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でんぱ組.inc 『いのちのよろこび』 新しく生まれ変わったでんぱ組.incのブランニューな姿

でんぱ組.inc 『いのちのよろこび』 新しく生まれ変わったでんぱ組.incのブランニューな姿

[English Transration]

でんぱ組.incは今年1月の武道館公演で夢眠ねむが卒業し、新たな6人体制になった。その新体制で初となるニュー・シングルが『いのちのよろこび』だ。表題曲は、これまで彼女たちの代表曲を多く手がけているWiennersの玉屋2060%が作詞・作曲・編曲で、プロデュースは久々にもふくちゃん(福嶋麻衣子)が担当するという、でんぱ組.incの真骨頂といえる布陣で制作されている。

でんぱ組.inc いのちのよろこび MEME TOKYO(2019)

6人全員が順繰りに〈One love〉と歌うコーラスから始まり、やたらとテンションの高いパーカッションを軸とする洪水のような怒濤のアフロ・ファンク・ビートが繰り出され、その上でメンバーがパワフルなヴォーカルを次々に聴かせていく。曲の中盤では古川未鈴の〈腹の底から声出せ〉を合図に〈ウッハ! ヤー!〉という強烈な掛け声が繰り返され、オペラ・ヴォイス的なコーラス・ワークもあり、そしてラストは〈Oh one life, one love〉の合唱コーラスでピースフルかつハッピーに終わるという、情報量ありまくり要素てんこ盛りなすさまじい曲である。生命力にあふれた原始的ネイチャー・ファンキー・ポップ、とでもいえばいいだろうか。

玉屋はこうした、親しみやすいキャッチーなメロディーと民族的グルーヴをくっつけるという、〈無国籍ミクスチャー・ポップ〉的な手法が得意技のひとつでもあるから、彼のクリエイターとしての才能やセンスが存分に発揮された曲といえるだろう。ただそれだけではなく、この曲は“いのちのよろこび”というタイトルが示すように、〈人類讃歌〉とでもいうような壮大なスケール感の歌詞もすごい。原始からの人類の進化を描いていく中で、地球に対する愛、大地への感謝、争いごとの悲しさ、生きることの喜び、そうしたとてもプリミティヴな表現が並んでいる。いわば世界平和への祈りをを込めたような一大メッセージ・ソングなのだ。それをでんぱ組.incらしいちょっとおちゃらけた言葉とおおらかな歌声で聴かせていて、彼女たちに程良くフィットする曲に仕上げているのも絶妙。なにかと世知辛く暗いニュースが相次ぐ昨今の日本だからこそ、今リリースされるのが意義深くも思える。

この曲はヴィジュアル面も重要で、ジャケット写真やMVでは、メンバーがいわゆるガングロギャルをゴールドにアップデートさせたようなブッ飛びメイクを施し、極彩色の奇天烈センスな衣装とともに強烈なインパクトを放っている。山崎連基監督によるMVの内容も、そのガングロメイク、たまごっち、電話BOXの貼りチラシといった〈平成感〉的な要素を散りばめつつ、メンバーの原始的エネルギーが伝わってくるような仕上がりだ。またすでに披露されているライヴだと〈でんでんサーカス〉と名付けられた数人のパフォーマーが登場し、ジャグリングなどのアクロバティックな曲芸を見せた後、メンバーとともに入り乱れてカオスでエンターテインメントなパフォーマンスになっている。そうした全部をひっくるめて、これまでのでんぱ組.incにはなかった新鮮なパワーを表す曲なのだ。

一方、カップリングの“形而上学的、魔法”は、現在15歳という女性シンガーソングライターの諭吉佳作/men(ユキチカサクメン)が作詞・作曲を手がけている。すでにその天才的かつ独創的な作風で話題になっていた人だ。4ビート主体のジャズ・ファンク的な演奏に乗せて、メンバーが珍しくシリアスなトーンでリレー・ヴォーカルを聴かせていき、ソロ・パートだけでユニゾン・コーラスがないという異色曲。特に印象的な歌詞は〈わたし〉という自己の心象風景を描いていくような、イマジネイティヴで文学的な言葉が並び、メンバーの繊細な内面が浮き彫りになっているようにも感じられる。摩訶不思議でストレンジでクールな、これもまた新機軸の曲といえるだろう。

でんぱ組.inc 子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡ TOY'S FACTORY(2019)

また『いのちのよろこび』の発売に先駆けて、5月25日に突如として清竜人の書き下ろし曲2曲を収録したシングル『子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡』が配信限定で緊急リリースされており、こちらにも触れておきたい。表題曲の“子♡丑♡寅♡卯♡辰♡巳♡”は久々の正統電波ソングといえるわちゃわちゃ曲で、超高速ビートに乗せてメンバーが超早口ラップを繰り出していくのが圧巻。それでいて清竜人らしいキュートでファンタジックなアイドル・ソングに着地しているのが見事だ。カップリングの“秋の葉の原っぱで”は、それとは正反対の静かなバラード曲。ピアノとストリングスだけの演奏で美しいハーモニーを聴かせ、ラストは無伴奏のアカペラ・コーラスで終わるというのも深い余韻を残す。『いのちのよろこび』の2曲とあわせ、新曲計4曲がすべて異なるタイプの曲ということになる。

新たな6人体制になってからのでんぱ組.incは、すでに3月から4月にかけて新体制初のワンマン・ツアーを行っているが、そこで見せた彼女たちのパフォーマンスは、まるで初心に返ったようなフレッシュなものだった。各メンバーがそれぞれのキャラを存分に発揮してこれまで以上にイキイキと歌い踊り、最も新しいメンバーの鹿目凛と根本凪の見せ場も増え、グループがまた新しく生まれ変わったということを強く印象づけていた。それは夢眠ねむの不在という大きなマイナス要素をプラスに転じさせるべく、現メンバーの個性を前面に出して底上げを図り、これからも進んでいくという強い意思表示のように思えたのだ。

そうした中で今回の新曲はどれも新たな驚きにあふれていて、まさにブランニューなでんぱ組.incの姿といえるだろう。思えば彼女たちの音楽とは、これまでも過去に築き上げたスタイルやその時々の時流などに縛られることなく、果敢に新しい冒険を提示し続けてきた。今回もそれをいっそう更新していて、今後の彼女たちもますますおもしろくなっていきそうである。『いのちのよろこび』のリリースと同時に、6月26日(水)からは全国ホール・ツアーがスタートするが、そこで彼女たちがどんな新しい姿を見せるのか楽しみだ。

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