INTERVIEW

映画「長いお別れ」 松原智恵子が語る〈大きくなったとき、お父さんお母さんをこういう風に支えていこうと思っていただけたら〉

映画「長いお別れ」 松原智恵子が語る〈大きくなったとき、お父さんお母さんをこういう風に支えていこうと思っていただけたら〉

「自分も大きくなったときは、お父さんお母さんをこういう風に支えていこうと思っていただけたら」

 日本映画の黄金期とも重なる60年代の日活全盛期を“日活三人娘”として支え、これまで出演した映画は130本を超える大女優・松原智恵子。今なお艶のある可憐な魅力を放ち、16年にはデビュー55周年記念主演作『ゆずの葉ゆれて』で第1回ソチ国際映画祭で主演女優賞を受賞。17年には毎日新聞コンクールで田中絹代賞を受賞するなど、今なお第一線で活躍し続けている。映画『長いお別れ』では、山﨑努扮する認知症を患った夫・昇平を、「最後まで私が面倒をみる」と娘に宣言し実行する妻・曜子を演じた。

 「年齢的に近いせいか、台本を読んで“こういうことが自分にも起こりうる”とドーンと重く響いてしまって。そうしたら監督に『そんな風に捉えたらダメ。もっと前向きに捉えてください』と言われました」

 監督は、初の商業映画監督作『湯を沸かすほどの熱い愛』で数々の賞を受賞した中野量太。本作が第2作目となる若手ルーキーだが、実に堂々とした監督ぶりだったという。

 「お母さまが私と同い年らしいのですが、母親に物おじなんてしませんから。私も久々に監督から台詞の言い回しについて『違います、もっとスッと言って』などと何度も注意されました。突き詰めて役作りをされる山﨑さんに対しても同様で、撮影中に山﨑さんと意見交換されながら、監督の思いをしっかりと伝えていましたね」

 松原自身はこれまで役づくりで悩んだことも、監督とイメージが合わずに擦り合わせを行った経験もないと語る。「みなさん私に合った役をオファーしてくださるから…」とはにかむが、それこそが往年の大女優たる所以だろう。今風の言葉で言えば“当て書き”だが、松原を想定して脚本が書かれ、映画が作られた、そんな時代を生きて来た女優なのだ。そして今もそれが通用し求められる、稀有な存在感の持ち主と言えよう。さて、現場では娘役の竹内結子・蒼井優と三姉妹のようだった、と監督。さらに末の妹が松原だ、と。

 「みなさんお若いのにしっかりしていて、お芝居がお上手。竹内さんは“ふぁ~っ”と感情が入られる。対して蒼井さんはドンとしていらっしゃる。全くタイプが違いますが、本当にお上手。対して私はいつになっても上手くならず、2人を前に『う~ん』って(笑)」

 今なお瑞々しさに満ちる、そんな松原の魅力が、認知症の介護という重くなりがちな役回りをユーモラスで愛のある、だが説得力もある曜子という人物像に落とし込んだのだ。

 「曜子は、父・昇平さんを好きなのはもちろんですが、とても尊敬もしていると思いました。だからこそいつまでも、どんな時でも、認知症になっても昇平さんを思いやる気持ちを忘れない。そんな気持ちを持ち続けて演じました。どんどん核家族になっている中、親子や夫婦関係の真の温かさ、強さを捉えた作品です。私自身も本作を通して改めて知ったことが多いのですが、これからの人生、曜子さんのような人でありたい、と思いました」

 


松原智恵子 (Chieko Matsubara)
1945年1月6日生まれ。愛知県名古屋市出身。60年、高校在学中にミス16歳に選ばれ、翌61年1月、日活映画に入社。『明日に向かって突っ走れ』でのヒロインデビューを皮切りに、数多くのヒロインを演じる。吉永小百合、和泉雅子と共に「日活三人娘」とも呼ばれ、日本映画の黄金期を支えた。4月から放送の倉本聡氏作、テレビ朝日開局60周年記念作品「やすらぎの刻~道」(19~20)に出演する。

 


映画「長いお別れ」
監督&脚本:中野量太
原作:中島京子『長いお別れ』(文春文庫刊)
音楽:渡邊崇 主題歌:優河「めぐる」(Pヴァイン・レコード)
出演:蒼井優/竹内結子/松原智恵子/山﨑努/北村有起哉/中村倫也/杉田雷麟/他
配給:アスミック・エース (2018年 日本 127分) 
◎5/31(金) 全国ロードショー 
nagaiowakare.asmik-ace.co.jp/

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