1年間恋人と付き合っている友人から深夜急に電話がかかってきた。別れを告げられたそうだ。朝まで友人と電話を繋ぎ、翌日、友人を河辺へ連れ出した。私はギターを1本持ってぽろぽろと弾き語りを始めた。友人は私の隣で遠くを眺めながら静かに涙を流していた。「このまま好きで居たかった」と呟く横で、「ここで2人で1曲作ろう」と言った。「〈ずっと〉という言葉が嫌いになった」と嘆いていたことからタイトルはあえて“ずっと”にした。この言葉をフィルターなしで聞けるようになった頃、きっと彼女は変わってるだろう。辛くても、悲しいほど時間というものはいつか、今を解決してくれる。その頃、相手の記憶として大事に残っているものこそ、その人と出会った本当の意味なのかもしれない。

 意味のない出会いなどない。相手が冷たくしてきたから、自分も冷たくしてしまった。もっと話を聞いてあげられたらよかったのに。そんな風に自分を責める彼女は、自分に傷ついているのではない。本当は、聞いてあげられたのではなく、なんでもない話をただただ一番聞きたかったはずだ。そんな自分が居たからこそ胸が苦しいのだ。好きで居たいし、好きで痛い。そんな時、ふと1曲思い出し、「この曲聴いて」と再生ボタンを押した。

 今回ご紹介する曲はとけた電球さんの“覚えてないや”です。切なさや、儚さが見え隠れしつつ確かな芯があって初めて聴いた時から心を掴まれました。こんなふうに、上手く言葉で背中をさすってあげられない時は、音楽が代わりにすべてを伝えてくれるような、ただ静かに隣にいてくれるような。この曲にはそんな優しさが込められている気がするんです。

“覚えてないや”を収録した、とけた電球の2018年作『STAY REMEMBER』(ホリプロ)

 


原田珠々華(はらだすずか)
2002年生まれ、神奈川出身。ファースト・ミニ・アルバム『はじめての青』(TOWER RECORDS)が好評リリース中。8月12日に東京・渋谷WWWにて待望のワンマン〈原田珠々華 ワンマンライブ2019 ~夏期集中講座~〉を開催します! 8月24日には〈@JAM EXPO 2019〉、9月には〈イナズマロック フェス 2019〉にも出演。詳細は〈haradasuzuka.com〉にて!
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