INTERVIEW

ユップ・ベヴィン『Henosis』 3部作を締めくくる新作は、未知の領域へと踏み出す壮大な旅のはじまり

©Rina Asahi+cyando

 

3部作を締めくくる新作は、未知の領域へと踏み出す壮大な旅のはじまり

 街の喧騒のなか、イヤフォンから彼のピアノが流れてきた途端、目の前に透明なバリアが張られ、外界から自分を守ってくれているような心地になる。私にとってユップ・ベヴィンの音楽はそういう存在だ。ストリーミングで驚異的な再生回数を誇る彼の音楽は、現代社会に生きる我々が必要とする安らぎや瞑想の時間を与えてくれるものでもある。そんなユップがドイツ・グラモフォンからリリースする3rdアルバム『ヘノシス』は、1st『ソリプシズム』、2nd『プリヘンション』からなる3部作を締めくくる作品である。「1stアルバムは“個”に焦点を当てて作りましたが、2ndはそこからズームアウトして“人間”という存在をテーマにしました。さらにそこから“宇宙”にまで広げていったのが今作です。ここでいう宇宙とは、地球の外に広がる空間だけでなく、自分自身の中にある世界、さらには人間や自然を取り囲む想像を超えた次元のシステムといったものをイメージしています。形のあるものもないものも、すべては繋がっていると思うのです」

JOEP BEVING Henosis DG Deutsche Grammophon(2019)

 壮大なテーマを表現すべく、今作ではピアノ以外にも初の試みとしてオーケストラや弦楽アンサンブル、合唱、エレクトロニクス、モジュラーシンセサイザーなどが使われている。しかし彼の音楽の魅力である静謐な美しさは、アップライト・ピアノ1台で作られていた前作までと変わることはない。「そう感じていただけると、とても嬉しいです。とはいえひとりで部屋に籠って録音するのとは違い、難しい部分も多々ありました。たとえば私は前作から432Hzという周波数で録音しているのですが、ほかの楽器と合わせるときに苦労しましたね。432Hzは、一般的な440Hzよりも心の中に響いてくるような、音楽の中に入っていくような感覚を得られるのです」

 ピアノ曲を書きはじめる前は、ジャズやエレクトロニック・ミュージックを聴いたり演奏していたりしていたという。「ジャズは非常に多くの音から構成されていますよね。そういった音楽を演奏していくうちに、必要のない音を省いていくことを覚えました。そうしてだんだんとシンプルな音楽に辿り着いて、結果的にサティやドビュッシーにも通じるクラシカルな領域へと繋がっていったように思います」

 CD2枚分の長大なアルバムには、ギリシャの哲学や神話に出てくる言葉などを用いた暗示的なタイトルの曲が並ぶ。「アルバム全体を通して、究極の愛と真実を求めて違う次元へと向かう旅というストーリーを伝えたいと思いました。各曲のタイトルには私からのちょっとしたメッセージが隠されていますが、ここではあえて言わないので、皆さんで発見していただければと」

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