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“Summertime”のキーマン、小袋成彬

 昨年のファースト・アルバム『分離派の夏』が〈宇多田ヒカルのプロデュース〉というトピックも含めて話題となり、これまで彼を知らなかった層からも注目を集めることになった小袋成彬。資料によれば、もともと今回の“Summertime”は歌唱も含めて彼へのオファーから始まった話とのことだが、〈華のある二人が歌ったほうがより素晴らしいものになる〉という彼の判断からRIRIとKEIJUを交えたスペシャルなトリオ作品に発展したという。

 そんな小袋はN.O.R.K.(2015年に解散)のヴォーカリストとして活動を始め、クリエイター集団のTokyo Recordingsを率いるプロデューサー/ソングライターとしてここ数年で評価を勝ち取ってきた人である。水曜日のカンパネラやKeishi Tanaka、BOMI、Capeson、柴咲コウ、adieu、ロザリーナ、iri、SIRUP、そして宇多田ヒカル……と、その仕事歴は多岐に渡るものだが、単に流行を咀嚼するのではなく、そこに己の作家性で引っ掛かりを残すアプローチは、特に文学的な薫りの漂うソロ作を強く印象づけた。

 今年に入ってロンドンに移住した彼はTokyo Recordingsの新レーベル=ASEVERを設立し、すでにインドネシアのビートメイカーであるpxzvcを送り出している。そうしたアクションがどのようなうねりを作り出していくのか、またRIRIやKEIJUと交わってくる機会があるのかも含め、小袋の動きからは今後も目が離せなさそうだ。 *香椎 恵

 

小袋成彬の2018年作『分離派の夏』(エピック)、Capesonの2016年作『HIRAETH』(Tokyo Recordings)、BOMIの2016年作『A_B』(Bad News)、adieuの2017年のシングル“ナラタージュ”(ソニー)、iriの2018年作『Juice』(Colourful)、ロザリーナの2018年のシングル“タラレバ流星群”(ソニー)、宇多田ヒカルの2018年作『初恋』(エピック)、SIRUPの2019年作『FEEL GOOD』(A.S.A.B)