INTERVIEW

北欧ポップの愛され集団、カックマダファッカに直撃! ノルウェーから世界を虜にできた理由を明かす

(左から)ピッシュ・ヴィンデネス、キッツ、アクセル・ヴィンデネス、スティ・コブラ、パス
 

ノルウェーが世界に誇る音楽都市ベルゲンから、結成15年目にして、カックマダファッカが初来日。本人たちにとって完全に想定外だったという、ソールドアウトした東京・代田FEVERでの初日公演を控えた彼らを楽屋に訪ねてみると、〈まさか売り切れるなんて!〉と目を丸くしている5人――アクセル・ヴィンデネス(ギター/ヴォーカル)、ピッシュ・ヴィンデネス(ヴォーカル/ギター)、スティ・コブラ (ベース)、パス(ドラムス)、キッツ(キーボード)――が待ち受けていた。

幼い頃からの友人で、クラシック音楽を背景に持つ彼らは、年季の入った音楽のプロである。専門知識とテクニック、そして旺盛な遊び心と少々のエキセントリシティーを、胸キュンながら骨は太い、万人に愛されるポップソングに落とし込んで、6枚のアルバムをこれまでに発表してきた。4月に登場した最新作『Diplomacy』はまさにそのひとつの完成形だったわけだが、本人たち曰く、地道な活動を経ていまバンドとしていちばんいい状態にあるそうで、実際ライヴでも百戦錬磨のケミストリーとショウマンシップを存分に見せつけてくれた。

明らかなリーダー格で、インタヴュー中、いい意味で野放図に話を展開させていたアクセルは、ステージでも強烈な存在感を放ち、彼と代わる代わるヴォーカルを担当するその弟ピッシュら他の4人も、それぞれにキャラの濃いプレイで、猛烈なテンションと熱量のパフォーマンスを披露。長く来日を待ったオーディエンスから随所で大合唱を引き出していたが、ともするとそんなオーディエンス以上に5人自身が楽しんでいるように見えた。

 

ノルウェーでは僕らのことを嫌いで引っ越した人までいるんだ

――現在進行しているツアーはキャリア最大規模のようですね。

アクセル・ヴィンデネス(ギター/ヴォーカル)「そうだね。僕らの場合、バンド誕生以来ずっと切れ目のないツアーを続けてきたようなもので、ひとつのツアーがいつ始まっていつ終わったのか明確に言えないところがあるんだけど(笑)、確かに今回は大規模で、こうして日本にも来ることができた。長年憧れの国だったから本当に嬉しいよ」

――そうなんですか?

アクセル「うん。とにかく日本といろいろな縁があるんだよ。例えばバンド名は、ニンテンドー ゲームキューブで僕とスティが『トニー・ホーク プロスケーター3』をやっていたときに生まれたんだ。使う名前が長いと、それだけ長くゲームを続けられるルールで、スティが咄嗟に〈kakkmaddafakka〉って言葉を思い付いた。何しろ14文字だからね! それに、僕らが最初に作った曲のひとつではマリオとドンキーコングについて歌っているし、ほぼ全メンバーが日本車に乗っているし(笑)。初来日公演がソールドアウトになったからには、この先何度も戻ってくるつもりだよ!」

――最初から海外進出には積極的だったんですか?

アクセル「そうだね。だからこそ英語で歌っているわけだし、何しろノルウェー語を話す人は500万人しかいない。世界を相手にしないとやっていけないから、早いうちから国外でツアーをしていたよ。特にドイツやスペインにはかなり大勢ファンがいるし、実はいちばんファンが多いのはメキシコだったりする。

それに、昔はノルウェーでは嫌われていたんだ(笑)。いまはみんな愛してくれているけど、要するに個性的だから、意見を割るんだよ。熱狂的に愛してくれる人たちがいる一方で、毛嫌する人もいる。最高だと思ってくれる人と、最悪だと思っている人しかいなくて、中間がないのさ。マジな話、僕らのことが嫌いなあまりに、遠くに引っ越した人もいるくらいなんだ(笑)。

