生誕150年! フランス近代の独創的な作曲家、アルベール・ルーセルの全貌を明らかにする好企画!

 今年がアニヴァーサリー・イヤーの作曲家の中で、少しマイナーだが忘れてはいけないのがフランス近代の作曲家、アルベール・ルーセル(1869-1937)の生誕150年。意識してCDを集めるなどしないと全貌が見えてこない作曲家だけに、交響曲からオペラ、バレエ、吹奏楽まであらゆるジャンルを網羅してのボックス化は有り難い。ジャン・マルティノン、シャルル・ミュンシュ、ピエール・デルヴォー、ジャン・ドワイアン、ピエール・ドゥーカンといったフランスの名匠たちの演奏を集めたワーナーの企画力に拍手を送ろう。(デルヴォー、ドワイアン、ドゥーカンは初CD化音源、さらにルーセルの自作自演まで収録されている)

VARIOUS ARTISTS Albert Roussel Edition Erato(2019)

 スコラ・カントルムでダンディに師事し、ドビュッシーらの印象主義音楽やストラヴィンスキーのバーバリズムにも強い影響を受けたルーセル。こうして彼の音楽をまとめて聴くと、ジャンルの偏りなく注目すべき作品が多いのに驚く。さまざまな情景や雰囲気を見事に音化するみずみずしい感性と、厳格な理論、形式へのこだわりが両立する独創的な作風を味わうには、4つの交響曲を聴くのがよいだろう。ルーセルの交響曲というと第3番・第4番が有名だが、デュトワ指揮の第1番「森の詩」も実に美しい。また当初交響曲第2番に使われるはずだった音楽《春の祭りに寄せて》や、精妙、清澄といった形容がぴったりの《セレナード》も必聴。フランスの作曲家ロラン=マニュエルはルーセルの音楽について「足よりも翼を使って」「低音のない音楽を作曲するという離れ業に成功した」と指摘しているが、その特徴は交響曲のスケルツォやバレエ、歌曲など、いたるところで確認できる。

 ちなみにボックスの表紙に写っているのは、ファーブル昆虫記に基づくバレエ《蜘蛛の饗宴》制作のためにフィールドワークを行う作曲家本人の姿。ルーセルの中では知名度の高い作品だが、実際の蜘蛛の観察までしていたとは知らなかった。