予期せぬ現状を打破し、己すら裏切ることで到達したさらなる高み。歌とダンスが等しく際立つエンターテイメント盤がついに完成!

自分たちの限界を裏切る

 4人組ダンス・ヴォーカル・ユニット、WEBERが、メジャーでのファースト・アルバム『de­ception』をリリースする。闇から光へ――2013年の結成以来、ダンサブルで、情緒的で、サウンドに遊び心を持ったさまざまなテイストの楽曲を、シアトリカルなニュアンスも湛えた高いパフォーマンス・スキルで表現してきた彼らだが、この〈集大成〉に至るまでには6年の歳月を要した。

WEBER decepti­on ビクター(2019)

「組んだときは俺らも若かったし、歌に関して言えば、自分自身の経験を活かすというよりも、いただいた歌詞を読み取って、自分のなかで一所懸命組み立てて伝えることしかできていなかったんですけど、いまはWEBERとしてもひとりの人間としてもいろんな経験をしてきたし、実感を込めて歌を届けられるようになったなと思ってます」(Taka.、ヴォーカル)。

「ちっちゃい頃からダンスを始めて人前で踊ってはいたんですけど、見ていたのはほとんどダンサーの人だったりで。それがWEBERを始めてからは一般の人たちに見せることになったわけですけど、それまで見せてきたダンスだとちょっと違うのかな? 伝わらないかな?って思いはじめて、2年目のツアーのときだったか、ちょっと踊り方を変えてみたときがあったんです。がむしゃらさを出す感じというか、そうするとちょっとお客さんの反応が違ってきて。自分のダンス観に新しいものが入ってきた感覚、それがすごく楽しいなあって思えて」(little Skeet、ダンサー)。

「そういった手応えは、6年間のところどころでみんなあって、それが毎回毎回大きくなっていってるのを自分たちでも感じてますね。で、このタイミングでメジャーでのファースト・アルバムが出るということが、いまの俺らにとってすごく大きな手応えで」(Taka.)。

 決して順風満帆な道のりではなかった。2017年2月のメジャー・デビュー・シングル“オオカミの涙”を皮切りに、1年あまりのあいだに4枚のシングルを刻んできた彼らだが、そこから1年近くリリースが停滞することになる。メンバーにとって想定外のことではあったが、結果的にそれがWEBERに新たな力をプラスするきっかけとなった。

「これは何かしなきゃ、何か変えなきゃって、みんなで集まって話し合って。去年のツアーは、本当に捨て身で何もなくなるぐらい、俺たちの泥臭い部分もちゃんとお客さんにも伝えようよっていうことで臨んだんです。そしたら、ツアーが終わったあとから本当にいろんなことが進んで。それまでも毎回毎回真剣だったんだけど、あのときのライヴはちょっと違って……」(Taka.)。

「自分たちの色を惜しみなく出せたというか、こいつら10代?って思われそうなぐらい、青春感があった」(little Skeet)。

「あのツアーで皆さんに感じてもらえたことっていうのは、たぶん、〈人の力ってすごいんだな〉ってことだと思うんです。一発覚悟を決めた人間のパフォーマンスって、こんなにも伝わるんだってメンバー全員がわかっただろうし、お客さんもこんなに必死になってやってるんだったらもっと応援したいなって思ったはずで。僕らにとってとても大きな経験でした」(J、ダンサー)。

 そして、再起動シングル“READY”を経て届けられた『deception』。〈裏切り〉や〈欺き〉といった意味を持つタイトルは、メジャーでリリースしたこれまでの全シングル表題曲を含みながらも「いままでのWEBERがやりそうなもの、そこを俺ら的には凌駕したかった。そのハードルをどんどん高くして、自分たちも自分たちの限界を裏切って次に進んで行こう」(Taka.)という決意を込めてのそれだ。

「今回は、ダンスに重きを置いてるのかなっていうところもあって。新曲は結構激しめの曲が多くて、そっち系じゃないシングル曲と差別化できてて、世界観も広く、すごくおもしろいアルバムになったんじゃないかなって思いますね。激しいダンス曲のなかでも、しっかりと歌詞にメッセージ性があったり、歌詞だけでもその世界に浸ってもらえるような楽しみ方もできると思います。〈WEBERすごいな!〉って思っていただける、エンターテイメントがぎゅっと詰まったアルバムになったんじゃないかな」(Hayato、ヴォーカル)。

