知ってる人はもう知っている、知らない人はいまこそ知るべき新人バンド——それがTHE King ALL STARSである。すでに4月の〈ARABAKI ROCK FEST.〉や5月の〈GREENROOM FESTIVAL〉に登場し、7月には〈JOIN ALIVE〉と〈フジロック〉に出演、8月にはワンマンを敢行し、さらには9月の〈中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2014〉や10月の〈MONGOL 800 ga FESTIVAL What a Wonderful World!! 13+14〉……と大舞台の連戦を発表しているこの集団は、もちろんただの新人ではない。あの加山雄三が昨年の〈ARABAKI〉のために結成した、20~70代の多様なメンバーによるスペシャル・バンドなのである。いわゆる芸能界の大御所として誰もが知る加山だが、4月に最新シングル“Dreamer ~夢に向かって いま~”を発表(8月にはアルバムも)するなどシンガー/ミュージシャンとしても現役バリバリの存在。その若大将スピリットが爽健だからこそ、文字通りのALL STARな顔ぶれの垣根を越えた集結が実現されたのだろう。

 メンバーに名を連ねるのは、シアターブルックの佐藤タイジをはじめ、MONGOL800のキヨサク、Co/SS/gZの復活も話題となった名越由貴夫、THE COLLECTORSの古市コータロー、the HIATUSのウエノコウジ、勝手にしやがれの武藤昭平、さらには、サニーデイ・サービスやGRAPEVINEのサポートなどで知られる高野勲(Permanents)、阿部真央やSalleyら多くのアーティストに鍵盤を乞われる山本健太、SOIL&“PIMP”SESSIONSのタブゾンビ、そしてスチャダラパー。名を連ねるだけでも大変な顔ぶれだが、そんな総勢13名が集結してパフォーマンスするのだから、これはもうたまらない。限定生産で出されたデビュー・シングル“未来の水平線”に続くファースト・アルバム『ROCK FEST.』では、多様な個性のパワフルな融合ぶりをさらに楽しむことができる。

THE King ALL STARS 『ROCK FEST.』 TOWER RECORDS(2014)

  アルバムの幕開けを熱く飾るのはエルヴィス・プレスリーのレパートリーとしても知られた“SEE SEE RIDER”。エルヴィスを敬愛する加山らしい選曲で、彼のキャリアを彩ってきたナンバーとしては、かつてランチャーズと披露した自作の名インスト“Crazy Driving”(66年)のヘヴィーなリメイクや、パンキッシュに駆けるディック・デイル&ヒズ・デル・トーンズの“Misirlou”、さらにボーナストラックとして“夜空の星”(65年)のTHE King ALL STARSヴァージョンも用意されている。なかでも、ギタリスト加山の代名詞的なエレキ・ナンバー“ブラック・サンド・ビーチ”(65年)を下敷きにスチャダラパーがマイクを回すラップ・リメイク“ブラック・サンド・ビーチ~エレキだんじり~”はこのバンドならではのチャレンジングなお楽しみだろう。もちろん佐藤タイジのペンによる先行カットの“未来の水平線”などが大ヴェテランに新たなチャレンジを促している点も聴き逃せない。いずれにせよ、60年代から日本の夏にエレキやサーフィンなどの若者文化を広めてきた若大将が、50年後の夏に瑞々しくカッコいいロックを響かせて雄々しく君臨する姿には、往年のファンならずとも、ある種の感慨を覚えるのではないだろうか。

 なお、THE King ALL STARSというバンド名は、先述のエルヴィスの称号=THE KINGに由来しつつ、喜寿を迎えてなお加山(K)が現在進行形(ing)の存在であることを重ね、そこに各方面のキングたちが集結したという意味合いも込められたもの。その呼称がハッタリじゃないということは、エネルギッシュな『ROCK FEST.』の仕上がりを耳にすれば明白だろう。実際に彼らの勇姿を各所で目撃できる人も、そうでない人も、ぜひこの『ROCK FEST.』に駆けつけてほしい!

 

▼関連作品

左から、THE King ALL STARSのタワレコ限定シングル“未来の水平線”(TOWER RECORDS)、加山雄三の最新シングル“Dreamer ~夢に向かって いま~”(DREAMUSIC)、シアターブルックの2012年作『最近の革命』(Mastard)、MONGOL800のニュー・シングル『OKINAWA CALLING×STAND BY ME』(TISSUE FREAK)、Co/SS/gZの96年作『Kr/A/sH!』(キング)、THE COLLECTORSの2013年作『99匹目のサル』(コロムビア)、the HIATUSの2014年作『Keeper Of The Flame』(ユニバーサル)、勝手にしやがれ&渡辺俊美のコラボ盤『PLAY』(TOWER RECORDS)、高野勲が参加した斉藤和義の2013年作『和義』(SPEEDSTAR)、山本健太が参加したSalleyの2014年作『フューシャ』、SOIL&“PIMP”SESSIONSのベスト盤『“X” Chronicle of SOIL&“PIMP”SESSIONS』(共にビクター)、スチャダラパーのベスト盤『THE BEST OF スチャダラパー 1990~2010』(tearbridge)、“Misirlou”を収録したディック・デイルのベスト盤『Surf Beat』(Not Now Music)、“夜空の星”を収録した加山雄三のベスト盤『PREMIUM BEST』(DREAMUSIC)
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