NegiccoのKaede、初のソロ・ミニ・アルバム。先行リリースした“クラウドナイン”の佐藤優介(カメラ=万年筆)をはじめ、Lampの染谷太陽、櫛引彩香、advantage Lucy、空気公団の山崎ゆかりらが、人懐っこい歌声の彼女に相応しく普段着感覚の軽やかで優しい楽曲をコーディネート。〈じゃあ来週ね、うん、バイバイ〉と電話のやりとりを挿んだ曽我部恵一による“カエデの遠距離恋愛”なんて愛おしすぎて切ない。

 


NegiccoのかえぽことKaedeがソロでミニ・アルバム『深夜。あなたは今日を振り返り、また新しい朝だね。』をリリース。これがまた最っ高にしみる作品で、全ポップ・ファンに聴いてもらいたいものに仕上がっている。

アルバムはカメラ=万年筆(caméra-stylo)の佐藤優介が書いたシングル“クラウドナイン”に新曲5曲を加えた全6曲という内容。他のソングライターたちは、シンガー・ソングライターの櫛引彩香、advantage Lucyのアイコと石坂義晴、Lampの染谷大陽、曽我部恵一、空気公団の山崎ゆかり。クレジットだけで傑作だということがあらかじめ約束されたようなもの……。

吉田一郎不可触世界がアレンジした“あたらしい歌”は、ボサノヴァ風のイントロからさわやかなロックへとなめらかにスライドする見事なオープナー。“キラキラ”は〈恋はあせらず〉なビート・ポップス。染谷による“あなたは遠く”は、初期Lampの楽曲のような軽やかさで、フィル・スペクターっぽいカスタネットやティンパニ、柔らかい音色のシンセサイザーが印象的。

曽我部作曲、台風クラブ編曲の“カエデの遠距離恋愛”は、サニーデイ・サービスの『愛と笑いの夜』(97年)に入っていてもおかしくないような、切ないロック・ナンバー。そして、ストリングスに彩られた繊細でドラマティックな山崎の“飛花落葉”がアルバムを締めくくる。

センチメンタルでグッとくるアルバム・タイトルに、新潟・日本海の海辺で撮影されたジャケット写真。これだけでも最高だけれど、日本のポップスの職人たちが集った本作には、どこか80年代のアイドル歌謡や90年代J-Popの豊かさに通じる雰囲気がある。そんな厚みを感じさせながら、どこまでも優しいムードと肌触りで統一された軽やかなアルバムになっているのは、なによりKaedeの心地いい歌声が主役だからだろう。