COLUMN

〈横浜音祭り 2019〉3年に一度、横浜で開催される日本最大級の音楽フェスに、注目の作曲家アンナ・メレディスによるAnnoが日本初登場

©Hugh Carswell 2016

3年に一度、横浜で開催される、日本最大級の音楽フェス!
古典からアイドルまでオールジャンルの音楽で溢れるハマに、注目の作曲家アンナ・メレディスによるAnnoが日本初上陸!

 18の区からなる横浜市は、日本の市町村のなかでもっとも多くの人口を誇る政令指定都市。その規模の大きさゆえに、横浜に対して抱くイメージは人によってさまざまかもしれない。みなとみらいや山下公園をはじめとする観光地、東京に通勤する人が暮らすベッドタウン、京浜工業地帯の一角を担う工業都市……横浜にはいくつもの「顔」がある。また、ペリー来航により1859年に開港して以来、多くの外国人が住んだ横浜には西洋文化が花開き、中国からやってきた商人たちによって現在の中華街が形成されていった。私は幼少時を横浜で過ごしたが、誰に対してもオープンなハマっ子たちが暮らす街には、ほかにはない「風通しのよさ」があった。

 そんな横浜の多様性、多文化性を象徴するような音楽フェスティヴァルが、ここにご紹介する〈横浜音祭り〉である。横浜市は「現代アート」「ダンス」「音楽」という3つの分野の芸術フェスティヴァルを、それぞれ3年に1回ずつの周期で開催している(現代アートは横浜トリエンナーレ、ダンスはDance Dance Dance@YOKOHAMA、音楽は横浜音祭り)。2013年にスタートし、今年で3回目を迎える横浜音祭りは、9月15日から11月15日までの2ヶ月間にわたり、300を超えるプログラムが組まれる日本最大級の音楽フェスティヴァル。クラシックのみならずジャズ、ポップス、伝統音楽などオールジャンルで、会場は横浜市内全域におよぶ。

 たしかにラインナップを見ると、アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルハーモニー交響楽団による〈オープニングコンサート〉、映画監督の本広克行がプロデュースし、菅野祐悟と神奈川フィルハーモニー管弦楽団、ももいろクローバーZが共演する〈ヨコハマ・ポップス・オーケストラ〉など、ジャンルにとらわれないオリジナリティあふれるプログラムが並ぶ。

 なかでも、横浜音祭りらしさがもっともよく分かるプログラムが〈街に広がる音プロジェクト〉だろう。人々で賑わう週末を中心に開催される観覧無料のストリートライブで、クイーンズスクエアやランドマークプラザといった商業施設、元町ショッピングストリート、八景島シーパラダイス、駅前広場、公園など、市内のあらゆるオープンスペースが会場となる。まさに横浜の“街”そのものが舞台というわけだ。出演者も、アイドルグループの私立恵比寿中学、英国近衛軍楽隊、神奈川フィル、そしてプロ・アマチュアを問わない公募によるオールジャンルのアーティストなど多士済々。本音楽フェスティヴァルのディレクターを務める新井鷗子氏が述べるように、「音楽をインフラのように街の隅々にまで行きわたらせたい」という理念そのものがここにある。

 また、インフラという意味においては、18の区それぞれのホールを若手の実力派が巡る〈横浜18区コンサート〉、コンサートホールや教会、ミッションスクールなどに設置されたパイプオルガンの音色を味わうことができる〈パイプオルガンと横浜の街〉といったプログラムも興味深い。ふと目を向ければ、音楽はすぐ身のまわりにあふれているということを気づかせてくれる。

Anna Meredith ©Kate Bones

Scottish Ensemble ©Peter Dibdin

 ここでひとつ、本誌の読者にぴったりのプログラムをご紹介しておきたい。9月16日に赤レンガ倉庫で開催される、アンナ・メレディスとスコティッシュ・アンサンブルによる〈Anno〉である。メレディスはクラシックと電子音楽、双方の世界で活躍する作曲家。BBCスコティッシュ交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンスを務めるなどクラシック界で着々とキャリアを積み上げている一方、イギリスのMoshi Moshi Recordsからリリースされたデビュー・アルバム『Varmints』がピッチフォークで高く評価され、インディ・ポップやエクスペリメンタル、エレクトロニカ界隈のシーンでもその存在感を確かなものにしている。

ANNA MEREDITH Anno Moshi Moshi Records(2018)

 〈Anno〉はそれに続く2ndアルバムとしてリリースされた作品で、スコティッシュ・アンサンブルとともにヴィヴァルディの《四季》を再創造したもの。《四季》というとマックス・リヒターによるリコンポーズ作品が記憶に新しいが、メレディスの《四季》は原曲をそのままの形で生かしながら、より大胆にエレクトロニクスを取り入れ、ポップネスを獲得した作品だと言える。たとえば「春」では、フィールド・レコーディングされた鳥の声とヴァイオリンが鳴き交わしているところに破壊的な機械音が重なる。やがて下から突き上げるような激しいビートが加速してゆき、「春」が終わる。そのビートが身体に刻まれた後では、もはや「夏」の有名なヴァイオリンのフレーズをクラシック音楽としては聴けなくなってしまうのだ。横浜音祭りのステージでは、アンナの妹で映像作家のエレノア・メレディスが手がける映像が、客席を取り囲むように配置されたスクリーンに投影されるとのこと。美しい自然と現代文明が共存する「21世紀の四季」をインタラクティブに感じることができそうだ。

 かように多種多彩なプログラムが並ぶ横浜音祭りには、全体のカラーを決めるひとつのテーマは存在しない。主役である市民が楽しめる音楽ならばなんでもあり! その多様性こそが横浜らしさであり、あらゆる人に向けて音楽を開くことにつながってゆくのだろう。

 


LIVE INFORMATION

横浜音祭り2019
会期:9月15日(日)~11月15日(金)
会場:横浜市内全域
プログラムはこちらからチェック https://yokooto.jp/program/

横浜音祭り スコティッシュ・アンサンブル & アンナ・メレディス「Anno」
会期:9月16日(月・祝)13:00~、15:00~、19:00~開演
会場:横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
https://yokooto.jp/program-lp/anno/

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