二年振りとなるフルオーケストラで拡がるハイラルの世界に再び目を覚ます

 初代「ドラゴンクエスト」が発売された1986年。同年のその三ヶ月ほど前、初代「ゼルダの伝説」はファミコンディスクシステムのローンチソフトとして発売された。作曲を手がけたのは近藤浩治氏。誰もが一度は耳にしたことがあるだろう初代「スーパーマリオブラザーズ」の作曲家だ。以降「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」と並び日本が誇るファンタジーゲームの代表作の1つとして世界中のゲームファンに愛され続けている。そのオーケストラコンサートが昨年末、東京フィルハーモニー管弦楽団(東京)と日本センチュリー交響楽団(大阪)による演奏で開催された。このCDでは12月14日(東フィル)の演奏が収録されている。

竹本泰蔵, 東京フィルハーモニー交響楽団 ゼルダの伝説コンサート2018 Columbia(2019)

 2年振りとなるフルオーケストラコンサートの演奏曲目のメインはシリーズ最新作「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」だ。このゲームは2017年に発売され、その年の著名アワードGoTY(Game of The Year)3冠、開発者が選ぶ最高ゲーム「GDCアワード」など賞を総ナメにした名作。〈縄文文化〉がデザインモチーフとなった今作に添えられた音楽は、どこか日本的な懐かしさがありながらも、神秘的で崇高な響きで満ち溢れている。ゲーム音自体も生演奏ではあったが、このコンサートでは断片的だった音楽がメドレーとして再構築され、また、オカリナ(ホンヤミカコ)とクロマティックアコーディオン(津花幸嗣)が加わっており、より世界観に没入することができる。司会も今作のゼルダ役を演じた嶋村侑だったことで曲間すらもハイラルの大地にいるような心地よさが続く。

 他にも「神々のトライフォース」「夢をみる島」「時のオカリナ」など歴代ゼルダシリーズの中でも特に人気の高かった作品や「ゼルダの伝説メインテーマ」の曲も演奏され、32年という歴史の長さを改めて実感させられる。

 そしてサプライズは、初回数量限定生産盤同梱Blu-rayに収録されているアンコールでの近藤浩治氏のピアノによるゼルダの伝説メドレー。メディア露出が特に少ない彼の映像、演奏音源はファンにとっては非常に貴重な資料にもなるだろう。