「他のダンス・ヴォーカル・グループからは逸脱している部分もあって、やっぱり、ヴォーカル=ダンスっていうものにしたいんですよね。ステージの上の4人誰を見ても曲が伝わるっていうグループってそういないと思っているし、歌とダンスのどちらも際立って見えて、それがバランスよく混ざり合ってるというか」(Taka.)。

 

曲が生まれる瞬間に立ち会って

 アルバムは、ドラマティックなR&Bダンス・チューン“太陽のかけら”で幕を開ける。メランコリックなピアノを響かせて不穏な空気を漂わせながらも、サビは光溢れんばかりの爽快なメロディーで歌い上げる――彼らの豊かな表現力が物を言う、まさに冒頭に相応しいナンバーだ。

「新曲はどの曲も難しかったです。それだけにやり甲斐もあったし、レコーディングしながら、ここはこうしようああしようっていう話し合いも生まれたりとか、本当に一曲一曲、密度の濃いものができたなって思いがありますね。“太陽のかけら”の歌割りも、作家さんが〈ここはHayatoじゃなくてTaka.かも知れないね〉って途中で替えてみたり、レコーディングしながら進化していった曲も多かったですね」(Hayato)。

「そうやって曲が生まれていく瞬間に俺らも立ち会えたっていうのは、いままでとはいちばん違う感覚というか、やっとそこに加われたって感じですね。人がいればいるだけ意見があるぶん、それぞれがどこをこだわって、どこを割り切るかっていう作業はすごく大変でしたけど、良い作品を作りたい、伝えたいっていう思いはみんな同じだから、その輪の中にいられたことでこれからも変わっていける、成長していけるっていう確信も得られたんじゃないかと思いますね」(Taka.)。

 アルバムのタイトル曲“deception”は、ニュー・ジャック・スウィングを匂わせるスネアのアタック音がアグレッシヴさを掻き立てるファンキーなナンバー(そういえば、この曲をはじめとする新曲3曲に携わったコンポーザーのmitsuyuki miyakeは、現在活動休止中のmihimaru GTのコンポーザーであり、カイリー・ミノーグの日本語カヴァー“I SHOULD BE SO LUCKY”などしばしば作品のなかにレイト80s感を落とし込んでいた)。

「この曲はすごくシンプルでカッコイイ。僕のなかで考えた振付のテーマも、まさにその通りのもので、見た人が純粋にカッコイイ!って思ってもらえる、そういうものができたなって思います。途中でBPMが速くなったりとか〈裏切り〉もあって、いろんな人が理屈抜きで楽しめる曲ですね」(J)。

 さらに、ストレートなポップ・ナンバー“STAND UP”、ラヴ・バラード“Sachi”といった彩りも豊かな初出の曲に加え、ステージでずっと大切に歌われてきたTaka.作詞/作曲の“2年後の君へ”が満を持して音源化されることに。

「Taka.がちょうど2年ぐらい前に書いた曲で。あれから2年、想像もしてなかったこと、良いことも悪いこともひっくるめていろんなことがあった2年を経て、アルバムを出せるっていうことは幸せなことだなって素直に思うし、そこにこの曲が入るのは、書いた本人じゃなくてもすごく嬉しい」(Hayato)。

「当時思い描いていた2年後のイメージっていうのはすごくポジティヴな印象で、2年後こうなってたいねっていう思いで書いた曲。それと現実とのギャップを思い知らされてしまったから、次の2年後どうしようかって考えると、素直にこうだって言えなくなっちゃってる部分もあるんですけど、アバウトなことを言ってしまえば、いまよりも変わってはいたいなっていう」(Taka.)。

 とにかく前向きで自信に溢れた様子からも窺える通り、充実感ハンパないアルバムを完成させた彼ら。これからの展望、野望については、Taka.いわくアバウトなのだろうが、明るい未来であることは確かだ。

「具体的には武道館のステージに立っていたいです」(Hayato)。

「Hayatoがそうやってポンと言ってくれるので、メンバーとしてはありがたいんですよね(笑)。俺だと恥ずかしくて言えないこととか、ある意味自分ではできないことをやってくれてたりっていうのが他の3人にはあって、だからこそ自分のスタイルが貫けるっていう」(Taka.)。

「とにかくいろんな人に観てみたいなって思われるグループにはなりたいですね。名前だけ聞いて通りすぎていくんじゃなくて、どんなことするんだろう、どんな歌を歌うんだろうって興味を持ってもらう。この誌面がきっかけであればそれは嬉しいし、そうなることが将来的に大きいステージにも繋がっていくと思う」(J)。

WEBERの2019年のシングル“READY”(ビクター)

 

WEBERのライヴDVD。