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【TOWER VINYL太鼓盤!】第3回 ウィスパー・ヴォイス×レゲエなクロード・フォンテーヌ、話題のクルアンビンなどアナログで聴きたい7枚

【TOWER VINYL太鼓盤!】第3回 ウィスパー・ヴォイス×レゲエなクロード・フォンテーヌ、話題のクルアンビンなどアナログで聴きたい7枚

アナログ・ブームも追い風に、タワーレコード新宿店10階に誕生した〈TOWER VINYL SHINJUKU〉。同店のスタッフがお客様におすすめしたい〈太鼓盤〉をご紹介するこの連載、早くも3回目となりました。今回は知念達也さんが音の面から〈これはぜひアナログで聴いてほしい!〉と推す作品を教えてくれました。


 

――最初に知念さんの経歴と、リスナーとしての好みを教えてもらえますか?

「僕は書籍と雑誌の担当をしながら、TOWER VINYLも兼任しています。タワーレコードは11年目なんですが、もともとは那覇店から異動してきて、ソウル/クラブを担当していました。その前も中古のレコード・ショップで働いていたのでこの仕事は長くて、リスナーとしてもオール・ジャンルを聴く感じです。

60年代の音楽も好きですし、80年代のニューウェイヴやネオアコ、それにポスト・ロックも好きですし、最新の音楽も好き。洋楽中心に幅広く、古いものから新しいものまで聴く、っていう感じなので、〈特にどれが好き?〉って訊かれると難しいかもしれません」

――僕も好きなジャンルやアーティストを訊かれたら、いつも答えに詰まるのでよくわかります。そんな知念さんに選んでいただいたTOWER VINYLの〈太鼓盤〉です!

「いま個人的にいちばん推しているのはこれです。クロード・フォンテーヌの『Claude Fontaine』

彼女はまだ20代前半なんですけど、このアルバムはバックで演奏しているのが70年代のレゲエの有名なミュージシャンたちで、トラックがすごく本格的なんですね」

――キング・タビーと共演したギタリストのトニー・チンやスティール・パルスのベーシストだったロニー“ステッパー”マックイーンらが参加、とPOPに書いてあります。パーカッションがアイアート・モレイラっていうのはすごい。

「そうですね。なので、トラックだけを聴いていてもすごくいい。ヘヴィーなレゲエ/ダブの音にウィスパー・ヴォイスの女の子の声が乗っかっているので、あんまり聴いたことがない音楽なんです。

アルバムの後半にはボサノヴァの曲が入っているのでバランスもよくて、まるまる一枚ずっと聴ける感じです。ジャケットも〈レゲエレゲエ〉していなくて、すごくいいなって思います」

クロード・フォンテーヌの2019年作『Claude Fontaine』収録曲“Cry For Another”

――中身が想像できないですね。

「そうですよね。なので、ぜひ音を聴いてもらえればと思います。ウィスパー・ヴォイスなのでビリー・アイリッシュのファンも意外とハマるんじゃないかなって感じています。クロード・フォンテーヌはジャンル的にもレコードで聴いたほうが圧倒的に音がいいと感じます」

――知念さんはご自宅でレコードをよく聴きますか?

「聴きますね。家にはCDとレコードのプレーヤーが両方あるんですけど、聴き比べてみると全然違うなってことがすごくわかります。今回はその観点で〈レコードで聴いたほうが音がいい〉という盤を選んでみました。CDと比べると、特に低音は音響的に全然違ってきます」

――続いて、〈フジロック〉への出演も話題なクルアンビンの日本企画盤『全てが君に微笑む』。帯付きなのがまたいいですね。

「最新の話題作ですね。僕はこのアルバムで初めて聴きました。ブルースなのか、ファンクなのか、ワールド・ミュージックっぽい感じもあって、ジャンル分けや形容がうまくできない感じです。こういうジャンルにカッチリとハマっていない、ちょっとズレた感じの音楽がすごく好きで」

――新作ダブ・アルバム『Hasta El Cielo (Con Todo El Mundo In Dub)』のほか、国内盤CDが一気に4枚リリースされたんですよね。

