2007年結成、ベース/ヴォーカルのHaru(Haruhiko Higuchi)とドラムスのMasumi(Masumi Sakurai)から成るロック・デュオ、MOJAが6曲入りの通算5枚目のアルバム『Be Quiet』をリリースした。

結成当初にNYでの〈CMJ〉へ出演し〈Global Battle of the Bands〉では3位に入賞。その後も〈SXSW Texas〉や〈FOCUS Wales〉などのフェスに出演するなど、海外でのライヴ活動を積極的に行ってきたMOJA。各国のアーティストやオーディエンスに認められてきた凶暴かつ緻密なライヴ・パフォーマンスが大きな魅力のひとつである彼らだが、「音源はライヴを超えろ!が永遠のテーマ」だと言い、『Be Quiet』はベース/ヴォーカル/ドラムスというソリッドな構成はそのままに新たな試みにも挑戦しながらMOJAサウンドを更新した、怒涛の全20分となっている。

今回はそんなMOJAに、メール・インタヴューを実施。アルバムとその背景にあるものについて、いくつかの質問に答えてもらった。記事末尾には試聴リンクと共に、一曲ごとにもらったコメントを掲載しているので、ぜひ音源を聴きながらチェックしてみてほしい。

(左から)Masumi、Haru

大都市より地方都市のほうがダイレクトに伝わる気がする

――結成から12年、ファースト・アルバム『MOJA』のリリースからはちょうど10年ですね。MOJAにとって、この10年はどういう時間でしたか? また、バンドを取り巻く環境/音楽シーンはどう変化したと感じますか?

Haru「MOJA としては試行錯誤の10年という感じです。環境やシーンは、振り返ると、人が音楽に求める事も変わって来たのでは?と思います」

Masumi「ベース&ヴォイスとドラムの2Pだからこそ出せる音。正に! MOJAサウンドを試行錯誤してきました。そして、今後もMOJAが続く限りそうなると思います。あと、やはりこの10年で音楽を聴く人が減ったのは感じますね。個性的でかっこいいバンドも減りました。バンドが同一化してる気がする」

『Be Quiet』収録曲“Bad Monkey”
 

――日本を含め、いちばん手ごたえを感じる国や街は? その理由はなんだと思いますか?

Haru「大都市よりウェールズやケルン、ボローニャ、スロベニア、トリエステといった地方都市のほうが手応えを感じます。最近では昨年の台南や先月行ったエストニアのタリンなどもライヴ後の反応が大きく、手応えを感じました。

個人的な感触になりますが、海外の大都市のメイン・ストリームな音楽やアートにメジャー志向をより強く感じます。世界的な流行りのラップ・シーンなどにはやはり反応が多くありますが、バンド・サウンドなどはかなり衰退してる感じを受けます。その点、地方都市は多様な音楽スタイルへの好奇心や価値観がまだ残っていると感じます。そして大都市より小さなコミュニティーだからこそ、よりダイレクトに伝わっていくのでは?と思います」

Masumi「同上」

――MOJAにとってのターニング・ポイントはありましたか? 結成から手ごたえを感じた瞬間は?

Haru「ロンドンでのバンド・コンテスト(〈Global Battle of the Bands〉)です。それが本格的に海外での活動を始めるきっかけになりました。世界中から集まった人たちの反応を初めて直接感じられたので、自分たちの音楽への確信が持てました。逆に、〈サマソニ〉でのコンテスト(2009年の〈出れんの?!サマソニ?!〉)で MOJA を支持してくれる人たちが日本でも多くいてくれている事を実感できて、国内でも活動をしていこうという思いになりました」

Masumi「私はもうちょっと遡って、MOJAの曲作りの原点となった出来事ですね。MOJAがまだライヴハウスでのライヴをそこまで頻繁にやっていなかった頃、ストリート・ライヴをよくやっていて、その時、普通の曲をやっていても素通りされていたのが、ジャム・セッションを始めた途端、物凄い人だかりになって……。それをきっかけに、ジャム・セッション的な曲作りの方法を思いつきました」

 

どちらかが楽しいと思わない曲はすべて破棄

――MOJAのポリシー/決まり事はありますか?

Haru「決まり事は特にないですが、ライヴでは打ち込みやルーパーを使わず2人の瞬間的な音楽を演奏する、というのは一貫しています」

Masumi「曲作りでは、どちらかが楽しいと思わない曲はすべて破棄しています。やはり、曲、演奏は奏者の内面がすべて出るので。そこに、楽しくないという気持ちや嘘があっては、リスナーもおもしろくないでしょうから」

――いま気になるミュージシャンを教えてください。

Haru「ドイツのファーマコンやブラックミディ、トゥー・ピープルなどです。細野晴臣さんの新しいアルバムも最近よく聴いています」

ブラック・ミディが5月にリリースしたシングル“Talking Heads”
 

ファーマコンの2017年作『Contact』
 

Masumi「いまは特にないです。少し前は映画の影響で、クイーン。あと、玉置浩二さんにハマってました。歌上手い~~~。玉置浩二さんは曲というより、彼のヴォーカリストとしての表現力が素晴らしいと思っていて、特に、別のアーティストの曲を歌っている時の彼は、本当に歌のテクニックと表現力が際立ってます。持ち主以上にその曲を理解し、表現しているのです。他人の曲ジャックです! YouTubeで観て知ったのですが、「玉置浩二ショー」という番組があったようで、毎回アーティストを招いて互いの歌を歌い合ったりしていたみたいで。それがどれも本当に素晴らしいです」

※NHK BSプレミアムにて放送していた音楽バラエティ番組

――シンパシーを感じる、リスペクトするミュージシャンはいますか?

