アトモスフェリックな奥行きと官能的な歌声を融合して己の美意識を形にしてきたバンクス、4年ぶりのサード・アルバム。登場時は〈ジェイムズ・ブレイク以降〉を望む空気に応えた部分もあったわけだが、そういう追い風もなくなったいま、彼女もまたパーソナルな色合いを強めながら、よりダークで濃密なエレクトロニックR&Bを追求している。引き続きBJバートンやソン、ティム・アンダーソンらが腕を揮ったほか、今回はハドソン・モホークとの手合わせも実現していて、破壊的で過激な“Gimme”のプロダクションはまさにその成果だろう。初顔合わせという意味ではフランシス・アンド・ザ・ライツ制作の“Look What You're Doing To Me”も素晴らしい出来映え。尖った刺激の快さも含めてどっぷり浸れる佳作だ。