写真提供:アンスティチュ・フランセ東京

サイアン・スーパー・クルーを経て、ギターを手にソロ活動へ

 引き締まった体躯に、人懐こい笑顔。ナイス・ガイを絵に描いたようなフェフェは、フランスの人気ラッパーだ。いや、素直にラッパーと書いてしまって、はたして適切か。彼はサイアン・スーパー・クルーというラップ・チームで3枚のアルバムを出した後に、ソロに転向。現在の彼の表現は自らギターも手にし、きっちり歌っている曲が目立つから。

 「他の音楽をサンプリングして自由に自分の音楽を作れることに共感して、ラップにひかれた。だけど、キザイア・ジョーンズを聴いて、もっと広く音楽に興味を持つようになったんだ。とともに、サイアン・スーパー・クルーが潰れたときに、ギターを友達からもらって弾くようになったのも、僕の変化を促した」

FÉFÉ 『Le Charme Des Premiers Jours』 Polydor(2013)

 1976年、パリ近郊の生まれで、両親はキザイア・ジョーンズと同じナイジェリア出身。少年期から米国のヒップホップに浸ってきた御仁であり、彼は英語も喋れるものの、ラップについてはフランス語でやると決めている。ソロとなって出した2枚のアルバムは仏ポリドール発で、共にヒップホップ畑米国人プロデューサーであるダン・ジ・オートメイター(ギャラクティック、カサビアン、ゴリラズなども制作)が関与。特に新しい方の『Le Charme Des Premiers Jours』は、彼が大々的にプロデュースしている。

 「レコード会社の人を介して知り合ったんだけど、ダンは僕に自信を与えてくれる人であり、その先にもちゃんと導いてくれる人。彼は僕の望む〈濁り〉を、サウンドに与えてくれた。60年代のアナログにあったような存在感のあるギザギザをサンプリングで作れるというのは、彼ならではの手腕だと思う」

 単身ダンが住むサンフランシスコに1ヶ月滞在したりもして完成した2作目は、押し出しとインターナショナル性が確実に倍加。だからこそ、逆にアフリカ系フランス人としての矜持と持ち味がそこには出てもいる。かつ、大物感もおおいに持ち、その心意気にあふれた肉声に触れてマヌ・チャオを思い出す人がいても不思議はない。また、アルバム最終曲は訥々としたギター弾き語りの曲だが、それをして、ボブ・マーリーの“リデンプション・ソング”を想起する聴き手がいるかもしれない。

 「いやあ、ボブ・マーリーなんて、恐れ多い。この曲はベルギーで録音したんだけど、もっともシンプルな形で、心にあるナイジェリアのことを人間的に歌いたいと思っただけさ」

 アニメ好きで親日家でもある彼だが、この3月にナイジェリアに旅している。次作は、ナイジェリアやアフリカへの思いをもっと強く出したいそうだ。