最初にバンドとして大きな手応えを得たのも、外国にいたときだったしね。2008年にドイツの〈メルト!〉というフェスティヴァルに出演して、国外で公演したのは初めてだったんだけど、3000人くらいの前でプレイして、ものすごく盛り上がったんだよね。あのときに、〈いまは一文無しだけど、数年間はバンドに専念しよう。きっとなんとかなる〉と感じた。実際、なんとかなったよ」

 

実は音楽サラブレッドな5人

――そもそもメンバーが出会ったのは、10代の頃だそうですね。

アクセル「いや、スティと僕が会ったのは、彼が2歳のときなんだ。だから兄弟同然だよ。隣に住んでいて、僕はスティの兄貴と同い年で、いつも一緒に遊んでいた。キッツの家もすぐ近所だったよね」

キッツ(キーボード)「うん、6歳のときからの付き合いだよ。ピッシュと僕はチェロを習っていて、7歳の時に初舞台を一緒に踏んだんだ。子供たちが演奏を披露するコンサートで、ちゃんとギャラをもらって」

スティ・コブラ (ベース)「そして僕とアクセルは同じ先生のもとで、クラシック・ギターを勉強した」

アクセル「僕とピッシュの場合、両親共にクラシックのミュージシャンだから、子供の頃からそっちの教育を受けたんだ。父は大学教授でギターが専門、母はスズキ・メソードのヴァイオリン教師で、日系ノルウェー人のソノコ・ミリアム・シマノ・ヴェルデとか大勢の有名な演奏者を育てた。パスも、クラシックじゃないけど音楽学校でドラムを勉強しているし、スティのおじいちゃんはベルゲン大学の音楽学部にあたるグリーグ・アカデミーの創始者なんだよ。キッツはそこの学生だったんだ」

 

アーランド・オイエは一生の恩人さ

――なるほど、それを聞いて腑に落ちたところがあります。あなたたちのファースト『Down To Earth』(2007年)は非常に技巧的でシアトリカルな作品で、明らかに普通のロック・バンドではない雰囲気を漂わせていましたから。

アクセル「うん、キャバレー風というかね。サイケデリックでもあったし」

スティ「何しろバンドを始めたばかりで、やりたいことがありすぎて、当時持っていたアイデアを全部放り込んだ結果、ああいうアルバムになっちゃったんだよ(笑)」

『Down To Earth』収録曲“Crazy On The Dance Floor”
 

アクセル「若気の至りってヤツだね。楽しかったけど、完璧にクレイジーなアルバムだった(笑)。実はリリースから10年以上を経て、つい最近ようやくストリーミングを始めたんだ。というのも、ファーストは国内だけで発売されて、セカンドの『Hest』(2011年)で世界デビューを果たしたから、セカンドをデビュー作と見做して再出発したようなところがあってね」

パス(ドラムス)「でも最新作『Diplomacy』で、ファーストをプロデュースしたヤング・ドリームスのマティアス・テレスと久々に組んだ。タイミング的に、ここでみんなにあらためてファーストを聴いてもらうのもいいのかなと思ったんだ」

アクセル「一巡して出発点に帰ってきたようなところがあるよね。しかも『Diplomacy』は僕らのキャリアで最高の成功を収めた作品だし、そういう意味でも、いまファーストを聴くと感慨深いよ」

――それにしても、『Hest』で一気に、いまも続いているポップな路線にシフトしました。何があったんでしょう?

アクセル「早い話が、僕らの師と呼べる、キングス・オブ・コンビニエンスのアーランド・オイエと出会ったのさ。〈君らは本物の曲を作らなきゃ〉と助言をくれて、彼からいろんなことを学びながら曲作りとあらためて向き合い、アーランドのプロデュースで『Hest』を作った。クレイジーさを抑えて、〈ポップ・ミュージック〉という芸術をマスターする旅に出たんだ。『Diplomacy』では、それをかなり完璧な形まで磨き上げられたと思っているよ」

