So Sorry,Hobo梶原笙の「聴きました」「読みました」「書きました」「そうですか」

第7回「ちょうどよいかなしさでお願いします」

 

6月19日

上旬はなにも書くようなことがなかった。いや、実際にはすこしぐらいあったのかもしれないけど、それらをうまくつかむことができなかった。ぼんやりと生きているのですべてがあっという間に流れていってしまう。あとにはなにも残らない。

この日はスタジオ練習だった。新曲をつくった。
どういう曲をつくるべきか、みたいな話をして一応の指針をだしたあとにそれを完全に無視したものが生まれたのでよかった。よかったのか。
このごろ「作者の気持ちを考えなさい」の答えに詰まるような曲ばかりつくっている気がする。まあいいんだけど。

サンドロ・ペリが去年新譜をだしていたことを知らなくて、いまさら聴いたらとてもよかった。

めちゃくちゃいい曲だな~。このタイトル曲は24分半もあるのだけど、ぜんぜん身構える必要もなく聴いてしまえる。
ものすごくやさしい曲なのにむやみにぼやけた輪郭の音ではないところとか、大事につくられた音楽だなという感じがしてうれしい。
つくり手自身がつくったものを大事にすることは、受け手としては心情的に気持ちがいいのはもちろんそうなのだけど、それ以上に作品に対してのスタンスへのひとつの(あくまでひとつの)解を提示してくれているように思えて安心できる。

 

6月26日

スタジオ練習だった。
引き続き新曲をつくった。歌詞がすくない曲がつくりたいとまえから思っていたので、三行だけの曲をつくった。

「魔女っ子メグちゃん」のオープニングがいま聴いたらめちゃくちゃ尖った音でびっくりした。低いところの音たちの感じとか1974年当時からすると相当早かったんじゃないか。ベースを弾いてるのが誰か気になって調べたけどクレジットがないみたいでわからなかった。この時代は映画もそうなんだけどプレイヤーは名前をだしていない(実際当時無名だった人がやっているのかもしれないけど)ことが多いように思う。
というか歌と作曲は「キューティーハニー」のオープニングとおなじコンビなのか。この時代の劇伴とか掘るとすごくたのしそうだなあ。知りあいに詳しい人がいたら聞いてみよう。

あとビージーズは定期的に聴きたくなるんだけど、そのたびに曲のよさと見た目の暑苦しさがどちらも記憶以上で笑ってしまう。

 

6月29日

挫・人間の手伝いで新宿ロフトにいった。ポップしなないでの企画ライブだった。
会場に着いたら出演者とスタッフむけにコーヒーやオレンジジュースなどのドリンクとキーマカレーが用意されていて、もう「狂四郎2030」のあれみたいになってしまった。毒ガス訓練は開始されなかった。
この日は自分をふくめて全員なんとなくテンションが高く、リハでめちゃくちゃ僕にむけてなにかを呼びかけてきたりするので困った。スタッフを弄るな。リハーサルを、しろ。

本番のとき、下川がMCで共演者のかたたちのことを「弟子」と呼んだ瞬間(こうやって文字に起こすと意味不明だな)客席の空気がいい意味でガラッと変わるのがわかって、おっ、となった。
たぶん弟子という言葉のキャッチーさがよかったんだろうな。キャッチーさ、大事。

あと共演のラブリーサマーちゃん(敬称つけたほうがいいんだろうか)がとてもよかった。たぶん好きな音楽とか近いんじゃないかな、とか勝手に思っていた。
話した感じも速度があってよかったし、この連載の読者でもあるらしいので(本当にありがとうございます)最高!という気持ち。

終わったあとラップをやっているオタク(ほかになんていえばいいんだろう)のこうすけさんと、ハマ・オカモトさんと、下川と夏目とで寿司を食べた。寿司ってどのタイミングで食べてもめでたい感じがして好きだ。我々はもっとどんどん寿司を食べるべきなんじゃないのか。

それから終電に乗って引越しをしたばかりのこうすけさんの新居に下川と二人で転がりこんだ。とてもいい部屋だったので、あんたには不釣りあいだよ、とかそういうめちゃくちゃな難癖をつけておいた。
結局始発が動きだすまで話していた。この日は昼に挫・人間の事務所にいってから相手を変え話題を変えずっと喋っていたので、当然のように喉がめちゃくちゃになってしまった。もう電車に乗ったころには痛みだしていて、家に帰ってから薬を飲んで寝たのだけど、当然のように起きたら風邪を引いていた。僕が風邪を引く一番の原因は喋りすぎだ。自分でもどうかと思う。

そういえばシンセサイザーを買った。ローランドのSK-88 Proという、20年以上まえにでた古めの機種。渋谷のお店の隅のほうにポツンとあったので、すこし弾かせてもらったあとその場で購入した。
15,000円という値段は、旧式の機種が値崩れしやすいシンセサイザーとはいえだいぶ安いと思う。ちなみに当時の定価は89,800円。

鍵盤のつくりはなかなかしっかりしているし、音の種類もたくさんあって飽きずに遊べてうれしい。音質はちょうどよく情けなくて好ましい。80年代にでたシンセサイザーの音はいま懐古的なかたちでブームになっているけど、それよりも現代的なせいで時代遅れになってしまっているような感じ。でもこの音が15年とか経ったあとに再評価されるかというと……どうだろう、わざわざ掘り起こして土を払ってもらうためにはすこしおとなしすぎるかもしれない。
まあなんにせよ僕にとってはいい買いものだったし、この機会に鍵盤楽器をすこしでも弾けるようになりたいとも思う。でもひとまずは実用とかそういうことは考えずにふにゃふにゃと遊ぶことにしよう。

 

【プロフィール】
梶原笙

梶原笙 (かじわらしょう)

ロックバンド、So Sorry,Hobo(ソーソーリーホーボー)のギター・ヴォーカル。​バンドは「内在するファンタジーの再現」を目標にマイペースに活動中。話と文章と髪が長い。オタク。

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