INTERVIEW

マリ・サムエルセン『マリ』 現代的で斬新かつ、訴求力のあるDGデビュー盤登場

©Stefan Hoederath

現代的で斬新かつ、訴求力のあるDGデビュー盤登場

 今年3月〈すみだ平和祈念音楽祭2019〉で日本初演されたマックス・リヒター「メモリーハウス」にソリストとして参加。ドイツ・グラモフォン(DG)の新コンセプト・イヴェント〈Yellow Lounge Tokyo 2019〉でも鮮烈な演奏を披露して話題を集めたノルウェー生まれのヴァイオリン奏者。待望のDGデビュー・アルバム(2枚組)が遂に発売された。

MARI SAMUELSEN マリ Deutsche Grammophon/ユニバーサル(2019)

 北欧の自然に育まれ、よく森の中でも演奏していたという彼女。耳を傾けると美しい風景が広がるような本盤『マリ』には、バッハ作品に加えて現代をリードする様々なコンポーザーの楽曲が収録されている。

 「私にとってバッハは全ての音楽の源。そこから現代の敬愛する作曲家たちに自ずと繋がっている。どれもが自分の心の中の声であり、怒りや哀しみ、愛といった感情を聴き手に伝えるもの。そういう意味では個人的に物語を旅するようなアルバムとも云えるわね」

 現在の演奏レパートリーの中心をなすリヒター作品は、日本でも人気を呼んだHBOドラマ「LEFTOVERS/残された世界」のサントラ曲に、チェロの曲を彼女のためにアレンジした《ヴォーカル》、そして「メモリーハウス」から単独で演奏される機会も多い《ノヴェンバー》とバッハの無伴奏曲にオマージュを捧げた《フラグメント》の2曲。4トラックながら深い印象を残す。

 「『25%のヴィヴァルディ』をアムステルダムで聴いてすぐさま楽屋を訪ねたの(笑)。以来、彼のファンで普段から私の聴くプレイリストの中心でもある」

 先行シングルとしてデジタル配信されたノスタルジックな佳曲《バイ・ディス・リヴァー》のブライアン・イーノ、「浜辺のアインシュタイン」のフィリップ・グラスなどお馴染みの顔ぶれにも魅了されるが、惜しくも2018年に48歳で世を去ったアイスランドの天才、ヨハン・ヨハンソンの作品からの2曲も嬉しい。

 「映画『メッセージ』の《異星言語ヘプタポッドB》はエレクトリック色が強くてレコーディング的に難曲だったけれど弾くのは楽しかった。一方の《おやすみ、白夜よ》(『オルフェ』より)も元々は、昼と夜で人々が隔てられたディストピアな未来を描いたSF映画(メキシコ)のために書かれた曲だと聞いているわ」

 他にも「ギドン・クレーメルの演奏を聴いて弾いてみたくなった」というヴラディーミル・マルティノフ《カム・イン!》や「天使の視点で世界(オーケストラ)を見おろしているような曲想」のペトリス・ヴァスクス《孤独な天使 -ヴァイオリンと弦楽合奏のための瞑想》などで、知られざる作曲家への扉を開く。

 「私が目指すサウンドの詰まったポートレート。またすぐ日本で演奏したい。〈マリちゃん〉をよろしくね」

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