ピッシュ・ヴィンデネス(ヴォーカル/ギター)「究極的に、全員が好きなバンドはビートルズやクイーンだったりするしね」

『Diplomacy』収録曲“Runaway Girl”
 

――ベルゲンではそんなふうに、先輩が新人バンドをサポートするコミュニティーが確立されているんですね。

アクセル「ああ。ベルゲンのミュージシャンは地元にすごく誇りと愛着を感じているからね。でも、そんななかでもアーランドは特別だった。僕らを完全に理解してくれていた。さっきも言ったけど、若くてクレイジーだった僕らを敬遠する人もいたんだけど、彼は違ったんだ。僕らのポテンシャルを見抜いてくれた。その恩は一生忘れないよ」

 

ロイクソップ、オーロラ、ボーイ・パブロ……ベルゲンが音楽都市である理由

――そのベルゲンの話をもう少し伺いたいんですが、一般的に首都のオスロはポップでメインストリーム寄り、ベルゲンはオルタナティヴでロック寄りだとされています。

アクセル「僕に言わせれば、オスロとベルゲンの違いは〈クォリティー〉に尽きるね。実はノルウェー語の訛りもかなり違って、僕らがベルゲン訛りで早口で喋ると、オスロの人には理解できないこともある。それくらいふたつの町は違うんだ。で、オスロにもオルタナティヴ志向のバンドはいるけど、海外に伝わるほどいいバンドがいないのさ。あまりにもクォリティーがひどいから(笑)。そしてオスロの人たちは、オスロの外で暮らす人たちを理解しようとしない気がする。ちょっと閉鎖的なところがあるんだ。その点、ベルゲンの人たちは圧倒的にオープン・マインドだね。いい音楽を作るにはオープン・マインドじゃなくちゃ。もちろんオスロにも大勢ファンがいるし、嫌っているわけじゃないよ!」

――結局のところ、ベルゲンはなぜ音楽都市としてこんなに発展したんでしょう?

ピッシュ「あまりにも天気が悪くて、雨が多くて、屋内で過ごすしかないからさ。ジャンルに関係なく、ベルゲンの住人はみんな音楽をプレイして楽しんでいるんだよ」

パス「そのぶん誰もスポーツはやらない(笑)」

キッツ「あと大きな港湾都市だってことも関係しているような気がする。世界に目が向いていて、野心や好奇心をかき立てるようなところがあって、そこにオープン・マインドさの理由があるのかも。いろんなものを受け入れられるんだよ」

ピッシュ「本を正すと、ロイクソップとかビヨーン・トシュケとかノルウェーのさらに北部、北極圏の町・トロムソ出身のミュージシャンたちが、90年代にベルゲンに集まってきてDIY的なエレクトロニック・シーンを作ったことが、いまのシーンの土台になっているんだ。あのインパクトがすごく大きいね」

ロイクソップの2001年作『Melody A.M.』収録曲“Eple”
 

アクセル「ベルゲン発のブラック・メタルも同じ頃にシーンが形成されているし、何をやろうと自由なんだよ」

――では、現在のシーンの傾向はあなたたちの目にはどんなふうに映っていますか?

キッツ「相変わらず活気はあるよね」

アクセル「うん。音楽をやるには、いまも昔も本当にいい場所だよ。でも、バンドの数が減っているのは少し悲しいな。それはベルゲンに限ったことじゃないだろうけど」

スティ「そうだね。ベルゲン出身のミュージシャンで最近注目を集めている人と言えば、みんなソロだから。カイゴにアラン・ウォーカーにオーロラに……」

キッツ「シグリッドも世界的に大活躍しているよね」

アクセル「あと、タイムレスな音楽があんまり聴こえてこない。タイムレスってこともベルゲン発の音楽のウリだった気がするんだ。キングス・オブ・コンビニエンスがいい例だし、僕らもタイムレスであろうと心掛けている。その点、最近はみんなトレンドを追いすぎているんじゃないかな。というか、タイムレスでいい曲を書くバンドはいるものの、ブレイクしてないんだ。Hjerteslagなんかはオススメだよ。残念ながらノルウェー語で歌っているから、完全に良さを伝えられないんだけど」

ピッシュ「ボーイ・パブロはソロだけど、すごくいいよね。頑張っていると思う」

ボーイ・パブロの2018年作『Soy Pablo』収録曲“Sick Feeling”
 

――あなたたちはかなり早い段階で独自のレーベルを設立していますが、それもベルゲンのDIYスピリットに関係しているんでしょうか?