「他のアルバムも聴いたみたくなるようなヘンテコな音楽ですよね。おそらく日本のリスナー向けに収録されているんだと思いますが、YMO“Firecracker”のカヴァー(原曲はマーティン・デニー)もおもしろい」

クルアンビンの2019年作『全てが君に微笑む』収録曲“Firecracker”

――人気のベーシスト、ローラ・リーによる低音やザラッとした音質、モコモコとした音像はアナログで聴きたくなりますね。

「そうですね。ここからの2枚はちょっと変わってエレクトロニカです。まずはティコの『Weather』。これもCDよりレコードの音のほうが断然よかったものです。

ティコはもともとニューエイジ・コーナーで扱っていまして、以前はインストのエレクトロニカをやっていたんですけど、今回は歌モノで女性ヴォーカルが入っています。

僕は一時期ニューエイジの担当もしていたので、エレクトロニカも2000年代から聴いているんです。当時、電子音で音楽を作っていた人たちが、ちょっと70年代のフォーク的なことをやり始める、という傾向を感じます。最近だとビビオも新作(『Ribbons』)でフォーキーなメロディーの歌モノを作っていました」

ティコの2019年作『Weather』収録曲“Japan”

――ビビオは前作が『Phantom Brickworks』(2017年)という長いアンビエント・アルバムだっただけに、意外性がありました。確かにエレクトロニカのプロデューサーたちがシンガー・ソングライター化して歌に向かっているというのはあるかも。

「その流れがすごくおもしろい。もともとの持ち味である音響的な耳心地のよさを残しつつ、フォーキーな歌という原点に戻ってきているというか」

――ただ、彼らは生楽器の音の扱い方や音響が普通のSSW作品とは違うからおもしろいですよね。

「それはありますね。ちなみに、ティコのアナログは45回転盤なんです。それも音質を気にしてそうしているんでしょうね」

――45回転盤のほうが高音質ですからね。次は何でしょう?

トム・ヨークの最新作『ANIMA』です。これも明らかにレコードとCDとでは音圧が違っていて、びっくりします。

僕はレディオヘッドからずっと通ってきている世代なので、〈この人は次、どんな音楽をやるんだろう?〉っていうのがどうしても気になっちゃうんですね。なかでも今回は本当にすごかったなあと思いました。トム・ヨークももともとエレクトロニカ路線だったのが、新作では歌モノの割合がちょっと増えています」

――ビートもパワフルになりましたね。

「低音がすごいですよね。ちょっとビリー・アイリッシュのような、トラップっぽい感じのビートも取り入れています。流行りもちゃんと意識しつつ、レディオヘッドっぽさもあって」

トム・ヨークの2019年作『ANIMA』収録曲“Not The News”

――以前の作品と比べるとボトムがグッとしっかりして、音圧が上がりました。レディオヘッドの近作はデラックス・ヴァージョンが毎回出ているので、アナログやモノへのこだわりを感じます。

「〈アナログ・ブーム〉って言われていますけど、カラー・ヴァイナルであったり、音質の良い盤であったり、モノとしての魅力をちゃんと意識してリリースしているアーティストやレーベルはすごくいいな、信用できるなって思います。

例えばCDをアナログ化するときに、ちゃんとアナログ用にリマスターしているものとしていないものとでは結構はっきりと差が出ちゃうんです」

――最近は〈とりあえずアナログを出しておけばいいや〉っていう状況にもなっていますからね……。

「そこをちゃんと気にしている人たちは、しっかりとしたアナログを作ってくれます。トム・ヨークは、そのあたりをちゃんと意識してやっていると思いますね」

――特にエレクトロニック・ミュージック系の人たちはメディアごとの音の扱いをわきまえていると思います。『ANIMA』のアナログはジャケットの上辺が開いていて、そこからレコードを出し入れする作りなんですね。おもしろい。

「中にまた紙のスリーヴが入っていて、2枚組になっています。エレクトロニカは昔からCDでも紙ジャケットやデジパックの作品が多くて、パッケージにもすごくこだわりを感じます。ちゃんとモノとしての魅力を意識している」

