EASTOKLAB日置逸人の極私的金字塔

Summer Heart『About A Feeling』と過ごした夏の日々

Summer Heart『About A Feeling』と過ごした夏の日々

一人暮らしを始めたばかりのころ、車に乗って友達とよく海に行った。汗でシャツが滲むような暑い夏。カーステレオからはいつもSummer Heartの『About A Feeling』が流れていた。人でいっぱいの浜辺から少し離れ、細い道を抜けた先にお気に入りの海岸があって、そこでよくボーッと海を眺めながら、好きな子の話をしたり、これからのことを話したり、アコギを弾いたりしていた。そんな夏が確かにあった。たぶん村上龍の「69 sixty nine」みたいな夏に憧れてたからだ。

今年も夏が来た。ほとんど毎日一緒にいたその友達とは年に数回しか会えなくなってしまった。そんなことを考えながら今年の夏もこのアルバムを聴いて、あの頃に見ていた海と、そこに反射する光の美しさを思い出したりしている。

前回はスマパンの大名盤『Siamese Dream』について書いたけれど、今回はうって変わって結構ニッチなセレクトでいこうかなというわけで、日本ではあまり知られていないであろうスウェーデンのエレクトロユニット、Summer Heart『About A Feeling』(2012年)について。

SUMMER HEART About A Feeling Fastcut(2012)

大学に入ったころ、今はなき上前津のサウンドベイ(中古レコードショップ)に狂ったように通っていた。食費を削り、浮いたお金でアルバムをジャケ買いするというのが日課みたいになっていて、それはそれは楽しい趣味だった。セールコーナーを隅から隅までチェックし、CDの背表紙で気になるものを手に取って、ピンとくれば買う(こんなことばかりやっていたせいか、背表紙を見ただけで何となく好きかどうか分かるという特殊能力が身についた)という要領で、ずいぶんハズしまくって散財したし、それと引き変えにずいぶん多くの素晴らしい音楽を知ることができた。そして、このアルバムもそのなかで知った素晴らしい音楽の1つだ。

このアルバムと出会ってからというもの、しばらくSummer Heartばかりを延々と聴いていた。車で、部屋で、外で、気分のいい日はスキップしながら聴いたし、気分の乗らない日は目を閉じて聴いた。そのどちらにもピッタリ当てはまる音楽だった。特にM-2“I Wanna Go”という曲が大好きだった。ほんと、聴いてみて欲しい。

揺蕩うような幻想的なボーカルと、透明感のあるサウンド、鼓動のような芯のあるビート。当時はWashed Outだったり、Blackbird Blackbirdだったり、所謂チルウェイブと呼ばれる音楽が流行っていたけれど、僕はあまりチルウェイブには傾倒しなかった。

Summer Heartもその系譜に分類されていたけれど、僕には少し違って聴こえて、もっと肉体的な音楽だと感じていた。確かに音はチルウェイブなんだけれど、踊ることもできるし、切なくもなれる。デスクトップミュージックでありながら、人間的でもある絶妙なバランス感によるものなのかな? とにかく身体にフィットしたわけ。

サウンドにおいても宅録だからこそのチープさがとても効果的に出ているし、1つ1つの音の処理やリバーブタイムの絶妙なジャッジが素晴らしい。何より、全体にかかるウェーブのようにうねるエフェクトが美しくて、個人的ベスト。攻めたミックスって、ハマると魔法みたいに美しい。きっと1曲に対して、様々な手法を試みながら作り上げているんだろうな。

そんなわけで、今年の夏もこのアルバムを何度も聴くことになりそうだ。ある時期を一緒に過ごした音楽は、その時の心と繋がっているみたいで、いつだって僕にあの夏を思い出させてくれる。とするとSummer Heart(直訳:夏の心)って名前は、僕にとって、あまりにもピッタリな名前だ。

今年の夏、どんな日々になるだろう? 全然上手くいかないことだらけだけれど、大好きな“I Wanna Go”を聴きながら、行こう。ずっと先まで行けたらいいな。それでいつかまた、このアルバムを聴いて、この夏を思い出したりね。

P.S. 日本盤がFastcut Recordsからリリースされているのだけれど、素晴らしいボーナストラックが3曲収録されていてオススメ。特に“Hit Me Up Again”が大名曲なので、聴くなら是非日本盤を!

 


INFORMATION

EASTOKLAB EASTOKLAB DAIZAWA(2019)

恍惚に満ちたファルセットボイス
ダイナミックなアンサンブルで美しさを描く
退屈を撃ち抜く鮮やかなデビューアルバム完成!

EASTOKLAB
Debut Mini Album『EASTOKLAB』
2019.06.05(Wed)Release
UKDZ-0200 \1,700(w/o tax)
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.

1. Fireworks
2. In Boredom
3. Passage
4. Always
5. New Sunrise
6. Tumble

 

EASTOKLAB Release Tour 2019
2019年8月2日(金)愛知・名古屋 HUCK FINN
共演:polly/my young animal
開場/開演:18:30/19:00
前売り/当日:2,500円/3,000円(いずれもドリンク代別)
イープラス:
https://eplus.jp/sf/detail/2970020001-P0030001P021001
ローソンチケット:
https://l-tike.com/order/?gLcode=42815
チケットぴあ:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=1924058

2019年8月3日(土)京都 GROWLY
共演:ROTH BART BARON
オープニング・ゲスト:SIRMO STAD
開場/開演:18:30/19:00
前売り/当日:3,000円/3,500円(いずれもドリンク代別)
イープラス:
https://eplus.jp/sf/detail/2988740001

2019年8月6日(火)東京・下北沢 CLUB Que
共演:polly/STEPHENSMITH
開場/開演:18:30/19:00
前売り/当日:2,500円/3,000円(いずれもドリンク代別)
イープラス:
https://eplus.jp/sf/detail/2971260001-P0030001P021001
ローソンチケット:
https://l-tike.com/order/?gLcode=71641
LivePocket:
https://t.livepocket.jp/e/que20190806

UKFC on the Road 2019
8月22日(木)東京・新木場 STUDIO COAST
開場/開演:13:00/13:35
前売り/当日:4,800円/5,300円(いずれもドリンク代別)
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要
http://ukfc2019.ukproject.com

【プロフィール】
日置 逸人

日置 逸人 (ひおき はやと)

EASTOKLABのヴォーカル/シンセサイザー/ギターを担当。バンドの他に、WD SOUND WORKSでレコーディング・エンジニアとしても活動する。2019年6月5日、DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECTよりミニ・アルバム『EASTOKLAB』をリリース。

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プレイリスト
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