Haru「Masumiさん」

Masumi「私はいないかな。もちろん、〈すごいな~〉と思うミュージシャンはHaruを含めてたくさんいます。ただ、信仰的にリスペクトするミュージシャンはいないです」

――音楽以外で、いま気になること/ものを教えてください。

Haru「ツアーやレコーディングで最近よく行くので、いまのUKの政治などは気になります。当然、現在の生活基盤がある日本の事や隣国の事も気になります」

Masumi「私は、F1の行方が気になります。レッドブルどうなるんだろう?」

――噂で、Masumiさんはカー・アクションができるとお聞きしました。本当であれば、それについて教えてください。

Masumi「カー・アクションというか、趣味でサーキット走行を楽しんでいます。グリップもドリフトもやってます~。昔から車の運転は好きだったのですが、ある日、自家用車でもサーキットを走れると知り、勇気を出して走行会に参加してからハマってます。車は青のS15です」

――互いを他己紹介していただけますか?

Haru「ドラムに関してはテクニカルなことや多彩な技は披露していないけど、人を惹きつけるドラムを叩きます。人間的にもまったく同じだと思います(笑)?」

Masumi「アマノジャクです。めちゃめちゃアマノジャクです(初対面の人などにはまったくそんなそぶりを見せませんが……)。でもそれがMOJAの、特に曲に反映されてます。ジャンルレスな曲調はアマノジャクのお陰です。でも、〈基本的には〉優しく、心配りのできるいいヤツです」

 

次のMOJA

――作詞/作曲はふたりでどのように役割分担するのでしょう?

Haru「役割分担はないです」

Masumi「MOJAの曲作りは基本ジャム・セッションで展開していくのですが、今回のアルバムは趣向を変え、“Too Much”以外はHaruが大まかな流れを作ってきて、そこからドラム・パターンやアレンジを加えました」

――言葉遊びのような、散文のような歌詞。詞で伝えたいことは明確にありますか?

Haru「ありません」

――レコーディング/ミキシングをBO NINGENらを手掛けたトビン・ジョーンズ、マスタリングをジャンキーXLやトラヴィスらを手掛けたフィル・ジョアニデスに依頼した理由は?

Haru「MOJA が欲している〈低音域〉が一番出るのはロンドンだと! それと予算/レコーディングのクオリティーや環境など総合的な判断で、彼らにお願いしました」

Masumi「低音、立体的な音の組み立て、実験的なレコーディング(今回は教会)を叶えてくれるのは、彼らしかいなかった」

トビンと
 

――教会でのレコーディングについて教えてください。

Haru「大きな残響音を録りたいとリクエストしたらエンジニアさんが探してきてくれました。街の教会をイメージしていたのですが、かなり大きな教会を借りてくれて(笑)。 優秀な残響ソフトでも同じような効果は出せるのかもしれませんが、教会という環境で響く残響音を感じながら演奏するテンションが、録音した音にもはっきり録れました。 VRやヴァーチャルではこの部分が絶対に不可能なので、そこは拘りです」

Masumi「以前、THE PARK STUDIOでレコーディングしたときに、遊びで、併設されているスケートパークでドラムを録ったらナチュラル・リヴァーブが素晴らしくて。今回はスケートパークをメインで録りたいと思ったら、スケートパークがなくなっていた……。

そこで、ナチュラル・リヴァーブが得られる、お城か教会でレコーディングしたいと思い、トビンにお願いしたら、教会を探してきてくれたんです。かなり大きな教会で、響きすぎないか心配だったのですが、天井部分に木材等があったお陰か、鳴りすぎることはなく思い通りの音が撮れました。今回はドラムだけのレコーディングだったのですが、祭壇のど真ん中にドラム・セットを置き、そこでドラム演奏!!! 気持ちいい~~~くらい鳴ってました」

教会でのレコーディング風景
 
レコーディングを行った教会の外観
 

――『Be Quiet』、リリースされてみての手ごたえは?

Masumi「無駄な部分が削ぎ落とされた、〈次のMOJA〉へ進むことができたアルバムです」

Haru「自分的にはいままでとは違う風を感じるアルバムです。聴いてくれる人たちの反応にドキドキしてます(笑)」

 


『Be Quiet』収録曲にMOJAが一言ずつコメント!
試聴リンクと共にお楽しみください。

MOJA Be Quiet ミディ・クリエイティブ(2019)

 “Bad Monky”

Haru「出来上がった過程を覚えてないぐらいあっという間に出来ました!」

Masumi「最後の最後まで色々決まらなかった曲です。レコーディングに出発する直前に完成した曲です」

“To Be It”

Haru「教会で録音したドラムの間奏の響きが素晴らしい!」

Masumi「前半のベースとドラムのユニゾンが楽しい曲」

“Magical”

Haru「レコーディング最終日の朝まで夜通しかかってヴォーカルを録音した思い出の曲!」

Masumi「念願のバスドラ連打の曲です」

“Too Much”

Haru「このアルバム・セッションで最初に作った曲!」

“Color”

Haru「2ndパートの感じはずっとやってみたかったイメージ!」

Masumi「イントロのドラム・パターンから作った曲です(MOJAはドラム・パターンから完成する曲は少ない)」

“Cheers Blud”

Haru「隠れた名曲!」

Masumi「今作の中では、展開が多い曲」

 


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6月14日(金)台湾
台北/小地方

6月15日(土)台湾
高雄/百樂門酒館