ピッシュ「まあね。実は昔メジャーと仕事をして痛い目に遭っていて、その影響も大きいな」

アクセル「誰も僕らに近付こうとしなかったから、自分たちでやるしかなかったとも言えるけど、結果的に自分たちですべてをコントロールできていることには誇りを感じているよ」

 

音楽と喜びの2本柱で成り立つカックマダファッカ共和国

――最後に『Diplomacy』についてもう少し伺います。繰り返し聴いていて、すごく夏っぽいアルバムだと感じるんですが、主なインスピレーションを教えて下さい。

アクセル「夏っぽいという意見は興味深いね。なぜって去年の夏のベルゲンは、僕らの人生で最高っていうくらい素晴らしかったんだ。3か月間、これぞ夏!って感じの天気が続いた。毎日25度くらいで。そんなの奇跡的な話なんだよ。4年前に、最高気温の平均が13度という夏もあったくらいだから(笑)。そして『Diplomacy』の収録曲の多くはそんな夏の間に書いて、秋にかけてレコーディングしたから、まさに夏を封じ込めたアルバムなのさ。“Naked Blue”とか、去年のあの夏を体験しなかったら生まれ得なかった。神さまが、素晴らしい夏と素晴らしいアルバムを与えてくれた気がするよ」

『Diplomacy』収録曲“Naked Blue”
 

――でも〈Diplomacy(外交関係、交渉術)〉というタイトルは、夏とは関係なさそうですしね。

アクセル「これはいろんな意味を含んでいるんだ。まずはバンド内の人間関係について語っている。15年一緒にやってきたわけだけど、それが可能だったのは、お互いをリスペクトして付き合ってきたからなんだよね。ときには妥協もして、相手の意見を尊重して。と同時に、僕らが思うに、いまの世界は〈Diplomacy〉を必要としている。対話を必要としている。そしてさらに、僕ら自身がバンド活動をしながら、ある意味で外交活動をしているよね。海外で過ごす時間が長くなって、色んな国の人たちと接していて、外交官みたいなものなんだという意識が強まったことも関係しているんだ。こうして君と話して、お互いについて学んでいるようにね」

――ノルウェーを代表している、と?

アクセル「どっちかっていうと、ノルウェーじゃなくて、カックマダファッカそのものを背負っていて、国籍とは別個のアイデンティティーだね。僕らは典型的なノルウェー人じゃないし、インターナショナルな人間だと思っている。ノルウェー人は往々にしてもっと内向的なんだ。僕らは完全に外向的で、ユーモアのセンスもたっぷり備えているし、僕らに選択肢があるとしたら、国として独立するよ(笑)。ま、ノルウェー政府から助成も受けているから、文句は言えないけど!」

――ノルウェーも、海外に自国の音楽を発信するために政府が力を入れているんですね。

ピッシュ「ああ。ただ、おかしなシステムで、助成金をもらえれば、成功しなくても活動を続けられるから、努力を促さなくなっちゃうんだよね」

アクセル「そういう意味で僕らはアメリカ人ぽいというか、努力して働いてお金を稼ぐのが当然なんじゃないかって考える。もちろんもらえるものはもらうけど(笑)、それに頼るつもりはないよ」

――ちなみにカックマダファッカ共和国が誕生したら、どんな憲法が制定されるんでしょう?

アクセル「メンバー間で合意するのに手こずると思うけど、とりあえず、音楽と喜び、二本の柱に則った国になるんじゃないかな。そしてお互いに敬意をもって接して、誰もが力を発揮して輝ける社会を作る。なんだかんだ言って、人間としてごく当たり前の価値観を重視すると思うよ」

 

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