア・タン)、ショスタコーヴィッチラヴェルの曲を題材に臨機応変なやりとりを披露。また、2部においては、二人で即興を自在に重ね合うジャズ・セッションが持たれる。

 その設定は、小曽根がクラリネットサックス奏者のパキート・デリヴェラ(やはり、イラケレのメンバーだった)と昨年持った公演と同様のもの。タン指揮による東京都交響楽団がつくのも同じで、今回はその経験をふまえ、より濃密な越境や会話が持たれるのは間違いない。

 小曽根とサンドヴァルの、ジャズやクラシックを引き金とするや朽ちぬ楽器愛や高潔な音楽観の忌憚のない提示……。そうした二人の邂逅は、ジャンルや場所を超えた両者それぞれの気が遠くなるような、これまでの“音楽の旅”を鮮やかに映し出すものになるのではないだろうか。

 

LIVE INFORMATION

Music Weeks in TOKYO 2014 メイン公演
「小曽根真&アルトゥーロ・サンドヴァル "Jazz meets Classic" with 東京都交響楽団 」

○10/24(金)19:00開演 会場:東京芸術劇場 コンサートホール
○10/25(土)19:00開演 会場:オリンパスホール八王子

出演:小曽根真(P)スペシャル・ゲスト:アルトゥーロ・サンドヴァル(tp)ジョシュア・タン(指揮)* 東京都交響楽団*(*第1部のみ)

曲目:《第1部》バーンスタイン:「キャンディード」序曲
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 op.35
(ピアノとトランペット、弦楽合奏のための協奏曲)
ラヴェル:ボレロ(小曽根スペシャル) 
《第2部》ジャズ・セッション 小曽根真×アルトゥーロ・サンドヴァル

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