INTERVIEW

挾間美帆 〈シンフォニック・ジャズ〉の過去から現在、そして未来へのブリッジとなる作品を――〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at芸劇〉をプロデュース

Photo By Hiroyuki Seo

〈シンフォニック・ジャズ〉の過去から現在、そして未来へのブリッジとなる作品を――〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at芸劇〉をプロデュース

 ライヴもコンサートもたくさんあるのに、あまり聴く機会のない音楽がある。何人か集まったらできるというよりは、人と場所とリハーサルを要し、それでいて、リスナーはあまりそのあたりの音楽がぴんときていない、というような場合に。

 〈N響JAZZ at 芸劇〉を続けてきた東京芸術劇場が、装いも新たに〈NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇〉を開催する。プロデューサーは挾間美帆。

 ヨーロッパ芸術音楽を中心に学ぶ大学に身をおき、ジャズのサークルに属し、という挾間美帆にとって、〈シンフォニック・ジャズ〉はみずからの音楽の軸にもなっている。でも、だ。一方で 〈シンフォニック・ジャズ〉って?との疑問を抱く方も多かろう。挾間美帆に訊ねたところ、こんな応えがかえってきた。

 「ガーシュウィンの“ラプソディ・イン・ブルー”の初演から90年以上が経ちますよね。それでいて、いまだオーケストラが演奏する〈ジャズっぽい音楽〉は限られたまま。ビッグバンドという編成が以後の大編成ジャズ音楽を支えてきましたけど、〈スウィングできないと演奏できない〉〈即興があるからできない〉〈どうも難しいからできない〉という敷居なしに、シンフォニックな編成でもジャズ音楽が創作されてきた、あるいは創作され続けるべきだ、というコンセプトを考えみたらどうでしょう。そんなところから、コンサートをプロデュースすることが大きな夢のひとつだったんです」

 “ラプソディ・イン・ブルー”はたしかによく知られている。でも、それ以外にどんな曲があるんだろう? そもそも、オーケストラで演奏できる、即興にばかり頼っているわけではない作品というのは?

 「〈N響JAZZ〉から引き継いだシリーズではあるのですが、今回をシリーズ第一回と考え、最初は〈オーケストラだけで演奏できる新旧のジャズ音楽〉にこだわって選曲してみました。シンフォニック・ジャズといえばガーシュウィンとバーンスタインの作品は外せない。また、ドイツ出身でありながら、無数のジャズ・アーティストのために作品を書き続けたクラウス・オガーマンは、その知名度の低さとは裏腹に、超・有名作品に多く参加している、ジャズ史にとってとても重要な書き手。ヴィンス・メンドーサは現在も活躍しているジャズ作曲家のなかでもっとも多くのジャズ管弦楽作品を書いている作曲家のひとり、といえるでしょう。ジャズ史のなかで管弦楽ジャズを代表する書き手の作品を集めたのがこのプログラミングです。すでにある〈クラシック=古典化〉〈定番化〉した作品のみでなく、知られていなかった楽曲の紹介を含め、新しい作品、〈いま〉つくられている作品を組みいれ、〈シンフォニック・ジャズ〉の過去から現在、未来へのブリッジにしよう、と」

 ちなみに、ガーシュウィンでも選ばれているのは定番の“ラプソディ”でも“コンチェルト”でも“パリのアメリカ人”でもなく、ミュージカルの序曲。バーンスタインも同様。“ウェストサイド・ストーリー シンフォニック・ダンス”や“プレリュード・フーガ・アンド・リフ”でなく、“オン・ザ・タウン”──宝塚で上演されたりもする作品だが、G・ケリー、F・シナトラ、A・ミラーらが出演した映画「踊る大紐育」という方がわかりやすいか──から。作曲家の名で引っぱり、内容はよりコアな、か。

 「オガーマン“シンフォニック・ダンス”(1971)は、私自身が生のオーケストラで聴いてみたい楽曲のひとつ。貴重な機会と声を大にしたい。大編成オーケストラのゴージャスなサウンドがいい、というだけではなく、聴いていると音楽の大きなながれにこちらの心身がだんだんとシンクロし、呼吸が深くなってゆく。ときにバロック的だったりときに映画音楽を彷彿とさせる。きっとオーケストラのメンバーもやっていて楽しい、やりがいを感じるんじゃないだろうか。F・シナトラやA・カルロス・ジョビンやといったアーティストたちと仕事をしていた作曲家が、ドイツで初演・録音した作品で、全3楽章。長いので第1・第3楽章と抜粋なのが残念だけど、これを機に人気が高まってくれると」

 1961年生まれのヴィンス・メンドーサによる、おちついた、プログラムのなかではいわば〈バラード〉的な楽曲からバーンスタイン、そして30代のシャイ・マエストロと挾間美帆の“ピアノ・コンチェルト”へ。これまで山下洋輔のコンチェルトのオーケストラ部分やピアノを含むオーケストラ作品はいくつか手掛けているが、方向性としてはどんなふうだろう。

 「はじめての“ピアノ・コンチェルト”を弾いてもらうのは、イスラエル出身のシャイ・マエストロ。わたしとかれとはほぼ同じ歳、おなじNYCに住んでいることもあって、お茶をしながら構想について話しました。シャイのキャリアは私よりも相当長くレヴェルの高いもので、とても刺激になっています。シャイの持ち味に合わせるだけではなく、長く再演されていくような、それこそ〈次世代のラプソディ・イン・ブルー〉を目指せたら良いな、と思っているんです」

 〈NEO-SYMPHONIC JAZZ〉でも、〈挾間美帆の新作〉でも、〈ガーシュウィンやバーンスタイン〉でも、〈クラウス・オガーマン〉でも、たくさんの入り口を持ったコンサート、夏休みの終わりに、花火のような一夜を!

 


挾間美帆 (Miho Hazama)
作・編曲家。国立音楽大学およびマンハッタン音楽院大学院卒業。坂本龍一、鷺巣詩郎、グラミー賞受賞音楽家であるヴィンス・メンドーサ、メトロポール・オーケストラ、NHK「歌謡チャリティコンサート」など多岐にわたり編曲作品を提供。2017年、シエナ・ウインド・オーケストラのコンポーザー・イン・レジデンスに就任。New York Jazzharmonic (アメリカ)、Metropole Orkest (オランダ)、Danish Radio Big Band (デンマーク)、WDR Big Band(ドイツ)等からの招聘を受け、作編曲家としてだけでなくディレクターとしても国内外を問わず幅広く活動している。

 


LIVE INFORMATION

NEO-SYMPHONIC JAZZ at 芸劇
○8/30(金)18:00開場/19:00開演 ※18:40から挾間美帆によるプレトークを開催
【会場】東京芸術劇場 コンサートホール
【出演】原田慶太楼(指揮)シャイ・マエストロ(p) 東京フィルハーモニー交響楽団
【曲目】ジョージ・ガーシュウィン:『ガール・クレージー』序曲/クラウス・オガーマン:『シンフォニック・ダンス』から第1楽章、第3楽章/ヴィンス・メンドーサ:インプロンプチュレナード・バーンスタイン:『オン・ザ・タウン』から「3つのダンス・エピソード」/シャイ・マエストロ(挾間美帆編曲):ザ・フォーガットン・ヴィレッジ ほか/挾間美帆:ピアノ協奏曲第1番(東京芸術劇場委嘱作品・世界初演)

www.geigeki.jp/performance/concert183/

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