Photo by Takuo Sato

「レジェンドと奏でる、スピリチュアルなヴァイブレーションの音楽を体感してほしい」

 現代最高峰のオルガン・プレイヤーの一人、ジョーイ・デフランセスコの最新作『In The Key Of The Universe』は、スピリチュアル・ジャズのパイオニアである、ファラオ・サンダース(テナー・サックス/ヴォーカル)をゲストに迎え、自己の内的世界を探求する新境地を拓いた野心作だ。クリス・ボティ・グループで来日中のデフランセスコにニュー・アルバムの背景を問う。

JOEY DEFRANCESCO 『In The Key Of The Universe』 Mack Avenue/キング(2019)

 フィラデルフィア郊外のスプリングフィールドのジャズ・ミュージシャン一家に生まれ育ったデフランセスコは、5歳にしてサックス・プレイヤーの父と初めてステージを踏む。10歳の時にフィラデルフィア・ジャズのレジェンド、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラムス)、ハンク・モブレー(テナー・サックス)と共演し、早熟の天才ぶりを発揮した。16歳でメジャーのコロンビア・レコードと契約、晩年のマイルス・デイヴィス(トランペット)・グループに起用されたのは17歳だった。47歳にして、すでに40年を超える演奏経験を誇る。

 「キャリアの初期から、マイルスを筆頭にジョン・マクラフリン(ギター)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラムス)、パット・マルティーノ(ギター)といったレジェンドと演奏を共にする幸運に恵まれてきた。彼らの姿を見て、多くのことを学んだよ。私がプレイする音楽は、その時期の自分自身の全てを投影している。スピリチュアルな音楽への移行は、自分の音楽的だけでなく人間的な成熟を表していると思う」

 ファラオ・サンダースの69年の問題作『Karma』は、デフランセスコの長年のフェイヴァリット・アルバムだそうだ。

 「2004年のウィーンでのライヴで、近くで演奏していたファラオが来てくれて、数曲シット・イン(飛び入り)してくれたことがあった。素晴らしい体験で、これをきっかけに私の音楽はスピリチュアル色を帯び始める。そして14年を経てついにファラオと一緒に録音するチャンスが巡ってきた。ドラムスには『Karma』のオリジナル・レコーディング・メンバーで、パット・マルティーノのグループでも一緒だったビリー・ハートに来ていただいた。私は、ある音楽のスタイルを追求するときに、必ずその源流を遡ることを心がけている。この2人のおかげで完成した、ストロングなグルーヴの上で、フリーなハーモニーを醸し出しながら美しいメロディが奏でられる、宇宙のスピリチュアルなヴァイブレーションの音楽を体感してほしい」

 ジョーイ・デフランセスコのファラオ・サンダース、ビリー・ハートを擁したグループでの来日が、待望される。