――最後はジョーダン・ラカイ『Origin』トム・ミッシュ『Geography』ロイル・カーナー『Not Waving, But Drowning』の3枚。トム・ミッシュは第1回で塩谷邦夫さんが紹介してくれました

「日本では星野源さんの紹介もあって、トム・ミッシュがかなり売れています。〈トム・ミッシュを聴いてよかった人はぜひこちらも〉とおすすめしたいUKソウル/ポップの3枚です。よく共演している3人ですし。

ロイル・カーナーの2019年作『Not Waving, But Drowning』収録曲“Angel (feat. Tom Misch)”

ジョーダン・ラカイもそうなんですが、UKソウルの特徴はハウスやダンス・ミュージックの下地があって、上品な音の感じがいいなって思います」

――この3枚は知念さんが好まれるようなジャンル分けが難しい作品ですよね。ロイル・カーナーはヒップホップですが、かなりメロウな音ですし。このなかでは、僕はジョーダン・ラカイがいちばん好きかも。

「僕も好きですね。普通にポップスとしても聴けますし」

――メロディーがすごくいいから、ソングライターとして才能があるんだなって思います。

ジョーダン・ラカイの2019年作『Origin』収録曲“Say Something”

「そうですよね。USモノとはまた違う魅力で、ソウルやファンクっぽさをあんまり押し出していないので、聴きやすいんです。デ・ラ・ソウルがトム・ミッシュのアルバムに参加しているのがわかりやすくて、デ・ラ・ソウルのように彼らにはソウルの土臭さやヒップホップの悪そうな感じがあんまりない。そういうところが刺さるんですよね」

トム・ミッシュの2018年作『Geography』収録曲“It Runs Through Me (feat. De La Soul)”

――ロイル・カーナーはまさにそうですね。コンシャスで性格がいい感じ。アトランタのトラップとは違うラップ・ミュージックの別の側面というか。ところで最近のTOWER VINYLはどんな感じでしょう?

「当店には欧米やアジア系の方だけじゃなく、中東からのお客様もいらっしゃいます。いまはやっぱり〈シティ・ポップ〉がキーワードになっていて、ここ1、2か月くらいでそういう問い合わせをされる海外の方が増えています。英語で〈city pop〉という言葉を使う方もいますし、〈Tatsuro Yamashita〉〈Mariya Takeuchi〉とアーティスト名を言う方も増えました。

最近はJ-Jazz、J-Fusionを探される方までいらっしゃるので、浸透の度合いが深まっていると思います」

――他にどんな名前が挙がるんですか? 吉田美奈子さんとか?

「そうですね。佐藤奈々子さんのレコードを買っていかれる方もいました。〈元祖渋谷系〉と呼ばれていて、70年代シティ・ポップのなかでもちょっとマイナーではあるとは思うんですけど、こういうのを聴いている人も海外にいるんだって思いました。

なので、最新の音楽も聴きつつ、70年代の日本の音楽についてもちゃんと勉強しておかないとって思います。お客様のほうが詳しかったりしますので(笑)」

――最近はシティ・ポップの関連書籍もたくさん出ていますね。「レコード・コレクターズ」増刊「シティ・ポップ 1973-2019」や「WA B・O・O・G・I・E 1980s Japanese Boogie / Funk / Modern Soul / Fusion」などなど。

「大滝詠一さんの『NIAGARA CONCERT ‘83』のアナログも先日リリースされたばかりですしね。

最後に小ネタで、ミリー・ターナー(Millie Turner)という17歳のSSWをおすすめさせてください。まだフィジカルを出していなくて、シングルを何曲か発表しているだけなんですが、アルバムがリリースされたらかなりくる気がします。ロンドンのアーティストなのでトム・ミッシュやロイル・カーナー、ジョーダン・ラカイの流れでも聴ける気持ちいい音です」

――へ~! 全然知りませんでした。それはぜひ聴いてみます!

ミリー・ターナーの2017年のシングル“Eyes On You”

 


INFORMATION
TOWER VINYL SHINJUKU

東京都新宿区新宿3-37-1 フラッグス10F
営業時間:11:00~23:00
定休日:不定休(フラッグスの休業日に準じる)
電話番号:03-5360-7811

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